第88話 いちゃいちゃ
文字数 957文字
次の日、勉強室に、三台目のパソコンが運び込まれた。二人と同じ年齢である基樹も、高校卒業相当の知識を身に着けるべきだという、増永の心遣いらしい。
「勉強の進め方は、お二人にお聞きになってください」
そう言って、増永は部屋を出て行った。
「増永なりに、基樹くんのこと、ちゃんと考えてくれているのよ」
藍は、おかしそうに、そう言ったが、基樹は、うんざりした顔をしている。
「勉強は、教義を学んだ時点で終わったものだと思っていたけどな」
「私たちも、毎日勉強するように言われたときは、かなりがっかりしたわ。もうしなくていいと思っていたから」
基樹は、意外そうな顔をする。
「二人でもそうなのか? 二人は成績優秀だったから、勉強が好きなのかと思っていたけど」
「好きなんかじゃないわよ。ほかにやることがなかったから、仕方なくやっていただけ。ねぇ、翔」
藍に同意を求められ、翔は苦笑する。
「そうだね。僕たち、運動も、あんまり得意じゃないし」
「さぁ。とりあえず、今日のぶん分の勉強をしましょう。進め方は、もうわかっているわよね」
藍がデスクに座ると、基樹も、新たに入り口近くに置かれたデスクに座った。続いて、翔も真ん中のデスクにすわり、パソコンを起動する。
間もなく、基樹が声を上げた。
「あー……と、どのファイルだ?」
翔は、キャスターのついた椅子ごと、そばに行って画面をのぞく。
「あぁ、これだよ」
マウスを手に取り、アイコンをクリックすると、すぐにファイルが開いた。ずらりと教科名が並んでいる。
「うわ、マジか」
基樹は、椅子の上でのけぞった。
「二人は、もうずいぶん先まで進んでいるんだろうな」
「まぁ、始めてから一ヶ月経っているからね」
基樹は、わしゃわしゃと自分の髪をかき回す。
「やりたくねー……」
基樹は、しきりに嘆いているけれど、翔は、なんだかうれしくなって微笑む。また、こんなふうに隣り合って、同じ時間を過ごすことが出来るなんて……。
「なんだよ。何をにやにやしてるんだよ」
基樹が、翔を横目でにらむ。
「俺が困ってるのが、そんなにうれしいのかよ」
「そうじゃないよ。そうじゃないけど……」
そう言いながら、くすくす笑っていると、隣から、藍がぴしゃりと言った。
「ちょっと、人が勉強している横で、いちゃいちゃするのはやめてくれる?」
「勉強の進め方は、お二人にお聞きになってください」
そう言って、増永は部屋を出て行った。
「増永なりに、基樹くんのこと、ちゃんと考えてくれているのよ」
藍は、おかしそうに、そう言ったが、基樹は、うんざりした顔をしている。
「勉強は、教義を学んだ時点で終わったものだと思っていたけどな」
「私たちも、毎日勉強するように言われたときは、かなりがっかりしたわ。もうしなくていいと思っていたから」
基樹は、意外そうな顔をする。
「二人でもそうなのか? 二人は成績優秀だったから、勉強が好きなのかと思っていたけど」
「好きなんかじゃないわよ。ほかにやることがなかったから、仕方なくやっていただけ。ねぇ、翔」
藍に同意を求められ、翔は苦笑する。
「そうだね。僕たち、運動も、あんまり得意じゃないし」
「さぁ。とりあえず、今日のぶん分の勉強をしましょう。進め方は、もうわかっているわよね」
藍がデスクに座ると、基樹も、新たに入り口近くに置かれたデスクに座った。続いて、翔も真ん中のデスクにすわり、パソコンを起動する。
間もなく、基樹が声を上げた。
「あー……と、どのファイルだ?」
翔は、キャスターのついた椅子ごと、そばに行って画面をのぞく。
「あぁ、これだよ」
マウスを手に取り、アイコンをクリックすると、すぐにファイルが開いた。ずらりと教科名が並んでいる。
「うわ、マジか」
基樹は、椅子の上でのけぞった。
「二人は、もうずいぶん先まで進んでいるんだろうな」
「まぁ、始めてから一ヶ月経っているからね」
基樹は、わしゃわしゃと自分の髪をかき回す。
「やりたくねー……」
基樹は、しきりに嘆いているけれど、翔は、なんだかうれしくなって微笑む。また、こんなふうに隣り合って、同じ時間を過ごすことが出来るなんて……。
「なんだよ。何をにやにやしてるんだよ」
基樹が、翔を横目でにらむ。
「俺が困ってるのが、そんなにうれしいのかよ」
「そうじゃないよ。そうじゃないけど……」
そう言いながら、くすくす笑っていると、隣から、藍がぴしゃりと言った。
「ちょっと、人が勉強している横で、いちゃいちゃするのはやめてくれる?」