File15:ジェシカ・マイヤーズ
文字数 4,179文字
ロサンゼルス郊外にある中流住宅街。その中のとある家の前に一台の車が止まった。
「ここね……。今日は日曜日だし、いると思うけど……」
そう言いながら車から降りたのは、ブルネットに眼鏡の女性、FBIのクレア・アッカーマン捜査官だ。同乗していたカーミラ も車から降りる。
「『彼』が不在なのは間違いないのよね?」
カーミラの確認にクレアが頷く。
「ええ、『ルーガルー』事件の真っ只中だし、捜査責任者 に休日なんてあってないような物よ。家族 に直接話を聞くには絶好の機会だわ」
2人が降り立った家の庭先には【マイヤーズ】の文字が書かれた表札があった。
ローラがホテルの部屋から辞した後、クレアが個別にカーミラに対してコンタクトを取ってきた。どうやらカーミラが自分と同じ結論に達していると判断したらしい。
「単刀直入に言うわよ。私は『ルーガルー』の正体はロサンゼルス市警 の警部補、リチャード・マイヤーズで間違いないと睨んでる。あなたもそうなんでしょう?」
本当に前置きなしでいきなり本題に入ってきた。カーミラは苦笑しながらも頷く。
「ええ、残念ながらと言うべきだけど。500年生きてきた私の人を見る目も、意外と大した事なかったようだわ。まあ単純に彼が一枚上手だったという事でしょうけど」
『サッカー』、つまりヴラド達との戦いでは進んで手を貸してくれた、冷静沈着でかつ部下思いの熱い心も持つ頼れる上司……。マイヤーズのイメージはそんな所だった。カーミラでさえその『仮面』を見破れなかったのだから大したものだ。
「私はこれからマイヤーズの家族に話を聞きに行こうと思ってるわ。まず家族は、夫や父親の正体がオオカミの化け物であるという事を知っているのかどうか。もし知らなくても、何らかの攻略 の糸口が掴めるかも知れないしね」
「…………」
攻略。その通りだ。『ルーガルー』は強い。恐らくカーミラが百回戦っても百回負けるだろうという事は容易に想像が付く。それくらいの化け物だ。まともに正面から挑んでも制圧する事は不可能だ。ならばクレアのやろうとしている事もあながち的外れではない。
「それを私に言ってどうしようと言うのかしら?」
「……作戦に失敗して10人以上もの仲間を死なせた私の支局内での立場は、非常に厳しいものがあるわ。応援の1人すら出して貰えない状況よ。でも私は諦めない。必ず『ルーガルー』事件を解決して見せるわ。そしてその為にはあなたの協力が必要なのよ」
「私の?」
「あの怪物と曲がりなりにも渡り合えるのはあなただけだわ。……私は奴に食われかけた。いつまた奴が襲って来るか気が気じゃない。それに家族だってシロとは限らないし……。だから捜査の間、あなたに私の護衛を頼みたいのよ」
「護衛? あなたの?」
「どうせギブソン刑事は心の整理が付くまで使い物にならないわ。一刻も早い事件の解決を望むなら私に協力して欲しいの」
「…………」
ローラにとってマイヤーズはまさに尊敬できる上司だったはずだ。いきなり彼が犯人ですと言っても、受け入れがたいだろうし、クレアの言う通り心の整理が付くまでに少し時間は掛かるだろう。事件が長引けばクレアだけでなく、ローラの身だって危うくなる。
ならばローラが能動的に動けない間、自分が動いてあげた方がいいかも知れない。カーミラは決断した。
「そうね。解ったわ。でも私は捜査の基本も知らない。本当に護衛くらいしか出来ないわよ?」
「それで構わないわ。ありがとう、ミラーカ。それじゃ明日の10時に、このホテルの前まで迎えに来るわ」
クレアはそれだけ約束すると、足早にホテルを後にした。
