第87話 オアシスでビリビリフォーエバー 

文字数 1,061文字

 今日は砦に戻って、オアシスでラキ様とのんびりしている。水の中もずいぶん慣れた。もう、こんなすいすい泳いじゃうよ、俺!見て見てラキ様、俺の華麗な泳ぎを!

「ん?羅宇座よ、お前、何か落としたぞ?」
 声をかけられて振りむくと、ラキ様が何かを拾っているところだった。え、なに?紙?

 ラキ様が紙から目を離さない。食い入るように読み込んでいたが、不意に目を細めて「これは、何だ?羅宇座」と聞いてきた。
「えっとお、えっとお……」
 尻尾を高速ニギニギしながら、後ろに下がる。って言ってもオアシスの中だから、そんなに下がれないんだけど。尻尾で顔を隠しながら、チラチラとラキ様を見る。見られちゃったよな?俺の<愛のオアシス日記>

「えっと、ラキ様の……似顔絵です」言っちゃったー!恥ずかしい!

 その場でクルクル回転していると、これまでで最大級の稲光が俺の尻尾を直撃した。
「ピギャーーーーーーーーッ!」
 なんで?どうして!?

「お、おのれ羅宇座。この化け物のどこが我なのじゃ!?お前の眼には我はこのようにおぞましく映っておるのか!?」
「えっ!?化け物?」
 俺の<愛のオアシス日記>には、そんなもの書いた覚えはない。思わずラキ様の持つ紙を覗き込む。
 間違いない。俺の描いた似顔絵だ。
「えっと、ラキ様?あの、その、その絵は化け物では無くてですね――」
「許せん!羅宇座の分際で、我を化け物扱いするとは!!」なんかラキ様がものすごく怒ってる。
「ち、違います、よく見てください、これは化け物じゃなくて、俺の、俺の、愛する女神様のっ」
 ドシーーーーン!バリバリバリバリバリっ!ものすごい雷にオアシス中が光った。ラキ様が持っていた紙は、水の中にも関わらず消し炭になっていた。

 ああ、が―――

 その後、コレドさんや砦の皆も巻き込んで、ラキ様のご機嫌回復計画が練られた。けど、結局はリュングの「陽竜様は絵が下手なんですよ。あれほど女神様に夢中になってるくせに上手には描けないんだから」っていう一言でラキ様の怒りはあっさり収まった。なんなんだよ、いったい。

 そんなわけで、それから毎日、俺はオアシスの中でラキ様の似顔絵を練習させられている。うまく描けた!と思ってラキ様に見せても、絵を見たとたん眉間にしわを寄せて睨むのでツライ。うまく描けるまでは、尻尾への稲光もお預けになった。


 はあ、似顔絵なんて描かなきゃ良かった。だってラキ様は、絵にも描けない美しさ、なんだからさ。えへへ。

 それじゃあ、またな!
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登場人物紹介

●黒ドラちゃん

古の森の大きな大きな大きな木の根元にある洞に棲んでいる、古竜の子ども。

可愛いものが大好きで、一番の親友はウサギのドンちゃん。

全身をつややかな黒いうろこで覆われている。

瞳は鮮やかで優しい若葉色。

今度の生では生まれて三年目、

●ドンちゃん

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

黒ドラちゃんの一番の親友。

初めて黒ドラちゃんと出会ったときは、まだ仔ウサギだった。

古の森の可愛い系のお友だち。

茶色のふわふわの毛、優しい茶色の瞳。

現在のアイコンの姿には納得できていないとか……

●モッチ

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森にだけ棲むというクマン魔蜂さん。その中でも特に大きくて力持ちで、冒険心も豊富。特技は特大はちみつ玉作り。


●ブラン

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

北の山に棲む輝竜。白銀に輝く美しい竜。瞳は古の森の湖と同じエメラルド色。年齢は120~130歳くらい、人間の姿は16~18歳くらい。

黒ドラちゃんの事を番認定しているものの、愛の道のりは遠く険しい。

魔術師が魔法を使う際に必要になる、魔石を作り出す力があり、国で重要視されているため、普段は国外へは出られない。魔石については、バルデーシュ国の代々の王と、なにやら契約をしているようす。その辺の事情はまだ明らかにはされていない……作者が人間を描くのが苦手なため、容姿については想像力の翼を広げてください。

●ゲルード

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

ゲルード=一応国一番の魔術師。

サラッサラの長く美しい金髪に透き通った青い目。見た目だけならスズロ王子と互角。けれどスズロ王子と魔術の事で頭の中がいっぱいの残念な存在。いつかイラスト化しようと思ってはいるが、ブランが描けないのと同じ理由でアイコンは……想像力の翼を鍛えてください。

●スズロ王子、20歳。バルデーシュの第一王子。

ゲルードとは幼馴染。金のクルクルっ毛、透き通った水色の瞳。妖精からも愛される、色んな意味で光り輝く王子様。

●マグノラさん

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森近くにある、白いお花の森に棲む華竜。花を咲かせる植物や、そこからの実りを見守る存在。人間や動物も同じく、子どもを身ごもるものの守り竜と言われている。年齢は580歳くらいで、赤茶色の大きな体。ガラガラ声だが、基本的に穏やかで優しく面倒見が良い。

ブランが生意気盛りの頃、お灸をすえたことあり。


●ラウザー

「貝をお耳にあてるんだ!」から本格的に登場。

バルデーシュ国の南の方に広がる砂漠に棲んでいた陽竜。ブランより少し遅れて誕生、115~125歳くらい。人間の姿では16~18歳くらい。とにかく明るくて良い奴。体も鮮やかな橙色。ただし、その性質から棲んでいる場所に雨が降らなくなり砂漠化しやすい。お天気竜、お祭り竜などと人間からは呼ばれている。村の女の子に失恋して孤独感から魔力のゆらぎを起こし、がけっぷちの受験生ロータを呼び寄せることになった。

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