第197話-お宝大集結

文字数 2,305文字

 カミナリ玉と、それを追いかけるカーラスたちが作り出した二色の帯は、黒ドラちゃんたちのいる草原へどんどん近づいてきます。そして、集まってきたカミナリ玉が、黒ドラちゃんの前に山となって積もりました。

「カ!?カカーーーーーーッ!」
「カア!カア!」
「カーーーーッ!?」

 突然竜を前にして、カーラス達は驚きつつも頭上を飛び続けています。カミナリ玉を取り返したい気持ちと、竜を恐れる気持ちで、グルグルしてしまっているようです。

「お願い!カーラスさんたち、降りてきて、ちょっとお話を聞いて!」
 黒ドラちゃんが大きな声で話しかけると、カーラスの中から特別に大きな1羽が現れました。ゆっくりと弧を描きながら黒ドラちゃんの方へ近づいてきます。そして、ちょっと警戒しながらも、黒ドラちゃんの目の前に降りました。

「カア?」

「あのね、カーラスさんたちにお話があって、集まってもらったの」

 黒ドラちゃんがそう言うと、大きなカーラスの後ろに、他のカーラス達も降りてきました。ちらちらと山積みのカミナリ玉を物欲しそうに見ていますが、竜の手前ですから大人しくしています。
「このカミナリ玉は、ラキ様と言う女神様に用意してもらいました」
「カア」
「これから皆さんに、あるモノの行方を聞きます。それをこの場に持ってきてもらえたら、カミナリ玉は皆さんのものです」
「カアカアッ!!」
 言ってみな、早く言ってみなよ!って感じで一斉に鳴いています。

「実は、ここにいるダンゴロムシのダンゴローさんの金のスコップが無くなってしまいました」
 黒ドラちゃんが、頭の上のダンゴローさんをカーラス達に見せながら話しだします。無くなったって言った方が、返しやすくなるよってブランが教えてくれたんです。

「金のスコップはダンゴロムシさんの宝物、唯一の魔法のアイテムです!」
「カ!カカーッ!?」
 すげえじゃん、なにそれ!?って、またまた一斉に騒いでいます。

「それが無いと、ダンゴローさんは故郷へ帰れません」
「カ、カカア~」
 え、それ可哀そうじゃんか、みたいな鳴き方です。

「金のスコップはピカピカです。ひょっとして、皆さんの中で見たことあるって方いませんか?」
「……カ、カア?」
 さ、さあな、みたいな感じです。でも、ソワソワしている感じが伝わってきます。きっと、光りモノを勝手に持って来ちゃったことに、どのカーラスも心当たりがあるんでしょう。もうひと押しです!

「えっと、ここでラキ様から皆さんにお知らせです」
 黒ドラちゃんがちょっと後ろへ下がると、入れ違いに絢爛豪華なキモノ姿のラキ様が前に出ました。キラキラ光るその姿に、カーラス達が浮足立ってます。

「カーラスども、良く聞け」
 途端にピッ!として、カーラスは一羽残らずラキ様の言葉を待っています。
「ここに特大のカミナリ玉がある」
 ラキ様がすっと右手を前に出すと、その手の平には握りこぶしよりも大きなカミナリ玉が光っていました。

「カ!?カカーッ!」
「カア!カア!」
「カーー!?」
 もう一斉に大騒ぎです。

「我は、この特大カミナリ玉を、ダンゴローの金のスコップを見つけた者に与え……」

 ラキ様は最後までしゃべれませんでした。何しろ、集まっていたカーラスが1羽残らずものすごい勢いで巣に飛んで帰ってしまったからです。
「わかりやすい奴らじゃな」
 ラキ様がちょっとあきれながらつぶやきました。

 草の陰で見守っていたゲルードたちが戻ってきました。
「さて、これで後は金のスコップが持ち込まれるのを待つだけですな」
「うまく見つかると良いけど」
 ブランが少し心配そうです。見つかったら見つかったで、今度は黒ドラちゃんが地下に潜ることになります。ブランは色々と複雑な気持ちなのかもしれません。

 黒ドラちゃんの頭の上から草の上に降ろしてもらって、ダンゴローさんは心配そうに背中を丸めています。
「ぶぶいん!」
 モッチが元気良く羽音を立てました。
「そうだよ、きっと見つかるよ、大丈夫!」
 ドンちゃんも一緒になって、ダンゴローさんを励ましました。

 ラウザーは相変わらずラキ様を見つめてボーっとしています。尻尾はすっかりくたくたになっています。リュングが横で、一生懸命何か呪文を唱えて、尻尾を綺麗にピンとさせようとしています。