そして現在に至る。カーミラは車の中でマイヤーズの家族についてクレアから聞かされていた。妻と娘の3人家族で、妻のジーンは街の美容院に努めている美容師で、娘のジェシカはまだ市内のハイスクールに通う高校生との事だった。
(高校生か……。辛い事になるでしょうね。それとも……)
父親の犯罪の事を知っていて、見て見ぬ振りをしているのか。それによって評価は180度変わってくるだろう。
クレアが玄関に立って呼び鈴を鳴らす。ややあって応えがあった。
「なんなのよ? 勧誘はお断りよ?」
女の声。調子からしても娘ではないだろう。妻のジーンだ。
「ジーン・マイヤーズさんですね? 私は連邦捜査局 のクレア・アッカーマン捜査官と申します。今お時間宜しいでしょうか?」
クレアはドアスコープ越しにFBIのバッジを提示する。
「はあ? エ、FBI!?」
素っ頓狂な声を上げた女――ジーンは、慌ててドアを開けた。くすんだ金褐色の髪のやや疲れた雰囲気の40代くらいの女だった。
「突然の訪問失礼します。ところであなたは美容師でしたよね? 今日は出勤ではないのですか?」
「シフト制だから今日は午後からの出勤だけど……。本当にFBIなの? い、一体ウチなんかに何の用が……。まさか主人絡み?」
夫が市警の警部補となればすぐに思いつくのはやはりそこだろう。今の反応からするとジーンは夫の『もう一つの顔』を知らない可能性が高い。
「はい……。機密情報もあるので詳細までは明かせませんが、ご主人に関していくつか質問させて頂きたい事があるのですが、中でお話させて貰っても?」
「…………」
ジーンは素早くカーミラ達の外見を観察し、2人が乗ってきた車にも視線を向ける。恐らくこのまま玄関で警察と話している事での近所の目線が気になるのだろう。クレアの車はあからさまなパトカーではないので、2人を中に入れてしまえば周囲から勘繰られる事も無い。そんな風に考えているだろう事が手に取るように解った。
カーミラは内心で苦笑した。狡猾な夫に比べて遥かに解りやすい性格のようだ。やがて予想通りの返事が来た。
「……わ、解ったわ。早く上がって頂戴」
とにかく2人の姿を周囲の目線から隠したいようだ。庭にも芝生やガレージがあった事からも推察出来たが、家は典型的な中流一戸建てのようだ。2階に続く階段があり、手すり越しにいくつかの部屋のドアが見える。恐らく夫婦の寝室や娘の部屋などだろう。
「失礼ですが、今日は娘さんはご在宅でしょうか? 出来たら娘さんにもお話を伺いたいんですが」
どうやらクレアもカーミラと同じく、ジーンは何も知らないという結論に至ったようだ。
するとジーンは一瞬嫌そうな顔をしたが、ここで揉めても無意味だと悟ったのか2階へ上がっていった。何か問答しているような声が聞こえ、しばらくしてジーンが何やら前衛的な姿の1人の少女を伴って降りてきた。
いわゆるパンクファッションという奴だろうか、耳だけでなく、唇や小鼻にもピアスをしている。髪型も右半分だけ垂らして左半分はカットにしている独特の髪型で紫色のメッシュが入っていた。
この少女がマイヤーズの一人娘、ジェシカ・マイヤーズで間違いないようだ。警察官、それも警部補という立場の、あの厳格そうなマイヤーズの娘とは思えないような出で立ちだ。
(……厳格で仕事一筋で、家庭を顧みない父親に対する反抗という所かしらね)
カーミラはそのように判断した。年齢は17歳との事。『あの子』も17歳だったが、何と言うか……『あの子』とは対極的な印象の少女であった。
「あなたがジェシカさんですね? 突然の来訪失礼致します。私はFBIの捜査官でクレア・アッカーマンと申します。こっちは相棒 のスピエルドルフ」
