File21:答えを知る者
文字数 5,051文字
ローラが救出された後、居場所が特定された事を悟った『シューティングスター』が拠点を変えたらしく、ケネス・ハーン州立保養地から宇宙船の痕跡は完全に消え去ってしまっていた。
奴が諦めてどこかへ飛び去ってくれたなどという希望的観測をする者は誰も居なかった。奴は間違いなくまだこのLAのどこかに潜伏している。ローラもミラーカもそれを確信していた。
ローラはクレアとも無事の再会を喜び合い、そこでFBIが9人目のターゲット、女優のブリジット・ラングトンを何とか守りきったというニュースを聞かされた。ニックのお手柄らしい。
だが『シューティングスター』がこれで諦めるはずがないという意見にはクレアも同意しており、必ず次の『狩り』の予告が来るはずだという予想も一致した。
次の『狩り』までにローラの作戦 が功を奏してくれれば……。そう願うが、その作戦遂行の為に『シューティングスター』の懐に敢えて残ったクリスの安否は不明のままであった。
州立保養地に死体が無かった事から潜入 には成功したのではないかと目されていたが、今どこにいてどのような状態なのか……。それらの情報は当然不明だ。ローラに出来る事はひたすらに彼の無事と作戦の成功を祈る事だけだった。
因みにクリスが残った事を聞いたナターシャは最初激しく取り乱した。その反応を訝しんだローラだが、ミラーカから警察署での顛末を聞いて納得した。ナターシャはクリスに命を助けられた事で彼に何らかの好感情を抱いていたようである。しかしローラやミラーカが事情を説明すると次第に落ち着きを取り戻し、理解を示してくれた。
だがやはり居ても立っても居られないのか、『シューティングスター』の新しい情報を集めると言って足早に立ち去っていった。
救出された翌日にはローラはリンファとも再会を喜び合ったが、同時に彼女からLAPDが受けた具体的な被害を聞かされて息を吞む事になった。またネルソンの更迭についてもそこで知った。
ドレイク本部長の主導の元、組織の再編にはしばらく掛かると見込まれ、当面は各分署などからも人員を引っ張ってきて対応する事になるようだ。
また休暇 から戻って来たジョンとも再会したが、彼は職場が受けた余りの被害の大きさに絶句していた。そして散々ばら『シューティングスター』とネルソンへの毒を吐き散らしていた。
「俺はしばらく本部長の下で組織の復旧に尽力しなきゃならん。その間現場はお前らに任す事になるが……くれぐれも無茶はするなよ?」
ジョンはそんな風に忠告してくれた。当然警察が被害を受けたからといって、犯罪者達が気を使って休んでくれる事など無い。いや、むしろ今がチャンスだとばかりに増長する可能性が高い。
『シューティングスター』に被害は受けたが、それでも警察に休む暇はないのだ。ジョンの忠告も虚しく、ローラもリンファもいつも以上に忙しく駆けずり回る羽目になった。
そんな最中の事……予定通りであれば『シューティングスター』から次のターゲットに向けて殺害予告が送られているであろう日となった。
しかし不思議な事にターゲットから保護を求める電話が掛かってこなかった。大きな被害を出してしまい現在立て直し中のLAPDに掛かってこないのはまだ納得できるが、FBIにも電話が掛かって来ていないらしい。
ローラ達の予測では『シューティングスター』は諦めておらず、むしろ前回のゲームで失敗したからこそ、今回は絶対に成功させようと躍起になっているはずであった。
なのにターゲットからの保護を求める連絡がどの機関にも来ていない。
(まさか……クリスがやってくれたのかしら……?)
他に考えられる理由がない事から、ローラはそんな希望を抱いた。だが……それが儚い希望であった事を彼女は翌日には思い知る事となった。
****
「……駄目ね。今日になってもどこからも連絡が無かったわ。クレアにも聞いてみたけどFBIにも連絡は無いみたい」
その日の夜。自宅に帰ったローラは、ダイニングでミラーカと向き合って夕食を摂っていた。
「やはりあの彼……クリスが、あなたの作戦を実行してくれたのじゃないかしら?」
ミラーカもローラと同じ事を考えたようだ。しかしローラの顔は晴れない。
「そうね……。でもどうにもまだ胸騒ぎがするのよね。まだ終わっていない。そんな予感がするのよ」
「ローラ……」
ミラーカが気遣わし気な様子になる。だがローラはやはりどうしても楽観的にはなれなかった。しかし何故ターゲットから連絡が無いのか解らない。誰がターゲットなのかが解らなければこちらとしても動きようがない。
ローラがそんな手詰まりな状況に苛立ちを感じていた時――
――唐突に部屋中の電気や照明が全て消えた。
「……っ!?」
ローラとミラーカはギョッとして立ち上がろうとするが、身体が全く動かない事に気付いた。同時に心臓を鷲掴みにされたような息苦しさ、重苦しさが身体を支配する。
(こ、これは……まさか!?)
