これまでのあらすじ・キャラクター紹介③ 

文字数 10,855文字

 私の名前はナターシャ・イリエンコフ。このロサンゼルスで新聞記者をやっている。

 この手記を纏めるのもこれで3度目だ。そして信じがたい事だが……これがこの手記としては最後(・・)の纏めとなりそうだ。

 最後と言っても何も私が死んだり、この世が終わったりする訳ではない。むしろその()だ。
 この街は、救われたのだ。とある勇敢な女性たちの活躍と奮闘によって。

 無論LAの街がいつも通り数多くの犯罪が横行する退廃都市である事に変わりはない。それはこれからも変わる事はないだろう。だが少なくともそれらは人の営み(・・・・)の一環だ。人の理から外れた人外の魔物による被害とは根底から性質が違う。

 その異質な魔物たちによる街への脅威が……ここ数年の間、街を襲い続けていた悪夢が終わりを告げたのだ。

 残念ながら完全に無くなった訳ではない。とある事情によってこれからも散発的な魔物による被害は発生する可能性があるが、少なくとも悪意ある『黒幕』が仕組んでいた意図的な魔物による災害は、間違いなく終わったのである。


 1年前、『シューティングスター』の事件が終わって以後、この一連の魔物騒動は急速に核心に向かって進んでいく事になる。

 最後の手記となるこの3通目では、それら核心に迫る2つの事件の概要を纏めていく。私も深く関わったこれらの事件には、未だに思い返すと辛く悲しい気持ちになる事柄も多いが、私には起こった真実を正確に記録する義務がある。

 勿論私の主観だけでなく、様々な関係者達から聴取した情報を可能な限り客観的に纏めていく次第である。


 これまでの2冊と同様、魔力や霊力を持った存在に関しては、【陰力(ダークパワー)】という項目を設けている、【陰力】に関しては私の1冊目の手記に詳しい記述があるので参照して欲しい。

 簡単に言うと数値が大きければ大きいほど強大な存在という事で、100を超えると例え銃器で武装していても普通の人間では手に負えないレベルであると考えて差し支えない。

 参考までに仲間の1人である吸血鬼ミラーカが通常時で【陰力】100、戦闘形態時で【陰力】200となっている。

※また今までと同じく、人物に関する情報ではこちらの仲間や友好・中立的な存在については◇、殺人鬼達やそれに与する敵対的な存在については◆で表記している。



*****



■Case8:『カコトピア』

 最近になってLAの街に奇妙な魔力が漂うようになっていた。それはローラ達が今までに倒してきた魔物のそれと近い魔力が混ざりあったような性質を持っていた。
 そんな矢先ローラは、警察としての職務を遂行中に〈信徒〉の集団に襲われた。時を同じくしてジェシカやヴェロニカの前にも過去に討伐したはずの魔物に連なる系譜の存在が現れ、彼女らに近しい友人達を誘拐してしまう。
 ジェシカ達はローラに相談と救援を持ちかけ、〈信徒〉に襲われた件もあってローラはただ事ではないと認識し、ミラーカや約束通りアメリカに戻ってきたセネムも交えて、これらの事件の調査に乗り出す。
 しかしそれは『敵』の罠であり、ローラ達が調査の為に戦力を分散した所を狙って、ミラーカをターゲットに集中攻撃を仕掛けてきた。『敵』の狙いは最初からミラーカだったのだ。
 果たして敵の正体はFBI捜査官であるはずのニックが率いる【悪徳郷(カコトピア)】と名乗る魔物の集団であった。ニックは自らも人外となって、ジョンを始めとしたこれらの魔物を仲間に引き入れて、一番の脅威であるミラーカを確実に抹殺する機会を窺っていたのだ。
 この企みは成功しかけミラーカは殺される寸前まで追い詰められるが、すんでの所で救援に現れたシグリッドによって失敗に終わる。
 そしてルーファス邸に集った一同はミラーカから【悪徳郷】の全容を聞かされる。ジョンやクリスの裏切りに特にローラやナターシャは大きな衝撃を受けるが、ミラーカに諭され決別を決意する。
 敵の戦力を聞いた一同は不安を覚えるが、そこにナターシャが呼んだ『助っ人』のゾーイが到着する。ゾーイは何故かメネス王の力の一部を使えるようになっていたのだ。
 そしてゾーイを加えた一同は改めて【悪徳郷】との決戦に赴く。互いに戦力が拮抗する両チームの戦いは文字通りの血戦(・・)となり、【悪徳郷】の打倒には成功したものの、ローラ達も多くのメンバーが相討ちとなってしまった。
 非常な衝撃を受けるローラだが、戦闘の最中に突如出現した謎の少女モニカの力と、それに協力してくれた『死神』の力によって、仲間達は蘇生する事が出来たのであった。



