第200話-どうやって行くの?

文字数 2,336文字

 翌朝、洞の前に黒ドラちゃんとドンちゃん、モッチ、ダンゴローさんが集っていました。ダンゴローさんの手には、キラキラと輝く金のスコップが握られています。黄金色のフカフカ谷へ帰る準備がようやく整ったのです。


 さっそく『フカフカ谷に行って、黄金色にするよ大作戦!』の作戦会議を開くことにしました。もちろん、いつも色々と考えて助けてくれるブランも、参加予定です。
 もうすぐここへ来てくれるはずです。切り株の上には、クマン魔蜂さんマークの茶器が揃えられています。ブランが来たら、お茶を淹れてあげるつもりです。その前に、先に集まったメンバーでのおしゃべりが始まりました。

「ねえ、黒ドラちゃん、あたしずっと不思議に思ってたんだけど」
 ドンちゃんが黒ドラちゃんに話しかけます。
「なにを?」
 木の実をモグモグしながら黒ドラちゃんが聞き返します。
「あのね、どうやってクロ様はフカフカ谷へ行ったのかな?って」
 ドンちゃんが首をかしげながら言いました。
「どうやって、ですか?」
 ダンゴローさんが良くわからないと言う風に聞き返します。
「うん。だってさ、その金のスコップで掘る穴っていったら小さいでしょ?どうやって大きな竜が入れたのかな?って」
「そう言えばそうだよね!?あたし、ちゃんともぐれるかな?」
 黒ドラちゃんが不安そうに言います。
「あ、それならご心配には及びません!」
 ダンゴローさんが答えます。
「金のスコップは魔法のアイテム!持った生き物はダンゴロムシの穴の大きさに合わせて縮まります」
「へえーーーっ!」
 ダンゴローさんの答えにみんなでビックリしました。

「じゃあさ、ちょっと持って見ても良い?」
 黒ドラちゃんがワクワクしながらダンゴローさんにたずねました。
「はい。黒ドラさ……黒ドラちゃんにはぜひお試しいただきたいです」
 ダンゴローさんが捧げるように黒ドラちゃんの前に金のスコップを差し出します。
「ありがとう!では、さっそく持ってみまーす!」
 黒ドラちゃんは金のスコップをそっとつまみました。すると、黒ドラちゃんの体が金色に輝き、ヒュルルルル~ンと小さくなりました。輝きが納まった時、そこにはモッチやダンゴローさんと変わらないくらいの大きさになった黒ドラちゃんがいました。

「わっ!すごいね黒ドラちゃん!すっかりプチドラちゃんだよ!」
 いつもは黒ドラちゃんを見上げているドンちゃんが、上から見下ろしています。
「わ~っ!ドンちゃんがすごく大きい!!」
 黒ドラちゃんが驚いてドンちゃんを見上げました。
「あたしは変わってないよ、黒ドラちゃんが小ちゃくなっちゃったんだよ」
 ドンちゃんがうずくまって黒ドラちゃんの前でお鼻をクンクンさせています。
「匂いは変わらないね、黒ドラちゃんの匂いだ」
 そう言って、ドンちゃんはちょっと安心したようでした。

「ぶぶいん!」
「そうだね、なんだかモッチと並んで立ってるなんて不思議な感じ」
「ぶぶん、ぶいん!」
「わかったよ」
「えっ、手をつなぐのですか?」
 モッチは黒ドラちゃんとの間にダンゴローさんをはさんで、三匹で手をつなぎました。
「ぶいん!」
「うん、行くよ!」
 そう言って黒ドラちゃんとモッチで羽を動かします。
 三匹はふわりと浮かびあがり、切り株の上へと移動しました。
「おお!これはなんだか新しい感覚です!」
 ダンゴローさんが興奮して叫びました。
「ぶいん?」
「はい、あの、モッチさんに抱えられていた時は運ばれてる感がありましたが、今のは飛んでる感がありました!」
 ダンゴローさんは、モッチと黒ドラちゃんとつないでいる手をぶんぶんと振りました。
「ぶぶい~~~ん」
 モッチが黒ドラちゃんに合図すると、再び三匹で浮かび上がります。
「おお!飛んでます!飛んでます!」
 ダンゴローさんは大喜びです。

 ひとしきり切り株の周りを飛びまわってから、元の場所へと戻ってきました。三匹で降りると、黒ドラちゃんは金のスコップをダンゴローさんへ返します。再び金色に輝いた後、黒ドラちゃんの体は元の大きさに戻りました。