 黒ドラちゃんはぐるりとまわりを見回して、カーラスが戻るのを待っていました。

 その時、黒い点があちこちに現れました。どれもカーラスです。それぞれキラッと光るものを咥えています。

「戻ってきた!!」
 黒ドラちゃんの声に、みんなが一斉に空を見上げました。

 見ると、カーラス達は自分の巣に飾っていた、とびっきりの光りモノを咥えていました。金のスコップを持っているのは1羽だけのはずですが、もうそんなことは関係なくなってしまっているようでした。とにかくラキ様の見せた特大カミナリ玉が欲しい!カーラス達の頭にはそれしかないようです。
「カアアアアーーーーーッ!?」
「カカーーーーッ!?」
「カアッ!カアーーーーッ!?」
 見てくれ、これこれ、これだろ?決まりだろ?みたいな感じで次々に黒ドラちゃんとラキ様の前に光りモノのお宝を見せに来ます。けれど、ダンゴローさんの金のスコップは見当たりません。

「あ、あれは数年前に王宮から行方不明になったブローチです!」
 ゲルードが小声で訴えてきますが、今は金のスコップ探しが優先です。とりあえず、今回はブローチについては諦めてもらうことにしました。

「金のスコップ見当たらないね」
 ドンちゃんが不安そうにつぶやきます。その言葉にうなずきながら、黒ドラちゃんは、あの特別に大きな1羽が、まだ戻っていないことに気付きました。
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登場人物紹介

●黒ドラちゃん

古の森の大きな大きな大きな木の根元にある洞に棲んでいる、古竜の子ども。

可愛いものが大好きで、一番の親友はウサギのドンちゃん。

全身をつややかな黒いうろこで覆われている。

瞳は鮮やかで優しい若葉色。

今度の生では生まれて三年目、

●ドンちゃん

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

黒ドラちゃんの一番の親友。

初めて黒ドラちゃんと出会ったときは、まだ仔ウサギだった。

古の森の可愛い系のお友だち。

茶色のふわふわの毛、優しい茶色の瞳。

現在のアイコンの姿には納得できていないとか……

●モッチ

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森にだけ棲むというクマン魔蜂さん。その中でも特に大きくて力持ちで、冒険心も豊富。特技は特大はちみつ玉作り。


●ブラン

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

北の山に棲む輝竜。白銀に輝く美しい竜。瞳は古の森の湖と同じエメラルド色。年齢は120~130歳くらい、人間の姿は16~18歳くらい。

黒ドラちゃんの事を番認定しているものの、愛の道のりは遠く険しい。

魔術師が魔法を使う際に必要になる、魔石を作り出す力があり、国で重要視されているため、普段は国外へは出られない。魔石については、バルデーシュ国の代々の王と、なにやら契約をしているようす。その辺の事情はまだ明らかにはされていない……作者が人間を描くのが苦手なため、容姿については想像力の翼を広げてください。

●ゲルード

「雪をお口に入れるんだ!」から登場。

ゲルード=一応国一番の魔術師。

サラッサラの長く美しい金髪に透き通った青い目。見た目だけならスズロ王子と互角。けれどスズロ王子と魔術の事で頭の中がいっぱいの残念な存在。いつかイラスト化しようと思ってはいるが、ブランが描けないのと同じ理由でアイコンは……想像力の翼を鍛えてください。

●スズロ王子、20歳。バルデーシュの第一王子。

ゲルードとは幼馴染。金のクルクルっ毛、透き通った水色の瞳。妖精からも愛される、色んな意味で光り輝く王子様。

●マグノラさん

「おとなになるって、かゆいんだ!」から本格的に登場。

古の森近くにある、白いお花の森に棲む華竜。花を咲かせる植物や、そこからの実りを見守る存在。人間や動物も同じく、子どもを身ごもるものの守り竜と言われている。年齢は580歳くらいで、赤茶色の大きな体。ガラガラ声だが、基本的に穏やかで優しく面倒見が良い。

ブランが生意気盛りの頃、お灸をすえたことあり。


●ラウザー

「貝をお耳にあてるんだ!」から本格的に登場。

バルデーシュ国の南の方に広がる砂漠に棲んでいた陽竜。ブランより少し遅れて誕生、115~125歳くらい。人間の姿では16~18歳くらい。とにかく明るくて良い奴。体も鮮やかな橙色。ただし、その性質から棲んでいる場所に雨が降らなくなり砂漠化しやすい。お天気竜、お祭り竜などと人間からは呼ばれている。村の女の子に失恋して孤独感から魔力のゆらぎを起こし、がけっぷちの受験生ロータを呼び寄せることになった。

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