◇【チーム・ローラ】

 ローラをリーダーとした魔力や霊力を備えた女性達のチーム。直接的な戦闘を得意とする前衛組と、後方からの遠距離攻撃や支援や得意とする後衛組がバランス良く揃っているのが特徴。
 彼女らがチームを組めば、本来遥かに格上の魔物相手でも互角以上に戦う事が可能。


◇ローラ・ギブソン【陰力:普段は0だが、瞬間的には500以上?】
 LAPDに所属する女刑事。極度の受難体質で、『サッカー』事件を皮切りに数々の人外事件の渦中に放り込まれる。
 正義感が強く、魔物との戦いをくぐり抜けてきた経験が武器ではあるものの基本的には普通の人間であった。しかし『ディザイアシンドローム』事件の最中に500年前の過去に跳んで、そこで直接邂逅した『ローラ』から霊力を一部譲渡された事で、魔物に対して極めて高い攻撃力を持つようになる。
 特に愛用のデザートイーグルを用いた、マグナム弾に霊力を纏わせて発射する『神聖弾(ホーリーブラスト)』は強力無比であり、命中すれば霊王(イフリート)のジョフレイさえ一撃で倒したほど。
 この能力を身に着けてからは魔物との直接的な戦いでも一線級の戦力となり、名実ともにチームを率いるリーダーのポジションとなっていく。


◇ヴェロニカ・ラミレス【陰力:160】
 ライフガードのアルバイトをしている大学生。ラテン系の容姿の美女。元々生来持っていた超能力を用いてローラ達と共に戦ってきたが、当初は長い間能力を使っていなかった影響で上手く力を扱えず、戦力的にはやや頼りない部分も目立った。
 しかし『バイツァ・ダスト』事件での誘拐騒ぎが切欠で更なる能力に開花し、それ以降は自ら能力の訓練を積んで、驚異的な速度で戦力を増強させていった。
 最終的には後衛として欠かせない戦力となるまでに成長した。


◇ゾーイ・ギルモア【陰力:150】
 考古学者でローラの高校時代の旧友でもある。『バイツァ・ダスト』事件ではメネスを復活させてしまいローラ達を事件に巻き込んだが、その封印を担うのにも一役買った。
 その後はインドに移住していたが、友人となったナターシャとはたまに連絡を取ったりしていた。
 メネスを封印した時に何らかの作用が働いたのか、何故かメネスの力の一部を使えるようになる。その事を知っていたナターシャによって【悪徳郷】との戦いの助っ人に呼ばれる。ゾーイ自身もメネスの〈従者〉の力を悪用するニックの存在を看過できず、ローラ達の仲間に正式に加わった。


◇モニカ【陰力:200】
 【悪徳郷】との激闘のさなか、突如光とともに現れた少女。その容姿は500年前に悲劇的な最後を遂げたミラーカの元恋人『ローラ』に酷似している。
 しかし本人によると『ローラ』ではなく、彼女の霊力の一部から生まれた一種の分身のような存在であるらしい。そのためローラに霊力の一部を譲渡するまでの『ローラ』の記憶を保持しており、また生まれ(?)ながらにして悪魔や魔物に関する高度な知識を有している。
 森羅万象の精霊の力を行使する事が出来、攻撃や防御だけでなく仲間の回復など主にサポート面で大活躍するが、反面精霊の力を何らかの手段で封じられると一気に無力化してしまう弱点も存在する。