ジェシカはこちらの話を聞いているのかどうか、ガムを噛んだまま両手をポケットに突っ込んだ姿勢で、ソファにドカッという感じで腰掛けた。ジーンが眉を顰める。
「ちょっと、ジェシー! 警察が……FBIが来てるってのに、その態度は何!?」
「チッ……うるせぇな、ババア。相変わらず外面ばっか気にしやがって」
どうやら見た目だけでなく中身も反抗的なようだ。ジェシカはこちらに胡乱気な視線を向けてきた。
「で? お偉いFBIの捜査官様がウチなんかに何の用だよ? ウチは見ての通り仕事しか興味のねぇ堅物な親父と、近所付き合いと世間体が命のお袋と、そいつらに反抗的な娘っていう、どこにでもあるつまんねぇ家庭だぞ? あんた達の興味を引きそうなモンは何もねぇよ」
家庭が上手く行っていない事をあっさり暴露する娘に、ジーンが顔を赤らめる。クレアが咳払いする。
「おほん! 今日私達が伺ったのは、その堅物な父親……リチャード氏に関係した事です」
カーミラはそこでジェシカの頬がピクッと動いたのに気付いた。
「リチャードさんの普段の家での様子などを……」
「……帰れ」
低い声がクレアの話を遮る。ジェシカだ。睨み付けるような目でこちらを見ていた。
「あ、あの、私達はただ……」
「帰れっつってんだろ! あたしは何も知らねぇ! お前らに話す事なんて無ぇ! 今すぐ出ていけ!」
ソファから立ち上がってまくし立てるジェシカ。突然の剣幕にクレアだけでなく母親のジーンまでが驚いている。
「ジェシー! 急にどうしたんだい!? 何て物言いを……!」
「うるせぇ! ババアは黙ってろ! 早く出てけよ! それこそ警察呼ぶぞ!? 親父に隠れてこそこそ調べやがって、そんなに気になるなら本人に聞けば良いだろ! 今すぐ呼んでやろうかっ!?」
カーミラはクレアに目配せをした。ジェシカの剣幕に驚いていた彼女は、それに気付くとハッとし後に頷いた。
「わ、解りました。今日の所はお暇させて頂きます。また後日、娘さんが落ち着いた時にでもお話を……」
「何も話す事はねぇっつってんだろ! さっさと失せろよっ!」
ジェシカの剣幕に押されて、結局何も話を聞けないまま、2人はほうほうの体でマイヤーズ家を追い出されたのであった……
「ここね……。今日は日曜日だし、いると思うけど……」
そう言いながら車から降りたのは、ブルネットに眼鏡の女性、FBIのクレア・アッカーマン捜査官だ。同乗していた
「『彼』が不在なのは間違いないのよね?」
カーミラの確認にクレアが頷く。
「ええ、『ルーガルー』事件の真っ只中だし、
2人が降り立った家の庭先には【マイヤーズ】の文字が書かれた表札があった。
ローラがホテルの部屋から辞した後、クレアが個別にカーミラに対してコンタクトを取ってきた。どうやらカーミラが自分と同じ結論に達していると判断したらしい。
「単刀直入に言うわよ。私は『ルーガルー』の正体は
本当に前置きなしでいきなり本題に入ってきた。カーミラは苦笑しながらも頷く。
「ええ、残念ながらと言うべきだけど。500年生きてきた私の人を見る目も、意外と大した事なかったようだわ。まあ単純に彼が一枚上手だったという事でしょうけど」
『サッカー』、つまりヴラド達との戦いでは進んで手を貸してくれた、冷静沈着でかつ部下思いの熱い心も持つ頼れる上司……。マイヤーズのイメージはそんな所だった。カーミラでさえその『仮面』を見破れなかったのだから大したものだ。
「私はこれからマイヤーズの家族に話を聞きに行こうと思ってるわ。まず家族は、夫や父親の正体がオオカミの化け物であるという事を知っているのかどうか。もし知らなくても、何らかの
「…………」
