第24話ーなんかへんだな

文字数 2,301文字

 黒ドラちゃんとドンちゃんがお城へ出かけた日から何日か経ちました。

 朝、目を覚ました黒ドラちゃんは、洞から出て大きく伸びをしました。このところ、なんとなく体がグンと大きくなってきたような気がして、湖に自分の姿を映してみましたがよくわかりません。
「ドンちゃんに聞いてみようかな?」
 黒ドラちゃんはドンちゃんのおうちに行ってみることにしました。

 ドンちゃんのおうちに行くとお母さんとドンちゃんがちょうど巣穴から出てくるところでした。
「おはよう!ドンちゃん」
「あ、黒ドラちゃんおはよー!」
 さっそくドンちゃんに聞いてみます。
「あのさ、ドンちゃん、あたし大きくなったかな?」
「黒ドラちゃんは、もともと大きいよ?」
「えっと、そうじゃなくて、この頃目が覚めるたびに体が大きくなってきてる気がするんだけど」
 ドンちゃんのお母さんが黒ドラちゃんに尋ねます。
「洞が窮屈になってきたの?」
「ううん、そんなことは全然無いんだけど。なんだか体がムズムズするっていうか、体の中から何かが溢れそうっていうか……」
 ドンちゃんもドンちゃんのお母さんも、黒ドラちゃんの言う感覚がよくわからないようで首をかしげています。
「どうやったら黒ドラちゃんが大きくなったってわかるのかな?」
 森には黒ドラちゃんよりも大きな生き物はいないので、大きさを比べることは出来ません。
「うーん……」
 黒ドラちゃんも考え込んでしまいました。

「そうだわ、ブランに見てもらえば?魔力で大きさを調べる方法って、あるかもしれないし」
 ドンちゃんのお母さんがお耳をピンッとさせて言いました。
「そうだよ、ブランに聞いてみようよ!きっとそろそろ遊びに来てくれる頃なんじゃないかな?」
 ドンちゃんもお耳をピンッとさせて言いました。そういえば、スズロ王子とお別れする時にゲルードを森に寄こすようなことを言っていました。きっとその時にはブランも一緒に来てくれるに違いありません。
「じゃあ、今度来てくれた時に聞いてみる!」
 黒ドラちゃんがそう言った時、遠くの方からガチャガチャした音が聞こえてきました。黒ドラちゃんとドンちゃんはパッと顔を見合わせます。

「来た!!」

 ドンちゃんを背中に乗せると、黒ドラちゃんはびゅーんとスピードを付けて音のする方へ飛んで行きました。
 森のはずれを、ゲルードと鎧の兵士さんたちが歩いてきていました。
「ゲルード!いらっしゃい!」
 黒ドラちゃんがドシンっと降りると、ゲルードがさっとひざまずきました。
「これは古竜様、わざわざ出迎えていただくとは恐悦至極にございます。私どもだけではこれ以上進むことが出来ずにいたので大変助かりました」
「迷っちゃったの?まだ森の入口だよ?」
 黒ドラちゃんが不思議そうに言うと、
「ここは古の森。人の身ではこれ以上立ち入ることは出来ません。これまでは輝竜殿と一緒に居ればこそ、中の方まで進むことが出来ました」
「へー。そうなんだ」
 そういえばブランもそんなことを言っていました。黒ドラちゃんが一緒じゃないと、湖の方までは入ってこられないって。

「ブランは?」
 黒ドラちゃんはそう言ってキョロキョロしましたが、ブランの姿は見えないし匂いもしません。
「輝竜殿は新たな魔石を作るとかで山に籠られております」
「あんなにいっぱいあったのに?まだ作るの?」
「輝竜殿の棲みかにはお邪魔したことがありませんので、なんとも……。ただ、新しく特別な魔石を用意するため、とのお話でした」
「そうなんだ……じゃあ、今日は来ないんだね?」
「はい。本日はスズロ王子より古竜様のご機嫌伺いをするようにとのことで参上いたしました」
「ごきげんうかがい?」
「それなあに?」
 黒ドラちゃんとドンちゃんはゲルードがいったい何をしてくれるんだろうとワクワクして聞き返しました。

「古竜様がお元気かどうか、何かお入用のものや、お困りのことがあればお助けするように、とのことです」

「あたし、元気だよ!」
 黒ドラちゃんがすぐに答えます。するとドンちゃんが「黒ドラちゃん、あのことゲルードに聞いてみたら?」と背中からささやいてきました。
「あのこと、とは?」
 ゲルードったらしっかり聞いていたみたいです。

