第216話「年の功」
文字数 3,388文字
―PM4時40分―
《黒猫マート》
私達は現在、黒崎家の奥様であるチサトさんに黒猫マートの中を案内して貰っている――――
(黒崎陵さん自体は今世の転生を済ませているが、現在はまだ8歳程度であり、今は小学校へ通っている時間のようだ)
最初に入った喫茶店は、チサトさんが趣味で経営している珈琲専門店らしく、本来の黒猫マートはその後ろ側にそびえ立つ大型スーパーだった
実際、私は今でも当時の夜叉丸が、私のことを好きでいてくれていたのかどうかは良くわからないままだ····
夜叉丸との最期―――――
私に鬼狩りをさせるくらいなら、人として死ぬ事は諦めると言ってくれたあの時····嘘でも嬉しいと思った
私は····
夜叉丸の事が本当に好きだったらしい
カイトの話し方はいつもこうだ―――――――
まるで他人事のように夜叉丸の話をするから···、別な人から夜叉丸の気持ちを聞かされているようで中々受け入れる事が出来ない
カイトが夜叉丸の生まれ変わりなのは接していれば不思議と理解が出来る··
だけど···、当の本人はどうだろうか
自分は夜叉丸の生まれ変わりだと言いながら、本人がそれを受け入れていないように見えるのだ
じゃあ、今の――――カイトの私への気持ちは?
夜叉丸が残した気持ちに左右されているのならカイト本人としての気持ちは私に無いのではないかと思えてしまう
―PM9時30―
《喫茶―黒猫》
今、私とカイトは昼間にホシ猫さんに言われた通り、お互いの中にある誤解を解くようにと二人で話をする為に喫茶店をお借りしている所だ―――
数時間前には、チサトさんが私達の歓迎会と称して、美味しいお料理やお酒などを振る舞って下さった
私は鬼狩りがある為、お酒は飲まないのだけれどカイトは意外とお酒が好きなようで結構な量を飲んでいた―――
····て、言うか
これから話し合いをするというのに、なんでそんなにお酒を飲んでいたのかちょっと良く分からない···
そもそも何を話すのだろうか?
お互いの誤解と言われてもなぁ――――
またその言い方――――――
···私の顔を見るなりフワリと微笑んだカイトの表情を見た時―――――
カイトと出会ってからずっと胸の内につっかえていたモヤモヤが晴れたような気がした