第179話 送迎
文字数 777文字
「晴のこと、お願いね」
藍の言葉に、久美は笑顔で答える。
「おまかせください。晴ちゃんのことは心配いりませんから、お二人とも、心おきなく授業に専念なさってくださいね」
「晴ちゃん、グランパと遊ぶネ」
横に立ったグレインが、晴の顔をのぞき込みながら言うと、ピンク色のベビー服を着て、久美に抱かれた晴は、きゃっきゃと声を上げた。
藍が、その頬に触れながら言う。
「ママがいない間、いい子にしているのよ」
「大丈夫ですよねぇ」
久美に優しく体を揺すられ、晴は再び声を上げる。グレインも言う。
「晴ちゃん、いい子。大丈夫ネ」
名残惜しそうに晴を見つめていた藍が、思い切ったように、翔のほうを見て言った。
「それじゃ、行きましょうか」
「うん。行って来ます」
さっきから、みんなの様子を見守っていた翔は、挨拶をして、藍とともに車に向かう。待機していた佐渡が、素早く後部座席のドアを開ける。
財団の判断で、翔と藍は、また車で送迎されることになったのだ。
二人が乗り込み、シートベルトを締めると、佐渡が言った。
「よろしいですか? それでは参りましょう」
二人は後ろを振り返る。玄関ポーチで、久美が、晴の小さな手を持ち、こちらに向けて振っている。グレインも、笑顔で手を振っている。翔と藍も振り返す。
動き出した車のシートに身を預け、翔は、佐渡のきれいに整えられた襟足の辺りに目をやって、ふと思う。以前は、増永がここにいたのだったが……。
翔たちに反発されながらも、常に冷静に二人を守ってくれた増永。そのためには、人を手にかけたことすらあった。
危険を顧みず、命を懸けて任務を遂行し、ついには命を落としてしまった増永。それを思うと、胸が痛くなる。
彼の人生とは、いったいなんだったのだろう。もしも、今も増永が健在だったならば、新たな関係性を築くことが出来たかもしれないのに……。
藍の言葉に、久美は笑顔で答える。
「おまかせください。晴ちゃんのことは心配いりませんから、お二人とも、心おきなく授業に専念なさってくださいね」
「晴ちゃん、グランパと遊ぶネ」
横に立ったグレインが、晴の顔をのぞき込みながら言うと、ピンク色のベビー服を着て、久美に抱かれた晴は、きゃっきゃと声を上げた。
藍が、その頬に触れながら言う。
「ママがいない間、いい子にしているのよ」
「大丈夫ですよねぇ」
久美に優しく体を揺すられ、晴は再び声を上げる。グレインも言う。
「晴ちゃん、いい子。大丈夫ネ」
名残惜しそうに晴を見つめていた藍が、思い切ったように、翔のほうを見て言った。
「それじゃ、行きましょうか」
「うん。行って来ます」
さっきから、みんなの様子を見守っていた翔は、挨拶をして、藍とともに車に向かう。待機していた佐渡が、素早く後部座席のドアを開ける。
財団の判断で、翔と藍は、また車で送迎されることになったのだ。
二人が乗り込み、シートベルトを締めると、佐渡が言った。
「よろしいですか? それでは参りましょう」
二人は後ろを振り返る。玄関ポーチで、久美が、晴の小さな手を持ち、こちらに向けて振っている。グレインも、笑顔で手を振っている。翔と藍も振り返す。
動き出した車のシートに身を預け、翔は、佐渡のきれいに整えられた襟足の辺りに目をやって、ふと思う。以前は、増永がここにいたのだったが……。
翔たちに反発されながらも、常に冷静に二人を守ってくれた増永。そのためには、人を手にかけたことすらあった。
危険を顧みず、命を懸けて任務を遂行し、ついには命を落としてしまった増永。それを思うと、胸が痛くなる。
彼の人生とは、いったいなんだったのだろう。もしも、今も増永が健在だったならば、新たな関係性を築くことが出来たかもしれないのに……。