「はあ~、面白かったぁ!切り株の周りを回っただけなのに、すっごく楽しかったね!」
 黒ドラちゃんの言葉にモッチがぶんぶんうなずいています。ダンゴローさんが黒いポチリとした目を輝かせました。
「ダンザエモンはクロ様の背中に乗せて頂いたことがあると言っておりましたが、一緒に飛んだとは言っておりませんでした。ダンゴロムシ史上初の快挙です!」
 金のスコップを片手で掲げて、なにやら高らかに宣言するみたいな感じになってます。
「ぶぶいん」
「あ、そうですね、黒ドラちゃんも小さくなれたし、これでフカフカ谷へ行く準備はすっかり整いました!」
 ダンゴローさんが気合を入れて金のスコップをキュッと握りしめました。

 黒ドラちゃんたちが『フカフカ谷に行って、黄金色にするよ大作戦!』成功間違いなし!と盛り上がっていると、湖の向こう側に難しい顔をしたブランが現れました。

「ブラーン!おはよー!」
 黒ドラちゃんが尻尾を振り振りしながら大きな声であいさつをすると、ブランはすぐに湖を飛び越えてこちら側へと来てくれました。

「おはよう、黒ちゃん」

 そう言いながら、湖と同じ碧い眼が心配そうに黒ドラちゃんを見つめます。
「ブラン?」
「あのさ、黒ちゃん、今回は僕が一緒に行こうと思うんだ」
「えっ!ブランが!?でも、ブランはバルデーシュを出ちゃいけないんでしょ?」
「う、うん……そうだけど……」
「それに、ダンゴロムシさんの金のスコップは、一度に一匹、それも持ってる間しか小さくなれないんだよ」
「えっ、そうなのかい!?」
「うん、だから、一緒に行けるのはあたしだけ」
「ぶぶいん!」
「あ、そうだった、あたしとモッチだけなんだ」
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登場人物紹介

●黒ドラちゃん

古の森の大きな大きな大きな木の根元にある洞に棲んでいる、古竜の子ども。

可愛いものが大好きで、一番の親友はウサギのドンちゃん。

全身をつややかな黒いうろこで覆われている。

瞳は鮮やかで優しい若葉色。

今度の生では生まれて三年目、

●ドンちゃん

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

黒ドラちゃんの一番の親友。

初めて黒ドラちゃんと出会ったときは、まだ仔ウサギだった。

古の森の可愛い系のお友だち。

茶色のふわふわの毛、優しい茶色の瞳。

現在のアイコンの姿には納得できていないとか……

●モッチ

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森にだけ棲むというクマン魔蜂さん。その中でも特に大きくて力持ちで、冒険心も豊富。特技は特大はちみつ玉作り。


●ブラン

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

北の山に棲む輝竜。白銀に輝く美しい竜。瞳は古の森の湖と同じエメラルド色。年齢は120~130歳くらい、人間の姿は16~18歳くらい。

黒ドラちゃんの事を番認定しているものの、愛の道のりは遠く険しい。

魔術師が魔法を使う際に必要になる、魔石を作り出す力があり、国で重要視されているため、普段は国外へは出られない。魔石については、バルデーシュ国の代々の王と、なにやら契約をしているようす。その辺の事情はまだ明らかにはされていない……作者が人間を描くのが苦手なため、容姿については想像力の翼を広げてください。

●ゲルード

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

ゲルード=一応国一番の魔術師。

サラッサラの長く美しい金髪に透き通った青い目。見た目だけならスズロ王子と互角。けれどスズロ王子と魔術の事で頭の中がいっぱいの残念な存在。いつかイラスト化しようと思ってはいるが、ブランが描けないのと同じ理由でアイコンは……想像力の翼を鍛えてください。

●スズロ王子、20歳。バルデーシュの第一王子。

ゲルードとは幼馴染。金のクルクルっ毛、透き通った水色の瞳。妖精からも愛される、色んな意味で光り輝く王子様。

●マグノラさん

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森近くにある、白いお花の森に棲む華竜。花を咲かせる植物や、そこからの実りを見守る存在。人間や動物も同じく、子どもを身ごもるものの守り竜と言われている。年齢は580歳くらいで、赤茶色の大きな体。ガラガラ声だが、基本的に穏やかで優しく面倒見が良い。

ブランが生意気盛りの頃、お灸をすえたことあり。


●ラウザー

「貝をお耳にあてるんだ!」から本格的に登場。

バルデーシュ国の南の方に広がる砂漠に棲んでいた陽竜。ブランより少し遅れて誕生、115~125歳くらい。人間の姿では16~18歳くらい。とにかく明るくて良い奴。体も鮮やかな橙色。ただし、その性質から棲んでいる場所に雨が降らなくなり砂漠化しやすい。お天気竜、お祭り竜などと人間からは呼ばれている。村の女の子に失恋して孤独感から魔力のゆらぎを起こし、がけっぷちの受験生ロータを呼び寄せることになった。

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