第8話-ブランはキラキラ

文字数 1,702文字

 そんな風にしばらく飛んでいたら、いつの間にか足のはるか下には、ブランのお家のある山の、ふもとが広がっていました。ブランの住んでいる山は、ふもとには深い森があり、だんだんと上に行くほど緑が少なくなり、そして雪が積もっていました。
「雪!」
 黒ドラちゃんが叫びます。
「うん、ようこそ、我が家へ。さあ、行こう!」
 ブランが先になってどんどん山の上の白いところを目指して飛んでいきます。山の上の方は吹雪でしたが、ブランの後に続いて飛んでいると、不思議と風も雪もぶつかってきませんでした。かなり上の方へ登って(だんだんと頂上に近づいているんだろうなあ)と思っていると白い山にぽっかりと黒い穴が開いているのが見えました。
「あれが、ブランのおうちー?」
 黒ドラちゃんが叫びます。叫ばないとなんとなく吹雪に負けそうな気がするからです。
「そうだよー!」
 ブランも叫び返してきました。ぽっかり開いた穴の中に、吸い込まれるようにブランと黒ドラちゃんは入っていきました。
 外から見たら、真っ黒けの穴に見えたブランのおうちの中は、不思議とほんのり明るくて黒ドラちゃんは不思議だなあと思いました。キョロキョロあたりを見回していると「こっち、こっち」とブランが奥の方へ進んでいきます。ほの暗い穴の中でも、ブランのキラキラは良く見えました。それも不思議だなあと黒ドラちゃんは思いました。黒ドラちゃんもお外で陽の光を浴びればキラキラですが、ここでは光りません。
「暗くてもブランはキラキラだね」
黒ドラちゃんがつぶやくと「僕は輝竜なんだ」とブランが言いました。
「きりゅう?なあに、キラキラしてる竜ってこと?」
「まあ、簡単に言うとそんな感じ」
 ブランが奥へと進みながら答えます。
(じゃあ、簡単じゃないとどうなるのかな?)黒ドラちゃんはちらっと考えましたが、目の前にいきなり広がった光景にびっくりして考えていたことを全部忘れちゃいました。

 ブランのおうちの奥は、キラキラと輝く大小様々な石の塊だらけでした。色々な種類があるらしく、透明だったり中に筋が通っていたり、光が閉じ込められているように見えるものもありました。
「すごい!すごい!すごい!きれーい!」
 黒ドラちゃんが興奮して叫びます。触ってみたくて手がワキワキしちゃいます。でも、これはきっとブランの宝物に違いありません。勝手に触ったらいけないよね?と黒ドラちゃんがブランをみると「ぜひ手に取ってみてよ」と言ってくれました。やったー!黒ドラちゃんはまず光が閉じ込められているような石を手に取ってみました。黄色い透明な石の中に、キラキラと光が見えています。
「これ、なんで光るのー?」黒ドラちゃんが尋ねると、ブランが思いもよらないことを教えてくれました。
「僕の魔力を吸収したんだ」
「へ?」
「ここにある石は、最初はみんなそこらへんにあるただの石なんだけど、僕がここにしまいこんで何度も触ったりしているうちに輝くようになるんだ」
「えー!じゃあ、あの一番大きくてブランの瞳みたいなきれいなやつもそうなの?」
 黒ドラちゃんが指した先には、黒ドラちゃんくらいの大きさのとても綺麗な緑色に光る石がありました。いや、石というよりもう岩って感じです。
「うん、これはね、僕が産まれた時にこの岩穴のフタになっていたんだ。それを開けて外に出るために少しづつ奥に動かしてきたんだ」
「産まれた時!すごいね!その頃からブランの魔力を吸収しているの?」
「そう、初めは普通の岩だったけど、だんだん緑色になってきて、それから段々透き通って輝くようになった」
「はあーっ!なんかものすごいんだね、この岩」
「うん、僕もこの岩だけは特別な感じがしているよ。これだけは譲れないなぁ」
「ゆずる?誰かにあげちゃうの?」
 もったいない!黒ドラちゃんが驚くとブランがまた教えてくれました。
「僕はここにある石を、来る時に出会ったゲルードとか、ああいう魔術師に譲るんだ。そういう約束なんだ」

 あんなに仲が悪そうだったのに、こんなにきれいな石をあげちゃうなんて、ほんとは仲良しさん?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

●黒ドラちゃん

古の森の大きな大きな大きな木の根元にある洞に棲んでいる、古竜の子ども。

可愛いものが大好きで、一番の親友はウサギのドンちゃん。

全身をつややかな黒いうろこで覆われている。

瞳は鮮やかで優しい若葉色。

今度の生では生まれて三年目、

●ドンちゃん

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

黒ドラちゃんの一番の親友。

初めて黒ドラちゃんと出会ったときは、まだ仔ウサギだった。

古の森の可愛い系のお友だち。

茶色のふわふわの毛、優しい茶色の瞳。

現在のアイコンの姿には納得できていないとか……

●モッチ

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森にだけ棲むというクマン魔蜂さん。その中でも特に大きくて力持ちで、冒険心も豊富。特技は特大はちみつ玉作り。


●ブラン

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

北の山に棲む輝竜。白銀に輝く美しい竜。瞳は古の森の湖と同じエメラルド色。年齢は120~130歳くらい、人間の姿は16~18歳くらい。

黒ドラちゃんの事を番認定しているものの、愛の道のりは遠く険しい。

魔術師が魔法を使う際に必要になる、魔石を作り出す力があり、国で重要視されているため、普段は国外へは出られない。魔石については、バルデーシュ国の代々の王と、なにやら契約をしているようす。その辺の事情はまだ明らかにはされていない……作者が人間を描くのが苦手なため、容姿については想像力の翼を広げてください。

●ゲルード

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

ゲルード=一応国一番の魔術師。

サラッサラの長く美しい金髪に透き通った青い目。見た目だけならスズロ王子と互角。けれどスズロ王子と魔術の事で頭の中がいっぱいの残念な存在。いつかイラスト化しようと思ってはいるが、ブランが描けないのと同じ理由でアイコンは……想像力の翼を鍛えてください。

●スズロ王子、20歳。バルデーシュの第一王子。

ゲルードとは幼馴染。金のクルクルっ毛、透き通った水色の瞳。妖精からも愛される、色んな意味で光り輝く王子様。

●マグノラさん

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森近くにある、白いお花の森に棲む華竜。花を咲かせる植物や、そこからの実りを見守る存在。人間や動物も同じく、子どもを身ごもるものの守り竜と言われている。年齢は580歳くらいで、赤茶色の大きな体。ガラガラ声だが、基本的に穏やかで優しく面倒見が良い。

ブランが生意気盛りの頃、お灸をすえたことあり。


●ラウザー

「貝をお耳にあてるんだ!」から本格的に登場。

バルデーシュ国の南の方に広がる砂漠に棲んでいた陽竜。ブランより少し遅れて誕生、115~125歳くらい。人間の姿では16~18歳くらい。とにかく明るくて良い奴。体も鮮やかな橙色。ただし、その性質から棲んでいる場所に雨が降らなくなり砂漠化しやすい。お天気竜、お祭り竜などと人間からは呼ばれている。村の女の子に失恋して孤独感から魔力のゆらぎを起こし、がけっぷちの受験生ロータを呼び寄せることになった。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み