第3話「自業自得」

文字数 3,412文字







         ―PM2時30分―


          《神境区》

···········
··········
·····真那
·····何ですか?
····本当にそんなんで良かったのか?
あ、はい!

とても嬉しいです!有難う御座います!

····いや、まぁ···

真那が良いなら別にいいんだけど



これは、この二人が結婚する前のお話――――――


伊吹逢馬(いぶきおうま)21歳、十朱真那(とあけまな)21歳――――

お互いが別々の大学に通っていた頃の話である



この日はマナの誕生日だ···

自分の事にはとことん疎いマナのため、オーマが好きなものを買ってあげようと珍しくマナをデートに誘っていた



·······

(真那が昔から若干変わった趣味なのは知ってたけど···まさか――――)

私、ずっとこの「大阪限定たこ焼きまりもっこり」の3Dラバーマスコットが欲しかったのです!!
近くにアンテナショップが出来たのは本当にラッキーでした!!
そ、そうか

なんなら二人で北海道旅行しても良かったんだけど?

えっ?!
北海道ではダメです!大阪限定なのですから、行くなら大阪です!
···········

(····どっちでもいい)



取り敢えず、まりもっこりは置いといて、オーマはマナと二人で旅行がしたいだけだった



············
あ、あの····
···ん?
わっ、わわっ私も伊吹くんに何かをプレゼントしたいのですが····
····え、何で?
だ、だって····

私ばかりが買って頂くなどおこがましいですしフェアではないのです!

いや、今日は真那の誕生日なんだから当たり前じゃない?
····誕生日など、そんなに特別な事ではありません
っ!
···········
····俺にとって真那が生まれた日は特別だよ?
えっっ?!

な、何故です?!

そんなの、真那が生まれなかったら俺は真那に出会えてないからね
···········

私は伊吹くんと出会って得した事など殆どありませんが――――――

ッッグ
そ、そんな事はないだろ?

ほら、こんなイケメンと一緒に歩けてる事がもうお得以外の何物でもない

············
····そう言う事、他の女性にも言ってるのでしょう?やめたほうが良いですよそう言うの
ぅぐっっ
い、言ってないけど―――――

言ってたらどうだと言うんだ

····あ、いえ

別にどうと言うこともありませんね

ぐはっっっ



マナとオーマは、こんなんでも一応恋人同士なのだが····


オーマが学生の頃からマナに対して不誠実な態度を取ってきたが故に、恋人となった今でも、マナは一線を引いてしまいがちなのである


全てはオーマの自業自得だった



まさか、挽回するのがこんなに大変だとは思わなかったんだよ····
··つっても俺は今も昔もずっとマナ一筋だけどね?



その感じが胡散臭さを醸し出して、マナから疑われてしまうのだと気付かなくてはならない



····いや、別に浮気とかした事ないし他の女の子を口説いたことも誘った事もないぞ!?
······あの、伊吹くん?
えっ?!
私の話、聞いてませんでしたね?
きっ、聞いてたよ?!

俺は物欲が殆ど無くてだなっ

ですからっ、それなら私が今日のお礼に焼き肉でもおごると言っているんです!
·····えっ?
····前に焼き肉食べたいって連呼していたでしょ?
え、それってだいぶ前の話かな?
まぁ、はい···

いつも私の手料理では飽きてしまうのかなとは思ってはいたのですが、中々お誘いする時間も合わなくて···

えっ?!いやっ!!

真那の手料理に飽きるわけが無い!!

····あの時は―――――

母さんがやたらと料理にハマってた事あったろ?

え、あぁ····

そう言えばそんな事もありましたね?私も作らせて貰えませんでした

その時に、無理矢理食べさせられてたメニューが精進料理だったから余計に肉が食いたくなってさ···
えっ?!

わ、私はお肉料理を頂いておりましたが―――――

あ〜····

なぁんか、色々と誤解があってな···ってか俺は相当誤解されやすいタイプなのかもしれないなぁ〜



大学に入学したばかりの当時、オーマは女の子から相当モテていた為、每日色んなモノ(プレゼントや手作り系の食べ物)を無理矢理渡されていた


···あれは本気でウザかった··


ましてやベタベタされる事もあり、凄まじく鬱陶しいが食べ物に罪は無いと、家に持って帰ってはマナに見つからないように父親に処理させていたのが母親に見つかり、父と二人でしこたま怒られた経緯がある


あの時は、母親の超絶激怒を目の当たりにして震え上がったのを忘れはしない――――――

今後、全てキッチリお断りを入れる!と言う形でその場は何とか収まったのだが――――――



·····母さんの怒りは冷めることなく精進料理を俺に食わせる嫌がらせが暫く続いたんだ···
何だか良く分かりませんが自業自得だったんですね?
·············
俺のこの純粋な気持ちは何故いつも誤解されるんだろうか
···········
····俺は―――――

あとにも先にも真那一人しか見ていないのに····

··········

誠実さが微塵も感じられませんけど

だったら、どうすれば信じるんだよ
····そうですねぇ



と、その時だった――――――



あっ!

