第15話 あの日
文字数 782文字
そんなことが何度か繰り返された後のこと。
ウィークデーの朝、いつものようにダイニングルームに下りて行くと、めずらしく藍の姿がない。たいてい、朝が弱い翔より先に席に着いているのだが。
翔は、料理を並べ始めた久美に尋ねた。
「藍は?」
顔を上げた久美の表情がくもる。
「藍さんは、今日は体調が悪いからお休みするとおっしゃって……」
久美が言い終わる前に、翔は踵を返す。
「翔さん?」
「様子を見て来る」
せわしなくドアをノックしながら声を書ける。
「藍、入るよ」
そして、返事を待たずにドアを開ける。藍は、血の気のない顔でベッドに横たわっていた。
「藍」
翔はベッドに近づくと、ひざまずいて藍の頬に触れる。
「どうしたの? 大丈夫?」
藍が、力なく微笑む。
「心配しないで。たいしたことじゃないの」
「でも、学校を休むんだろ?」
「あのね」
翔の手を握りながら、藍が言う。
「女の子の、あの日なのよ。私、とても重いの」
「あ……」
女の子の生理のことは、知識としては知っているが、実感としては、よくわからない。藍も、あまりくわしいことは言いたがらないが、今日は、いつになく辛そうだった。
女の子には、男とはまた違った大変さがあるのだな。もっともっと大切にしなくては……。
そう思いながら、翔は再びダイニングルームに向かった。
学校にいる間中、心配していたのだが、帰って来ると、藍は起きていて、笑顔で翔を迎えてくれた。久しぶりに、藍の部屋でお茶を飲むことになった。
テーブルに紅茶とショートブレッド並べて、久美が部屋を出て行くのを待ってから、翔は口を開く。
「もう大丈夫なの?」
「うん。すっかりっていうわけじゃないけれど、気分の悪さは治ったわ」
そう言いながら、まだ顔色がすぐれない。翔は、陶器の人形のような、白く小さな藍の顔を見つめる。
「無理しないで」
「ありがとう」
藍がにっこり笑った。
ウィークデーの朝、いつものようにダイニングルームに下りて行くと、めずらしく藍の姿がない。たいてい、朝が弱い翔より先に席に着いているのだが。
翔は、料理を並べ始めた久美に尋ねた。
「藍は?」
顔を上げた久美の表情がくもる。
「藍さんは、今日は体調が悪いからお休みするとおっしゃって……」
久美が言い終わる前に、翔は踵を返す。
「翔さん?」
「様子を見て来る」
せわしなくドアをノックしながら声を書ける。
「藍、入るよ」
そして、返事を待たずにドアを開ける。藍は、血の気のない顔でベッドに横たわっていた。
「藍」
翔はベッドに近づくと、ひざまずいて藍の頬に触れる。
「どうしたの? 大丈夫?」
藍が、力なく微笑む。
「心配しないで。たいしたことじゃないの」
「でも、学校を休むんだろ?」
「あのね」
翔の手を握りながら、藍が言う。
「女の子の、あの日なのよ。私、とても重いの」
「あ……」
女の子の生理のことは、知識としては知っているが、実感としては、よくわからない。藍も、あまりくわしいことは言いたがらないが、今日は、いつになく辛そうだった。
女の子には、男とはまた違った大変さがあるのだな。もっともっと大切にしなくては……。
そう思いながら、翔は再びダイニングルームに向かった。
学校にいる間中、心配していたのだが、帰って来ると、藍は起きていて、笑顔で翔を迎えてくれた。久しぶりに、藍の部屋でお茶を飲むことになった。
テーブルに紅茶とショートブレッド並べて、久美が部屋を出て行くのを待ってから、翔は口を開く。
「もう大丈夫なの?」
「うん。すっかりっていうわけじゃないけれど、気分の悪さは治ったわ」
そう言いながら、まだ顔色がすぐれない。翔は、陶器の人形のような、白く小さな藍の顔を見つめる。
「無理しないで」
「ありがとう」
藍がにっこり笑った。