攻略。その通りだ。『ルーガルー』は強い。恐らくカーミラが百回戦っても百回負けるだろうという事は容易に想像が付く。それくらいの化け物だ。まともに正面から挑んでも制圧する事は不可能だ。ならばクレアのやろうとしている事もあながち的外れではない。
「それを私に言ってどうしようと言うのかしら?」
「……作戦に失敗して10人以上もの仲間を死なせた私の支局内での立場は、非常に厳しいものがあるわ。応援の1人すら出して貰えない状況よ。でも私は諦めない。必ず『ルーガルー』事件を解決して見せるわ。そしてその為にはあなたの協力が必要なのよ」
「私の?」
「あの怪物と曲がりなりにも渡り合えるのはあなただけだわ。……私は奴に食われかけた。いつまた奴が襲って来るか気が気じゃない。それに家族だってシロとは限らないし……。だから捜査の間、あなたに私の護衛を頼みたいのよ」
「護衛? あなたの?」
「どうせギブソン刑事は心の整理が付くまで使い物にならないわ。一刻も早い事件の解決を望むなら私に協力して欲しいの」
「…………」
ローラにとってマイヤーズはまさに尊敬できる上司だったはずだ。いきなり彼が犯人ですと言っても、受け入れがたいだろうし、クレアの言う通り心の整理が付くまでに少し時間は掛かるだろう。事件が長引けばクレアだけでなく、ローラの身だって危うくなる。
ならばローラが能動的に動けない間、自分が動いてあげた方がいいかも知れない。カーミラは決断した。
「そうね。解ったわ。でも私は捜査の基本も知らない。本当に護衛くらいしか出来ないわよ?」
「それで構わないわ。ありがとう、ミラーカ。それじゃ明日の10時に、このホテルの前まで迎えに来るわ」
クレアはそれだけ約束すると、足早にホテルを後にした。
そして現在に至る。カーミラは車の中でマイヤーズの家族についてクレアから聞かされていた。妻と娘の3人家族で、妻のジーンは街の美容院に努めている美容師で、娘のジェシカはまだ市内のハイスクールに通う高校生との事だった。
(高校生か……。辛い事になるでしょうね。それとも……)
父親の犯罪の事を知っていて、見て見ぬ振りをしているのか。それによって評価は180度変わってくるだろう。
クレアが玄関に立って呼び鈴を鳴らす。ややあって応えがあった。
「なんなのよ? 勧誘はお断りよ?」
女の声。調子からしても娘ではないだろう。妻のジーンだ。
「ジーン・マイヤーズさんですね? 私は
クレアはドアスコープ越しにFBIのバッジを提示する。
「はあ? エ、FBI!?」
素っ頓狂な声を上げた女――ジーンは、慌ててドアを開けた。くすんだ金褐色の髪のやや疲れた雰囲気の40代くらいの女だった。
「突然の訪問失礼します。ところであなたは美容師でしたよね? 今日は出勤ではないのですか?」
「シフト制だから今日は午後からの出勤だけど……。本当にFBIなの? い、一体ウチなんかに何の用が……。まさか主人絡み?」
夫が市警の警部補となればすぐに思いつくのはやはりそこだろう。今の反応からするとジーンは夫の『もう一つの顔』を知らない可能性が高い。
「はい……。機密情報もあるので詳細までは明かせませんが、ご主人に関していくつか質問させて頂きたい事があるのですが、中でお話させて貰っても?」
「…………」
ジーンは素早くカーミラ達の外見を観察し、2人が乗ってきた車にも視線を向ける。恐らくこのまま玄関で警察と話している事での近所の目線が気になるのだろう。クレアの車はあからさまなパトカーではないので、2人を中に入れてしまえば周囲から勘繰られる事も無い。そんな風に考えているだろう事が手に取るように解った。
カーミラは内心で苦笑した。狡猾な夫に比べて遥かに解りやすい性格のようだ。やがて予想通りの返事が来た。
「……わ、解ったわ。早く上がって頂戴」