オーマくーん!!

っ?!
キャー!こんな所で会えるなんて夢みたい!!運命の出会いだね!
······いや、えーっと

誰だったかな····

あれ、オーマ君じゃん
·········

(なんでこのタイミングで大学のサークルメンバーがここに?)

へへっ、今日はねミナちゃんと二人でお買い物に来てたんだよ!まさかオーマくんに会えるなんてめっちゃ嬉しい!
···········

おや?

オーマ君は一人で何やってんの?

(こんな所で)

····あ、いや、俺は―――――――
って、一人?!
オーマくんっ、一人なんて淋しいね!私達とデートする?!
·········

(さっき彼女サンらしき着物のキレイな女性と一緒だったのに···)

(なんか面白いことになりそう···)
い、いやっ!!

俺は真那と――――――って、何処行ったんだよっ

··········

(オーマ君がフラレる場面なんて超レアじゃね?ワクワク)

···誰かと一緒にいたの?
きっと先に帰っちゃったんだよ!

だったら私と一緒に――――――

···········

(サユキは分かり易いくらいオーマ君大好きだな····)

あ、いや!

悪いけど真那を探さねーと!

·····真那···さん?
おー、真那サン

俺の唯一の彼女サンだよ

っっ!!!

(言った···、意外と一途?)

·····ふーん
じゃあ、悪いけどまたな!
····うん、またね〜
··········
·········
············

彼女いたんだぁ〜···

···········

(怖っ)













         ―PM4時45分―


       《二ツ神駅―周辺》

あっ!!

真那っ!!

何処行ってたんだよ!探しただろ!
····あ、伊吹くん
····あ、じゃない!

急にいなくなるとか···ってか電話くらい出ろ!

·····すみません

(まさか、二ツ神駅で待ち伏せられてるとは·····)

↑帰る場所は二人共同じ
·····今日の夕ご飯のお買い物をしに黒猫マートへ行っていました
だったら俺も行くよ····
で、でも伊吹くんは····

可愛い女の子と運命の出会いをされていたのでお邪魔にならないようにしないとと思って――――――

はぁっ?!
もうさ、ハッキリ言わせてもらうけど
·····え
····真那のそう言う態度、結構傷つく―――――
っっ!!!
確かに俺はかなり自業自得だよ!真那と二人の時間なんて今までも殆ど作ってこなかったし、恋人らしい事なんてしてやったことも無いけど!
····それでも俺は真那の事が――――――
·····あれ、でもいつも大学のサークル仲間と飲みに行ってるってお母様からお聞きしましたよ?
私との時間なんて作れない程お忙しくされているのは飲み会が沢山だったからですね〜
············
先程の女性方も大学のサークル仲間なのでしょうから、いつも一緒に飲んでいらっしゃるのですね
仲が良いのは良いことです

それでは御機嫌よう

············

(終わった··、絶対に嫌われたわコレ)

って、待てよ真那!

おーい!!

帰るとこ一緒だろー!!

俺を置いてくなよっ!

ちょっ、

待って真那ちゃんっっ



もはや完全に自業自得の救いようない奴である···、この時点までは―――――









―END―

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登場人物紹介

名前 姫城 いろは(ひめぎいろは)

年齢 20歳

職業 大学生


都内ではあるが、県境で沿岸にある集落出身。その集落には毎年行われる豊年祭があるが今年は何故かその豊年祭にいろはが招待を受ける····

名前 姫城 花梨(ひめぎかりん)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの従姉妹

いろはのご近所に住んでいて、小さい頃から姉妹のように育ってきた。いろはにとって大切な存在。

名前 夜叉丸(やしゃまる)

年齢 不明

職業 不明


謎だらけの青年

名前 ホシ猫

年齢 不明

種類 妖怪


妖猫『仙狸(センリ)』人型バージョン

化け猫の類い。人の精気を喰らう必要があるため、死にたくても死ねない夜叉丸の側で精気を拝借している。

名前 黒鉄(くろがね) 

年齢 656歳

種類 妖怪


妖怪『猫又』の人型バージョン

巷では有名な超級百鬼。飼い主の「黒崎陵」とは600年前の記憶を共有しており、唯一無二の存在。当時の二人の事情は『百鬼夜行』に記されている。

名前 黒崎 陵(くろさきりょう)