◇ミラーカ、ジェシカ、セネム、シグリッド
 前衛組の4人は特に大きな能力の変化はない為、プロフィールは過去の手記を参照。尚シグリッドの『トロール・オーバーロード』は陰力400に相当すると考えられる。



◆【悪徳郷(カコトピア)

 ニックをリーダーとして全部で7体の強力な魔物によって構成される。基本的に相容れる事がないはずの種類の異なる魔物たちが、ニックの策略によって徒党を組んだ事によって、ローラ達のチームも上回る程の恐ろしい闇のチームが誕生した。
 過去にローラ達が討伐してきた魔物たちに縁のある存在が参加している。


◆ニック・ジュリアーニ【陰力:200】
 カコトピアのリーダー。FBIの捜査官にしてクレアの相棒でもあるが、実は非常に強い魔物への進化(・・)に対する欲求があり、『バイツァ・ダスト』事件で〈従者〉のコアを入手した事によって、その禁断の欲望を実現してしまう。
 コアをその身に取り込んだ事によって〈従者〉の能力を得る。能力的にはメネスの〈従者〉達と変わらないが、人間だった時からの極めて計算高く狡猾な性格は健在で、その知恵を駆使して能力以上の恐ろしい敵としてローラやミラーカ達を苦しめた。
 その周到な作戦で一時はミラーカを絶体絶命の危機に追い込む。廃病院の決戦では最終的にローラとモニカを相手に戦うが、ローラの神聖弾とモニカの探知能力の連携の前に敗れ去った。
 最後にはクレアへの愛情は本物だった事を告げて消滅していった。


◆ジョン・ストックトン【陰力:220】
 LAPDの警部補。ローラの元相棒にして現上司。『エーリアル』事件でローラを庇って死亡したが、ローラに頼まれたミラーカによって吸血鬼として甦った。
 しかしかつて『ローラ』によって浄化されたミラーカの性質は引き継がれずに、その本性は邪悪な吸血鬼のままであった。その為人殺しを固く禁じて戒めてくるミラーカに不満を募らせて、ニックと手を組んで叛逆を目論む。ニックが【悪徳郷】を結成する切欠を作った。
 吸血鬼としての強さは『親』であるミラーカ以上で、なおかつ下僕であるグールを自らの手足のように操る。
 廃病院の決戦ではセネムと死闘を繰り広げ、自らが選りすぐったグール【寵姫達】を利用して、歴戦の戦士であるセネムを一方的に追い詰めた。しかしセネムの文字通り捨て身の切り札『神霊極光』によって寵姫達もろとも浄化されて塵に還っていった。


◆フォルネウス【陰力:180(ただし水中では300相当)】
 ニックが『ディープ・ワン』の技術を用いて、野生のピューマを素体に作り出した水陸両用の怪物。主人であるニックに絶対服従している。
 陸上での動きは四足獣らしく敏捷で、生体毒針を射出する能力を交えて戦術的な戦い方をしてくる。また準備に時間がかかるものの、『ディープ・ワン』と同じく毒ガスを広範囲に渡って散布する能力を併せ持つ。
 廃病院の決戦ではその毒ガスによってローラ達を大いに苦しめた。最終的にはヴェロニカとの一騎打ちとなり、彼女の新能力『爆弾』によって敗れたものの、獣でありながら人質を囮に使った卑怯な戦術でヴェロニカを道連れとした。


◆スパルナ【陰力:250】
 ニックが『エーリアル』の巣から密かに回収しておいた卵から孵った、『エーリアル』の最後の落胤。ニックによって教育されて成長し、かつてミラーカを苦戦させた『長男』に等しい力を持つまでになった。
 鳥のインプリンティングに近い現象によってニックを親のように慕っている。『エーリアル』譲りの戦闘能力だけでなく千里眼の能力も保持しており、【悪徳郷】の偵察係を兼ねていたらしい。
 廃病院の決戦では上空を舞台にミラーカと空中戦を繰り広げた。その戦いではミラーカを倒し掛けるが、彼女の隠された力『イヴィル形態』によって逆襲され敗れ去った。


