第215話「邂逅」

文字数 3,034文字






         ―AM11時55分―


         《喫茶―黒猫》

――――それじゃあ

お店の移転を考えるの?

そうだな····

黒鉄がそう望むなら――――

うーん···

でもそれってカナリ大変な話よね

····まぁ、確かにココよりも後ろの店の方が厄介ではあるな
······そう焦る必要もあるまい
黒猫マートはあまりにもデカくなってしまったしな、ご近所付き合いもあるのだろう?
ご近所付き合いは·····

あるわねぇ〜

······もし
っ!

あら、ホシ猫!

もし移転したとしても····

ホシ猫も一緒に行って良いのかな

っ!!?
そんなの当たり前だろう?
·········
····うん











             ―PМ3時30―


            《喫茶―黒猫―自宅》

ㇲ―  ㇲ―

テクテクテクテク――――――

ピト···

····うっ



····何だろう

顔に何か····こう、柔らかいモノが押しあてられているような····



··········
ッッッハッ
い、いま何時····っ?!



···不意に目が覚めた私の視界に入ってきたもの···それは、見覚えのない天井と綺麗に整理された部屋だった


昨日は何をしていたんだっけ···

··ここは····えっと―――――




あ、あぁ···

そうだ――――黒猫マートに来ていたんだった···


···日々、決まった場所で寝泊まりしている訳ではない私にとってこんな事は日常的だ

一度眠るとリセットされるものが多いらしい


(ちょっと····今回はいつも以上に記憶が曖昧になっている―――)
(カイトは何とも無いのかしら···)
···いろは

大丈夫かい?

っっっ!!!?
·····ホシ猫さん
  


····あ、もしかして

さっき顔に押しあてられてた柔らかい感触ってもしかして―――――



ほ、ホシ猫さん····

もしかして、さっき私の顔に···その···っ、に、肉球を―――――

ん?

···あぁ、いろはがあまりにも起きてこないから顔を踏んでみたんだ

かっっっ!!!

顔を―――――――っ!!!!



肉球で顔を踏むとか、可愛すぎてキュン死するやつッス―――――







と、悶え死にそうになっていたその時――――



ガラ――――――
っ!!
いろは

起きたか?

カイト····
随分とグッスリ寝ているようだったが、体調でも悪いのか?
····え?

いや、そんな事はないよ―――?

ヌッ
いろはは――――

自身の寿命を使いすぎたのじゃ

↑寿命を散財させた張本人
三屍蠱さんっ?!
····ああ

そうか、確かにそうだな――――

でっ、でも寿命はすぐに回復しちゃうし特に問題無いと思うんだけど···
····だがそれが、いろはの身体に何も支障をきたさないとも言い切れない
····何かいつもと違うと感じるところは無いか?
なっ、無いよ!!

大丈夫だから!



···寝起きの記憶が曖昧なのはきっと長く生きてきたからだと思うし··



····なら良いんだが――――
いろはに負担をかけて悪かった
っ!

負担だなんて!あれは私が言い出した事だし、カイトのせいじゃないよ!

···········
·····カイト

そんなに心配する必要はない

っ!!

クラオカミ―――――

いろはのチャクラの流れは正常だ

···それに三屍蠱も上手く寿命を喰っているな

当然じゃわい
···········
··········

話は纏まったかい?ホシ猫はいろはと話があるんだ

さほどの用がないのなら女子達の部屋から出て行ってくれないかな?
っっっ!!!!!

(達?!)

············
我だけは無理じゃなぁ〜
コホン

····分かった。じゃあカフェの方に行っているからな、いろは

うん·····
···········
····まったく

寝起きだと言うのに騒がしかっただろう?

····まぁ、少しだけ···?



大好きなホシ猫さん――――


·····ホシ猫さんと二人で会話をするのはいつぶりだろうか?

以前はいつも一緒だった····

鬼狩りをする時は勿論、お風呂に入るのも寝るのも一緒で····


でも、カイトが私たちの前に現れたあの日、入れ替わるようにしてホシ猫さんは突然私の目の前からいなくなってしまった―――――


私はホシ猫さんに謝る事も、お礼を言う事も出来ないままだ···


····ホシ猫さんが大好きなレイさんと共に生きる事が出来たはずの唯一の時代·····

私のせいでその大切な選択をホシ猫さんに放棄させてしまったのだ―――――



···········
····ホシ猫さん
いろは
はっ、はいっ
···君は今――――

幸せに過ごしているのかい?

っっ!!!
·········
·····はい、とても――――
うん···、良かった

昔は二人だけで辛いことも沢山あったと思うんだ····

そんな事はありません!!

あの時、ホシ猫さんが一緒に来てくれなかったら···今私はここに居なかったのだからっ

······そっか
でもそれは、ホシ猫も一緒なんだよ
っ!!
いろははきっと、自分を責めているんじゃないかと思っていてね――――
黙って居なくなったくせに、気になって仕方が無かったんだ
········

···夜叉丸に全てを任せようと思った時、年甲斐もなくいろはの顔を見ることが出来なくてね····

····あんな別れ方をしてしまって申し訳なかったと思っているんだよ?
····っっ!!!

わ、私の方こそ―――――っ

ごめんなさい、ホシ猫さん···っ



その時――――

ホシ猫さんは私の膝の上にヒョイッと乗り、私のおでこに右手肉球をピトっと押し付けた――――――



っっ!!!!



ギュン死する―――――っっ



よしよし、泣き止んだね
··········グハッ
何もいろはが泣く事は無いんだよ?
いろははきっと、レイの事を気にしているんだろうけどね、レイは既に転生しているんだ
えっっ?!
····まだ見付けてはいないのだけれど、それでも直ぐに見付けてみせるよ。その為にホシ猫はいま黒鉄と共にいる
····その為に――――

黒鉄さんと···?



黒鉄さん···、頑張って!!!

応援しています!!!







ッッッヘブシッ
黒鉄、誰かに噂されてんじゃない?
····ろくな事ではなさそうだな




それに···、ホシ猫がいろはについて行ったのだってホシ猫の意思なんだ
だからね···

君は何も悪くないし、謝る必要はないのだと理解してくれるかい?

っっ!!!!
·····分かりました
うん、それで良い
ホシ猫さん、本当に有難うございました!!
····どういたしまして!
(···レイさんが転生!本当に本当に良かった――――)
······それで、これから君たちはどうする事にするんだい?
···これからもずっと旅を続けます
ふむ···

いろはは三屍蠱に寿命を喰われて夜叉丸と共に死ぬ事を選んだのだろう?

···は、はい
····ちょっと聞きにくいんだけれども、鬼狩りはどうするのかな?



と、ホシ猫さんがそう言った瞬間―――――

ガラッッ

っと、勢いよく部屋の扉が開いてカイトが入って来た



その説明は俺がする!
·····えっ
············



····ちょっとカイト――――

カフェの方に行っていたんじゃないの?!

確実に盗み聞きしてたよね?!



カイト······
····え?
僧侶ともあろうお方が····

盗み聞きですか···?

そっ、それは違うぞいろはっ!!
····何が?

弁解の余地なんか無いわよ?

ち····っ、違っっ

本当に···違うんだ―――――っ

そろそろかなと迎えに来たらたまたま――――――――っ
ガラッッ

   バタンッッッッ

··············
締め出された↑
クスン

····本当に違うのに――――

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色