年齢 60歳

職業 「黒猫マート」の店長


黒鉄の飼い主

24Hコンビニ「黒猫マート」の店長で、黒鉄の飼い主。迷い猫を保護し育てている。黒鉄とは600年前の記憶を共有しているため、黒鉄からは昔の名前「佐助」で呼ばれている。

名前 如月 歩夢(きさらぎあゆむ)

年齢 20歳

職業 大学生


いろはの元彼

いろはと同じ大学に通う元恋人。色々あったが結局は今でもいろはの事を引きずっている。

名前 佐伯 怜奈(さえきれな)

年齢 21歳

職業 大学生


いろはの元親友

昔はいろはと仲が良かったらしいが、いろはへの嫉妬心が強いため何かと嫌がらせをしてくる性悪女。

名前 新羅 咲哉(しんらさくや)

年齢 20歳

職業 大学生


如月 歩夢の友人

掴み所のない性格だが、何故か女の子からはモテる。たまに闇が垣間見える事があるため歩夢は少し警戒している。

名前 宮琵 曄子(きゅうびようこ)

年齢 ???

種類 妖怪


妖怪『九尾の狐』の人型バージョン

狐の姿になる事は殆んど無い。

大昔に人から命を救われている為、人を襲わず同族を食糧としている。大食間であり、その力は脅威と言われている。

名前 北条 莉桜(ほうじょうりお)

年齢 25歳

職業 図書館勤務(公務員)


温厚で優しい口調が相手に好印象を与えているが、実際は周りの事や人に興味がなく、相手がどう感じようと全く構わないタイプ。だがやっぱり優しいのでモテている。

名前 伊吹 逢馬(いぶきおうま)

年齢 24歳

職業 祓い屋&心理学者


両親が極度な霊感体質であり、自らも見事に受け継いだ為、祓い屋家業を営んでいる。大学では心理学を専攻していたのでたまに心理学者としての仕事もしつつ生計を立てている。未だに独身。

名前 十朱 真那(とあけまな)

年齢 24歳

職業 管理栄養士&イタコ


本業は管理栄養士だが、今では貴重な存在である「イタコ」の後継者。本人はイタコであることが嫌な為、実家を継ぐのを放棄して伊吹家に居候している。その代わりに逢馬の仕事を手伝わされて結局イタコをやる羽目になっている。

名前 比企 夜叉丸(ひがやしゃまる)

年齢 10歳

職業 人斬り一家


約700年前、まだ人だった頃の夜叉丸。

親に捨てられ死ぬ間際に比企家の頭首である藤治(とうじ)に拾われ、人斬りとして育て上げられる。

名前 比企 藤治(ひがとうじ)

年齢 32歳

職業 人斬り一家


約700年前、死にかけていた夜叉丸を拾って人斬りとして育て上げるオッサン。

比企家の頭首にして凄腕の剣客。

名前 比企 氷月(ひがひづき)

年齢 10歳

職業 比企家の家事全般


比企家頭首である藤治の娘。

母親は既に他界しており、比企家に住む男共の面倒や家事など全てを担っている。

名前 比企 白夜(ひがびゃくや)

年齢 25歳

職業 人斬り一家


人斬り一家のリーダー的存在。比企家に住んでおり、戦では100人斬りを達成している剣客。左目は損傷し隻眼となっている。

名前 坂本 瑠迦(さかもとるか)

年齢 24歳

職業 調理師


いろはのバイト先である、古民家カフェのマスター。最初はせっかちで強引なイメージだったが、実は優しくて空気の読める爽やかなイケメン。野菜作りが趣味で自家製野菜を店で提供している。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

年齢 不詳

職業 カルラ様の側近


鬼族の頂点であるカルラの側近。真面目で忠実な性格だが、人をおちょくった様な一面があり、いつもカルラに消されそうになっている。あだ名の由来はその性格がタマネギ部隊に似ているためだと言われている。

名前 廃炉(はいろ)

あだ名 タマネギ

etc


廃炉の人型バージョン。趣味が中々良いためイケメンになるが、その性格は変わらない。

名前 迦楼羅(かるら)

年齢 不詳

職業 鬼族の長


全ての鬼をまとめる鬼族と言う貴族の頂点。しかし自分の一族である鬼族にも殆んど興味がないため、鬼狩りに仲間を狩られても面倒くさい程度にしか思っていない。取り巻きにどやされて仕方なく鬼狩りを追い払っている。

名前 姫城 奈瑞菜(ひめぎなずな)

年齢 23歳

職業 料理人


200年程前の時代の中、カルラと出会う女料理人。見た目はとても可憐たが過去の経緯から極度の男性不信。しかし惚れっぽいため、いつも簡単に騙されてしまうようなちょと残念な女性。

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