第76話 勉強室
文字数 797文字
次の日、藍とともに、ダイニングルームで朝食を取っていると、増永がやって来た。顔を合わせるのは、この家に来て以来だ。
「お二人の部屋の間にある部屋は、ご覧になりましたか?」
翔は、首を横に振る。藍は言う。
「ちらっとのぞいただけだけれど」
増永が言う。
「あの部屋は、これからお二人が勉強するのに使っていただく場所です。お二人とも、少しは落ち着かれたでしょうから、今日からは、かつて学校に通っていたときのように、毎日勉強していただきます」
「二台並んだパソコンを見たときから、そんなことだろうと思っていたけど。あのパソコンは、ネットに繋がっていないのよね?」
藍の問いに、増永がうなずく。
「いかにも、その通りです」
洋館にもパソコンはあったが、やはりインターネットには接続されていなかった。どのような場合にも、二人が外部と接触することは厳しく制限されている。
二人はずっと、そのようにして暮らして来たのだ。だから、今さら驚きはしないが。
「お食事が終わりましたら、あの部屋においでください」
そう言って、増永は出て行った。
藍が、ため息をつく。
「勉強なんて、うんざり。そのぶん、刺繍をしていたいわ。それに、まだ一度も庭に出ていないし」
翔が、ずっと部屋に引きこもっていたせいで、藍は、翔と一緒に庭を散策しようと、一人で出るのを我慢していたのかもしれない。そう思い、翔は言った。
「勉強が済んだら、一緒に庭に出てみよう」
藍が、にっこり笑った。
「そうね」
翔は、初めてその部屋の中を見た。二人の部屋と同じく、正面は全面ガラス張りで、片方の壁に書物が並んだ書架、もう片方に、デスクトップパソコンが置かれたデスクが二つ並んでいる。
二人が入って行くと、外を眺めていた増永が振り返った。そして、デスクを示して言う。
「さっそくですが、お座りください」
言われた通りにする。
「それでは、パソコンを立ち上げてください」
「お二人の部屋の間にある部屋は、ご覧になりましたか?」
翔は、首を横に振る。藍は言う。
「ちらっとのぞいただけだけれど」
増永が言う。
「あの部屋は、これからお二人が勉強するのに使っていただく場所です。お二人とも、少しは落ち着かれたでしょうから、今日からは、かつて学校に通っていたときのように、毎日勉強していただきます」
「二台並んだパソコンを見たときから、そんなことだろうと思っていたけど。あのパソコンは、ネットに繋がっていないのよね?」
藍の問いに、増永がうなずく。
「いかにも、その通りです」
洋館にもパソコンはあったが、やはりインターネットには接続されていなかった。どのような場合にも、二人が外部と接触することは厳しく制限されている。
二人はずっと、そのようにして暮らして来たのだ。だから、今さら驚きはしないが。
「お食事が終わりましたら、あの部屋においでください」
そう言って、増永は出て行った。
藍が、ため息をつく。
「勉強なんて、うんざり。そのぶん、刺繍をしていたいわ。それに、まだ一度も庭に出ていないし」
翔が、ずっと部屋に引きこもっていたせいで、藍は、翔と一緒に庭を散策しようと、一人で出るのを我慢していたのかもしれない。そう思い、翔は言った。
「勉強が済んだら、一緒に庭に出てみよう」
藍が、にっこり笑った。
「そうね」
翔は、初めてその部屋の中を見た。二人の部屋と同じく、正面は全面ガラス張りで、片方の壁に書物が並んだ書架、もう片方に、デスクトップパソコンが置かれたデスクが二つ並んでいる。
二人が入って行くと、外を眺めていた増永が振り返った。そして、デスクを示して言う。
「さっそくですが、お座りください」
言われた通りにする。
「それでは、パソコンを立ち上げてください」