この現象に心当たりのあるローラは、目だけを動かしてミラーカの方を見る。ミラーカも目だけをこちらに向けてアイコンタクトしてきた。やはり間違いないようだ。今まではどちらか1人だけの時だったが、2人揃っている時に出てくるのは初めてだ。
そのローラ達の予想を裏付けるように、暗闇となったリビングの中空に、まるで闇が形を得たかのような漆黒のローブを身にまとった骸骨が顕現した。その骨の手には、人間の首など一撃で刈り取れそうな長大な大鎌が握られている。
『死神』であった。今回の事件でも現れた。やはり裏で『黒幕』が絡んでいる事件だったのだ。
『毒ヲ喰ラエ……。毒ヲ喰ライ魂ヲ昇華サセヨ……』
『シューティングスター』とはまた違った非人間的な音声がローラ達の耳を打つ。
「毒……。以前にも言っていたわね? 一体何の事?」
遭遇回数の差か、はたまた自身も人外である故か、ローラに比べて多少落ち着いているミラーカが『死神』に問い掛ける。
しかし『死神』はそれには答えず、その骨だけの片手を掲げる。するとリビングにあった雑誌の一冊が浮遊して、ローラ達の座るダイニングテーブルまで移動してきた。
暗くて分かりにくかったが、どうやらローラが定期購読している映画雑誌のようだ。テーブルに置かれた雑誌は『死神』が骨の指を鳴らすと、バサバサッと音を立ててページがめくれていき、やがてとあるページで止まるとそこが開かれたままとなった。
「な、何……何なの……?」
『……汝ラノ求メル答エハ『ソノ者』ニアリ。ソノ者ニ会エ。ソシテ毒ヲ喰ラウノダ……』
「そ、その者……?」
ローラはテーブルの上に置かれた雑誌に目を落とす。しかし部屋が暗くて内容までは解らなかった。
『蟲毒ハ完成サレツツアル。終末ノ時ハ近イ……』
「あ、ま、待って……!」
用は済んだとばかりに『死神』が再び闇に溶け込んでいく。ローラは思わず引き留めようとするが『死神』はそれ以上何も語る事はなく、完全に闇に同化して消え去ってしまった。
同時に部屋中の電気や照明が戻った。そしてローラ達を苛む圧迫感も消失した。
「く……はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
ローラは解放感から思わずテーブルに突っ伏して荒い息を吐いた。だがミラーカの方は比較的冷静な様子でテーブルの上の雑誌を見やる。そして眉根を寄せた。
「これは……ルーファス・マクレーン?」
「え……?」
その名前に反応したローラは雑誌の開いたページに改めて目を落とす。そのページではとある人物 の特集をしていた。
「……!」
ローラは目を見開いた。ルーファス・マクレーンはこのLA……いや、アメリカに住んでいる人間なら誰でも名前は知っているであろう超有名人だ。というか世界的にもかなり知名度が高いはずだ。
ルーファスは映画俳優だ。それもブリジット・ラングトンなど比較にならない、ハリウッドを代表すると言っても過言ではない大物俳優だ。
10年程前に主演したSFアクション映画『フュータルチェイサー』が大ヒットし、それ以後は主にアクション映画やSF映画など娯楽色の強い大作映画を中心に出演、実績を重ね、今や全米でも五指に入る有名人となっていた。
ゴールデングローブ賞などの映画賞も何度が受賞しており、アメリカの長者番付にも度々名前が載る、セレブ中のセレブと言ってよい人物であった。
ローラも彼の主演する映画は何度も視聴した事がある。『死神』がわざわざこの雑誌を取り上げてこのページを開いていったのは……明らかに何らかの意味があっての事だろう。
「……『死神』が言っていた『その者』というのは、ルーファス・マクレーンの事? 彼が私達の求める答えを知っている? どういう意味かしら?」
ローラの疑問にミラーカは顎に手を当てて考え込む姿勢になる。やがて顔を上げた彼女は確信を抱いている様子だった。
「……恐らく彼が『シューティングスター』の10人目のターゲットなんじゃないかしら?」
「ええ!? そ、そう思う根拠は!?」
「今までの経験からすると、あの『死神』は言葉だけでなく登場するタイミングにも意味があるはずよ。あいつは必ず私達が行き詰っている時に現れる。そして今私達が答えが解らずに行き詰っている問題は何?」