とにかく2人の姿を周囲の目線から隠したいようだ。庭にも芝生やガレージがあった事からも推察出来たが、家は典型的な中流一戸建てのようだ。2階に続く階段があり、手すり越しにいくつかの部屋のドアが見える。恐らく夫婦の寝室や娘の部屋などだろう。
「失礼ですが、今日は娘さんはご在宅でしょうか? 出来たら娘さんにもお話を伺いたいんですが」
どうやらクレアもカーミラと同じく、ジーンは何も知らないという結論に至ったようだ。
するとジーンは一瞬嫌そうな顔をしたが、ここで揉めても無意味だと悟ったのか2階へ上がっていった。何か問答しているような声が聞こえ、しばらくしてジーンが何やら前衛的な姿の1人の少女を伴って降りてきた。
いわゆるパンクファッションという奴だろうか、耳だけでなく、唇や小鼻にもピアスをしている。髪型も右半分だけ垂らして左半分はカットにしている独特の髪型で紫色のメッシュが入っていた。
この少女がマイヤーズの一人娘、ジェシカ・マイヤーズで間違いないようだ。警察官、それも警部補という立場の、あの厳格そうなマイヤーズの娘とは思えないような出で立ちだ。
(……厳格で仕事一筋で、家庭を顧みない父親に対する反抗という所かしらね)
カーミラはそのように判断した。年齢は17歳との事。『あの子』も17歳だったが、何と言うか……『あの子』とは対極的な印象の少女であった。
「あなたがジェシカさんですね? 突然の来訪失礼致します。私はFBIの捜査官でクレア・アッカーマンと申します。こっちは
ジェシカはこちらの話を聞いているのかどうか、ガムを噛んだまま両手をポケットに突っ込んだ姿勢で、ソファにドカッという感じで腰掛けた。ジーンが眉を顰める。
「ちょっと、ジェシー! 警察が……FBIが来てるってのに、その態度は何!?」
「チッ……うるせぇな、ババア。相変わらず外面ばっか気にしやがって」
どうやら見た目だけでなく中身も反抗的なようだ。ジェシカはこちらに胡乱気な視線を向けてきた。
「で? お偉いFBIの捜査官様がウチなんかに何の用だよ? ウチは見ての通り仕事しか興味のねぇ堅物な親父と、近所付き合いと世間体が命のお袋と、そいつらに反抗的な娘っていう、どこにでもあるつまんねぇ家庭だぞ? あんた達の興味を引きそうなモンは何もねぇよ」
家庭が上手く行っていない事をあっさり暴露する娘に、ジーンが顔を赤らめる。クレアが咳払いする。
「おほん! 今日私達が伺ったのは、その堅物な父親……リチャード氏に関係した事です」
カーミラはそこでジェシカの頬がピクッと動いたのに気付いた。
「リチャードさんの普段の家での様子などを……」
「……帰れ」
低い声がクレアの話を遮る。ジェシカだ。睨み付けるような目でこちらを見ていた。
「あ、あの、私達はただ……」
「帰れっつってんだろ! あたしは何も知らねぇ! お前らに話す事なんて無ぇ! 今すぐ出ていけ!」
ソファから立ち上がってまくし立てるジェシカ。突然の剣幕にクレアだけでなく母親のジーンまでが驚いている。
「ジェシー! 急にどうしたんだい!? 何て物言いを……!」
「うるせぇ! ババアは黙ってろ! 早く出てけよ! それこそ警察呼ぶぞ!? 親父に隠れてこそこそ調べやがって、そんなに気になるなら本人に聞けば良いだろ! 今すぐ呼んでやろうかっ!?」
カーミラはクレアに目配せをした。ジェシカの剣幕に驚いていた彼女は、それに気付くとハッとし後に頷いた。
「わ、解りました。今日の所はお暇させて頂きます。また後日、娘さんが落ち着いた時にでもお話を……」
「何も話す事はねぇっつってんだろ! さっさと失せろよっ!」
ジェシカの剣幕に押されて、結局何も話を聞けないまま、2人はほうほうの体でマイヤーズ家を追い出されたのであった……