第3話「自業自得」
文字数 3,412文字
····いや、まぁ···
真那が良いなら別にいいんだけど
これは、この二人が結婚する前のお話――――――
伊吹逢馬(いぶきおうま)21歳、十朱真那(とあけまな)21歳――――
お互いが別々の大学に通っていた頃の話である
この日はマナの誕生日だ···
自分の事にはとことん疎いマナのため、オーマが好きなものを買ってあげようと珍しくマナをデートに誘っていた
·······
(真那が昔から若干変わった趣味なのは知ってたけど···まさか――――)
私、ずっとこの「大阪限定たこ焼きまりもっこり」の3Dラバーマスコットが欲しかったのです!!
近くにアンテナショップが出来たのは本当にラッキーでした!!
そ、そうか
なんなら二人で北海道旅行しても良かったんだけど?
北海道ではダメです!大阪限定なのですから、行くなら大阪です!
取り敢えず、まりもっこりは置いといて、オーマはマナと二人で旅行がしたいだけだった
わっ、わわっ私も伊吹くんに何かをプレゼントしたいのですが····
だ、だって····
私ばかりが買って頂くなどおこがましいですしフェアではないのです!
いや、今日は真那の誕生日なんだから当たり前じゃない?
····誕生日など、そんなに特別な事ではありません
そんなの、真那が生まれなかったら俺は真那に出会えてないからね
···········
私は伊吹くんと出会って得した事など殆どありませんが――――――
そ、そんな事はないだろ?
ほら、こんなイケメンと一緒に歩けてる事がもうお得以外の何物でもない
····そう言う事、他の女性にも言ってるのでしょう?やめたほうが良いですよそう言うの
い、言ってないけど―――――
言ってたらどうだと言うんだ
マナとオーマは、こんなんでも一応恋人同士なのだが····
オーマが学生の頃からマナに対して不誠実な態度を取ってきたが故に、恋人となった今でも、マナは一線を引いてしまいがちなのである
全てはオーマの自業自得だった
まさか、挽回するのがこんなに大変だとは思わなかったんだよ····
その感じが胡散臭さを醸し出して、マナから疑われてしまうのだと気付かなくてはならない
····いや、別に浮気とかした事ないし他の女の子を口説いたことも誘った事もないぞ!?
ですからっ、それなら私が今日のお礼に焼き肉でもおごると言っているんです!
····前に焼き肉食べたいって連呼していたでしょ?
まぁ、はい···
いつも私の手料理では飽きてしまうのかなとは思ってはいたのですが、中々お誘いする時間も合わなくて···
えっ?!いやっ!!
真那の手料理に飽きるわけが無い!!
····あの時は―――――
母さんがやたらと料理にハマってた事あったろ?
え、あぁ····
そう言えばそんな事もありましたね?私も作らせて貰えませんでした
その時に、無理矢理食べさせられてたメニューが精進料理だったから余計に肉が食いたくなってさ···
えっ?!
わ、私はお肉料理を頂いておりましたが―――――
あ〜····
なぁんか、色々と誤解があってな···ってか俺は相当誤解されやすいタイプなのかもしれないなぁ〜
大学に入学したばかりの当時、オーマは女の子から相当モテていた為、每日色んなモノ(プレゼントや手作り系の食べ物)を無理矢理渡されていた
···あれは本気でウザかった··
ましてやベタベタされる事もあり、凄まじく鬱陶しいが食べ物に罪は無いと、家に持って帰ってはマナに見つからないように父親に処理させていたのが母親に見つかり、父と二人でしこたま怒られた経緯がある
あの時は、母親の超絶激怒を目の当たりにして震え上がったのを忘れはしない――――――
今後、全てキッチリお断りを入れる!と言う形でその場は何とか収まったのだが――――――
·····母さんの怒りは冷めることなく精進料理を俺に食わせる嫌がらせが暫く続いたんだ···
俺のこの純粋な気持ちは何故いつも誤解されるんだろうか
····俺は―――――
あとにも先にも真那一人しか見ていないのに····
··········
誠実さが微塵も感じられませんけど
キャー!こんな所で会えるなんて夢みたい!!運命の出会いだね!
·········
(なんでこのタイミングで大学のサークルメンバーがここに?)
へへっ、今日はねミナちゃんと二人でお買い物に来てたんだよ!まさかオーマくんに会えるなんてめっちゃ嬉しい!
オーマくんっ、一人なんて淋しいね!私達とデートする?!
·········
(さっき彼女サンらしき着物のキレイな女性と一緒だったのに···)
い、いやっ!!
俺は真那と――――――って、何処行ったんだよっ
··········
(オーマ君がフラレる場面なんて超レアじゃね?ワクワク)
きっと先に帰っちゃったんだよ!
だったら私と一緒に――――――
···········
(サユキは分かり易いくらいオーマ君大好きだな····)
····あ、じゃない!
急にいなくなるとか···ってか電話くらい出ろ!
·····すみません
(まさか、二ツ神駅で待ち伏せられてるとは·····)
·····今日の夕ご飯のお買い物をしに黒猫マートへ行っていました
で、でも伊吹くんは····
可愛い女の子と運命の出会いをされていたのでお邪魔にならないようにしないとと思って――――――
確かに俺はかなり自業自得だよ!真那と二人の時間なんて今までも殆ど作ってこなかったし、恋人らしい事なんてしてやったことも無いけど!
·····あれ、でもいつも大学のサークル仲間と飲みに行ってるってお母様からお聞きしましたよ?
私との時間なんて作れない程お忙しくされているのは飲み会が沢山だったからですね〜
先程の女性方も大学のサークル仲間なのでしょうから、いつも一緒に飲んでいらっしゃるのですね
············
(終わった··、絶対に嫌われたわコレ)
もはや完全に自業自得の救いようない奴である···、この時点までは―――――
―END―
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