「……!」
ローラは目を見開いた。
「そしてルーファス・マクレーンは超の付く有名人。『シューティングスター』のターゲットとしては申し分ない存在よ。しかも奴は前回、同じハリウッドの女優であるブリジット・ラングトンを取り逃がしている。名誉挽回 の意味で同じ……それももっと大物の役者を狙うというのは不自然な話じゃないわ」
「…………」
そう言われると確かにそんな気がする。いや、大いにあり得る話だ。宇宙船で『シューティングスター』と交わした会話、そしてそこから読み取れる奴の性格からして、格下 の地球人相手にゲームをクリアできなかったというのは相当の屈辱のはずだ。
だがそうなると『シューティングスター』の事とは別に、一つの疑問が浮かび上がってくる。
「次のターゲットが本当にルーファスだとして……何故彼は未だに司法機関に保護を求めていないのかしら? もう殺害予告は受け取っているはずよね?」
ハリウッドスターのルーファスが保護を求める電話をしたり、そうでなくとも殺害予告を受け取った事を誰かに漏らしただけで、瞬く間に噂が広まってビッグニュースになっているはずだ。
だがそんな気配は微塵も無かった。情報統制には限界がある。となるとルーファスは……そもそも殺害予告を受け取った事を誰にも話していない可能性が高い。
何らかの理由でメールをチェックしておらず、そもそも殺害予告を受け取った事に気付いていない? だがルーファスほどのセレブが、丸一日以上メールをチェックしないなどという事があり得るだろうか?
「それは解らないわ」
ミラーカはかぶりを振った。まあ当然だ。だがすぐに悪戯っぽい表情になってローラに流し目を送る。
「そして解らない事は……本人に聞く のが一番手っ取り早いんじゃなくって?」
「え……ほ、本人にって……。あの ルーファス・マクレーンよ? 私が彼に直接……? そ、そんな事……」
咄嗟に焦ってしどろもどろになるローラにミラーカが溜息をつく。
「何動揺してるのよ。その辺の浮かれたファンじゃあるまいし。彼は事件の重要参考人 なのよ? 刑事であるあなたが会うのを躊躇う理由はないでしょう?」
「……っ!」
そうだ。何も一ファンとして会う訳じゃない。あくまで捜査 の一環なのだ。ならばローラが直接彼の家を訪ねても何ら問題はないはずだ。事前に電話でアポを取っている余裕はない。それに電話だとはぐらかされる可能性もある。
そう理論武装 したローラは、早速明日にでもルーファスの自宅を訪ねる決心をしていた。
奴が諦めてどこかへ飛び去ってくれたなどという希望的観測をする者は誰も居なかった。奴は間違いなくまだこのLAのどこかに潜伏している。ローラもミラーカもそれを確信していた。
ローラはクレアとも無事の再会を喜び合い、そこでFBIが9人目のターゲット、女優のブリジット・ラングトンを何とか守りきったというニュースを聞かされた。ニックのお手柄らしい。
だが『シューティングスター』がこれで諦めるはずがないという意見にはクレアも同意しており、必ず次の『狩り』の予告が来るはずだという予想も一致した。
次の『狩り』までにローラの
州立保養地に死体が無かった事から
因みにクリスが残った事を聞いたナターシャは最初激しく取り乱した。その反応を訝しんだローラだが、ミラーカから警察署での顛末を聞いて納得した。ナターシャはクリスに命を助けられた事で彼に何らかの好感情を抱いていたようである。しかしローラやミラーカが事情を説明すると次第に落ち着きを取り戻し、理解を示してくれた。
だがやはり居ても立っても居られないのか、『シューティングスター』の新しい情報を集めると言って足早に立ち去っていった。
救出された翌日にはローラはリンファとも再会を喜び合ったが、同時に彼女からLAPDが受けた具体的な被害を聞かされて息を吞む事になった。またネルソンの更迭についてもそこで知った。
ドレイク本部長の主導の元、組織の再編にはしばらく掛かると見込まれ、当面は各分署などからも人員を引っ張ってきて対応する事になるようだ。
また
「俺はしばらく本部長の下で組織の復旧に尽力しなきゃならん。その間現場はお前らに任す事になるが……くれぐれも無茶はするなよ?」