「あのねー、あたし大きくなったかなー?って」
「はて?」
 ゲルードにはよくわからないようでした。
「あのね、最近目が覚めるたびに体が大きくなってきてる感じがするの。体の中の方からグーンて感じに」
「ふむ、グーン……ですか」
 ゲルードは黒ドラちゃんのことを上から下までじっくり見ました。
「私が見る限り、あまり変化はないような気がしますが」
「そういうの魔力でわからないの?国一番の魔術師なんでしょ?」
 黒ドラちゃんが言うとゲルードは白いマントをサッとひるがえし「もちろん、国一番でございます!」と胸を張りました。
「しかし、竜と言うのは謎の多い存在で、まだまだ人の手で解明できている部分はほんのわずか」
「そうなんだー」
 黒ドラちゃんはがっかりしました。一緒にドンちゃんのお耳も垂れちゃいました。
「ですが、輝竜殿でしたら何か分かるかもしれません」
「でも、ブランは来られないんでしょ?」黒ドラちゃんが尋ねると「連絡を取ることは出来ます」とゲルードが答えました。マントの中から白い大きな魔石のついた杖を取り出します。
前に言っていた、王様から成人のお祝いでいただいた杖ですね。そして、魔石の部分を握りしめると、何かブツブツと呪文を唱えだしました。




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登場人物紹介

●黒ドラちゃん

古の森の大きな大きな大きな木の根元にある洞に棲んでいる、古竜の子ども。

可愛いものが大好きで、一番の親友はウサギのドンちゃん。

全身をつややかな黒いうろこで覆われている。

瞳は鮮やかで優しい若葉色。

今度の生では生まれて三年目、

●ドンちゃん

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

黒ドラちゃんの一番の親友。

初めて黒ドラちゃんと出会ったときは、まだ仔ウサギだった。

古の森の可愛い系のお友だち。

茶色のふわふわの毛、優しい茶色の瞳。

現在のアイコンの姿には納得できていないとか……

●モッチ

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森にだけ棲むというクマン魔蜂さん。その中でも特に大きくて力持ちで、冒険心も豊富。特技は特大はちみつ玉作り。


●ブラン

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

北の山に棲む輝竜。白銀に輝く美しい竜。瞳は古の森の湖と同じエメラルド色。年齢は120~130歳くらい、人間の姿は16~18歳くらい。

黒ドラちゃんの事を番認定しているものの、愛の道のりは遠く険しい。

魔術師が魔法を使う際に必要になる、魔石を作り出す力があり、国で重要視されているため、普段は国外へは出られない。魔石については、バルデーシュ国の代々の王と、なにやら契約をしているようす。その辺の事情はまだ明らかにはされていない……作者が人間を描くのが苦手なため、容姿については想像力の翼を広げてください。

●ゲルード

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

ゲルード=一応国一番の魔術師。

サラッサラの長く美しい金髪に透き通った青い目。見た目だけならスズロ王子と互角。けれどスズロ王子と魔術の事で頭の中がいっぱいの残念な存在。いつかイラスト化しようと思ってはいるが、ブランが描けないのと同じ理由でアイコンは……想像力の翼を鍛えてください。

●スズロ王子、20歳。バルデーシュの第一王子。

ゲルードとは幼馴染。金のクルクルっ毛、透き通った水色の瞳。妖精からも愛される、色んな意味で光り輝く王子様。

●マグノラさん

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森近くにある、白いお花の森に棲む華竜。花を咲かせる植物や、そこからの実りを見守る存在。人間や動物も同じく、子どもを身ごもるものの守り竜と言われている。年齢は580歳くらいで、赤茶色の大きな体。ガラガラ声だが、基本的に穏やかで優しく面倒見が良い。

ブランが生意気盛りの頃、お灸をすえたことあり。


●ラウザー

「貝をお耳にあてるんだ!」から本格的に登場。

バルデーシュ国の南の方に広がる砂漠に棲んでいた陽竜。ブランより少し遅れて誕生、115~125歳くらい。人間の姿では16~18歳くらい。とにかく明るくて良い奴。体も鮮やかな橙色。ただし、その性質から棲んでいる場所に雨が降らなくなり砂漠化しやすい。お天気竜、お祭り竜などと人間からは呼ばれている。村の女の子に失恋して孤独感から魔力のゆらぎを起こし、がけっぷちの受験生ロータを呼び寄せることになった。

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