ジョンはそんな風に忠告してくれた。当然警察が被害を受けたからといって、犯罪者達が気を使って休んでくれる事など無い。いや、むしろ今がチャンスだとばかりに増長する可能性が高い。
『シューティングスター』に被害は受けたが、それでも警察に休む暇はないのだ。ジョンの忠告も虚しく、ローラもリンファもいつも以上に忙しく駆けずり回る羽目になった。
そんな最中の事……予定通りであれば『シューティングスター』から次のターゲットに向けて殺害予告が送られているであろう日となった。
しかし不思議な事にターゲットから保護を求める電話が掛かってこなかった。大きな被害を出してしまい現在立て直し中のLAPDに掛かってこないのはまだ納得できるが、FBIにも電話が掛かって来ていないらしい。
ローラ達の予測では『シューティングスター』は諦めておらず、むしろ前回のゲームで失敗したからこそ、今回は絶対に成功させようと躍起になっているはずであった。
なのにターゲットからの保護を求める連絡がどの機関にも来ていない。
(まさか……クリスがやってくれたのかしら……?)
他に考えられる理由がない事から、ローラはそんな希望を抱いた。だが……それが儚い希望であった事を彼女は翌日には思い知る事となった。
****
「……駄目ね。今日になってもどこからも連絡が無かったわ。クレアにも聞いてみたけどFBIにも連絡は無いみたい」
その日の夜。自宅に帰ったローラは、ダイニングでミラーカと向き合って夕食を摂っていた。
「やはりあの彼……クリスが、あなたの作戦を実行してくれたのじゃないかしら?」
ミラーカもローラと同じ事を考えたようだ。しかしローラの顔は晴れない。
「そうね……。でもどうにもまだ胸騒ぎがするのよね。まだ終わっていない。そんな予感がするのよ」
「ローラ……」
ミラーカが気遣わし気な様子になる。だがローラはやはりどうしても楽観的にはなれなかった。しかし何故ターゲットから連絡が無いのか解らない。誰がターゲットなのかが解らなければこちらとしても動きようがない。
ローラがそんな手詰まりな状況に苛立ちを感じていた時――
――唐突に部屋中の電気や照明が全て消えた。
「……っ!?」
ローラとミラーカはギョッとして立ち上がろうとするが、身体が全く動かない事に気付いた。同時に心臓を鷲掴みにされたような息苦しさ、重苦しさが身体を支配する。
(こ、これは……まさか!?)
この現象に心当たりのあるローラは、目だけを動かしてミラーカの方を見る。ミラーカも目だけをこちらに向けてアイコンタクトしてきた。やはり間違いないようだ。今まではどちらか1人だけの時だったが、2人揃っている時に出てくるのは初めてだ。
そのローラ達の予想を裏付けるように、暗闇となったリビングの中空に、まるで闇が形を得たかのような漆黒のローブを身にまとった骸骨が顕現した。その骨の手には、人間の首など一撃で刈り取れそうな長大な大鎌が握られている。
『死神』であった。今回の事件でも現れた。やはり裏で『黒幕』が絡んでいる事件だったのだ。
『毒ヲ喰ラエ……。毒ヲ喰ライ魂ヲ昇華サセヨ……』
『シューティングスター』とはまた違った非人間的な音声がローラ達の耳を打つ。
「毒……。以前にも言っていたわね? 一体何の事?」
遭遇回数の差か、はたまた自身も人外である故か、ローラに比べて多少落ち着いているミラーカが『死神』に問い掛ける。
しかし『死神』はそれには答えず、その骨だけの片手を掲げる。するとリビングにあった雑誌の一冊が浮遊して、ローラ達の座るダイニングテーブルまで移動してきた。
暗くて分かりにくかったが、どうやらローラが定期購読している映画雑誌のようだ。テーブルに置かれた雑誌は『死神』が骨の指を鳴らすと、バサバサッと音を立ててページがめくれていき、やがてとあるページで止まるとそこが開かれたままとなった。
「な、何……何なの……?」
『……汝ラノ求メル答エハ『ソノ者』ニアリ。ソノ者ニ会エ。ソシテ毒ヲ喰ラウノダ……』
「そ、その者……?」
ローラはテーブルの上に置かれた雑誌に目を落とす。しかし部屋が暗くて内容までは解らなかった。
『蟲毒ハ完成サレツツアル。終末ノ時ハ近イ……』
「あ、ま、待って……!」
用は済んだとばかりに『死神』が再び闇に溶け込んでいく。ローラは思わず引き留めようとするが『死神』はそれ以上何も語る事はなく、完全に闇に同化して消え去ってしまった。
同時に部屋中の電気や照明が戻った。そしてローラ達を苛む圧迫感も消失した。
「く……はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
ローラは解放感から思わずテーブルに突っ伏して荒い息を吐いた。だがミラーカの方は比較的冷静な様子でテーブルの上の雑誌を見やる。そして眉根を寄せた。
「これは……ルーファス・マクレーン?」
「え……?」
その名前に反応したローラは雑誌の開いたページに改めて目を落とす。そのページでは
「……!」
ローラは目を見開いた。ルーファス・マクレーンはこのLA……いや、アメリカに住んでいる人間なら誰でも名前は知っているであろう超有名人だ。というか世界的にもかなり知名度が高いはずだ。
ルーファスは映画俳優だ。それもブリジット・ラングトンなど比較にならない、ハリウッドを代表すると言っても過言ではない大物俳優だ。
10年程前に主演したSFアクション映画『フュータルチェイサー』が大ヒットし、それ以後は主にアクション映画やSF映画など娯楽色の強い大作映画を中心に出演、実績を重ね、今や全米でも五指に入る有名人となっていた。
ゴールデングローブ賞などの映画賞も何度が受賞しており、アメリカの長者番付にも度々名前が載る、セレブ中のセレブと言ってよい人物であった。
ローラも彼の主演する映画は何度も視聴した事がある。『死神』がわざわざこの雑誌を取り上げてこのページを開いていったのは……明らかに何らかの意味があっての事だろう。
「……『死神』が言っていた『その者』というのは、ルーファス・マクレーンの事? 彼が私達の求める答えを知っている? どういう意味かしら?」
ローラの疑問にミラーカは顎に手を当てて考え込む姿勢になる。やがて顔を上げた彼女は確信を抱いている様子だった。
「……恐らく彼が『シューティングスター』の10人目のターゲットなんじゃないかしら?」
「ええ!? そ、そう思う根拠は!?」
「今までの経験からすると、あの『死神』は言葉だけでなく登場するタイミングにも意味があるはずよ。あいつは必ず私達が行き詰っている時に現れる。そして今私達が答えが解らずに行き詰っている問題は何?」
「……!」
ローラは目を見開いた。
「そしてルーファス・マクレーンは超の付く有名人。『シューティングスター』のターゲットとしては申し分ない存在よ。しかも奴は前回、同じハリウッドの女優であるブリジット・ラングトンを取り逃がしている。
「…………」
そう言われると確かにそんな気がする。いや、大いにあり得る話だ。宇宙船で『シューティングスター』と交わした会話、そしてそこから読み取れる奴の性格からして、
だがそうなると『シューティングスター』の事とは別に、一つの疑問が浮かび上がってくる。
「次のターゲットが本当にルーファスだとして……何故彼は未だに司法機関に保護を求めていないのかしら? もう殺害予告は受け取っているはずよね?」
ハリウッドスターのルーファスが保護を求める電話をしたり、そうでなくとも殺害予告を受け取った事を誰かに漏らしただけで、瞬く間に噂が広まってビッグニュースになっているはずだ。
だがそんな気配は微塵も無かった。情報統制には限界がある。となるとルーファスは……そもそも殺害予告を受け取った事を誰にも話していない可能性が高い。
何らかの理由でメールをチェックしておらず、そもそも殺害予告を受け取った事に気付いていない? だがルーファスほどのセレブが、丸一日以上メールをチェックしないなどという事があり得るだろうか?
「それは解らないわ」
ミラーカはかぶりを振った。まあ当然だ。だがすぐに悪戯っぽい表情になってローラに流し目を送る。
「そして解らない事は……
「え……ほ、本人にって……。
咄嗟に焦ってしどろもどろになるローラにミラーカが溜息をつく。
「何動揺してるのよ。その辺の浮かれたファンじゃあるまいし。彼は事件の
「……っ!」
そうだ。何も一ファンとして会う訳じゃない。あくまで
そう