◆ムスタファ・ケマル【陰力:200】
 元トルコ政府の文化観光庁の役人。LAにマリードのランプを持ち込んだ張本人。その際にマリードの支配を受け入れて、眷属である霊魔(シャイターン)へと変じていた。主人であるマリードの封印後はニック達の仲間になる。 
 蝿と人間が融合したような極めておぞましい容姿の魔物で、また本人も女性を汚辱に染め上げてから殺す事を無上の悦びとしている歪んだ性格をしている。シャイターンとしては小柄で、その分素早い挙動と強力な溶解液を吐きつける能力が武器。
 廃病院の決戦ではゾーイと対決。姑息で狡猾な戦い方で彼女を追い詰めるが、ゾーイの中に潜んでいたメネスの意識を呼び覚ましてしまい、命乞いも虚しく細切れにされた。


◆エリオット・マイヤーズ【陰力:200】
 ワイオミング州のシャイアンに在住していたジェシカの親戚に当たる美青年。人狼であり、血への渇望を抑えきれずに両親や恋人を惨殺してしまう。その後はシャイアンで『狩り』をしながら生活していたが、ジョンとムスタファに勧誘されて【悪徳郷】に加わる。
 同じ人狼でありながら『飢え』に悩まされず、人間として暮らすジェシカに嫉妬し逆恨みしている。ジェシカの友人であるマリコに取り入って彼女を誘拐する。
 廃病院の決戦ではジェシカと人狼同士の対決を繰り広げ地力の差で圧倒するが、致命傷を受けたジェシカの決死の一撃によって相討ちとなった。


◆クリストファー・ソレンソン【陰力:280相当】
 諜報機関NROの元エージェント。ローラとは高校時代に一時期交際していた事がある。その後別れるが本人はローラの事が忘れがたく、LAに舞い戻った後はローラを現在の恋人であるミラーカから奪い取る為の力を求めて、異星人である『シューティングスター』の技術によってサイボーグへと改造された。その後利害の一致からニックの誘いを受けて【悪徳郷】に参加した。
 様々な機能を持つ6本のアームを自在に操り、また自身も銃などで武装して攻撃する事ができる。
 その力は強者揃いの【悪徳郷】の中でも最強であり、事実廃病院の決戦ではシグリッドと対決して、彼女を一方的に嬲り物にした程。だがシグリッドの命と引き換えにした『トロール・オーバーロード』の力の前に敗れ、その妄執と共に打ち砕かれた。


◆ブリジット・ラングトン
 ハリウッドの新人女優。『シューティングスター』のターゲットに選ばれてしまい、FBIの警護を受ける。その時にニック達【悪徳郷】の秘密を知ってしまうが、生来酷薄な性格で世の中に退屈を感じていた彼女は、自分からニック達の仲間に入れてくれと申し出る。
 その後のローラ達との戦いでも、人間である事を逆手に取ってヴェロニカを騙し討ちしたり、クレア達の人質救出を妨害しようとしたりと、裏で【悪徳郷】のサポートをしていた。
 戦いの後廃病院から姿を消したが、何故かその後は完全に消息不明となる。



◇ツァイ・リンファ【陰力:50】
 ローラの職業上の相棒でありチーム・ローラには含まれないが、彼女についても記載しておかねばならないだろう。
 かつて『ディザイアシンドローム』事件で殺されかけた経験から自らの力不足を痛感し、拳法と『気』の力を応用した戦い方の修行を積む。その結果、鴛鴦鉞(えんおうえつ)という特殊な武器を用いた闘法を確立させ、雑魚ではあるがれっきとした魔物である霊鬼(ジャーン)を独力で倒す事に成功している。


◇カロリーナ・ボッツィ
 ヴェロニカのルームメイトで友人。大学の成績はあまり良くないらしい。ヴェロニカを誘き出す為にムスタファによって誘拐される。その後は廃病院に監禁されていたが、クレアとナターシャによって救出される。
 ヴェロニカの力の秘密を知ってしまうが、その後クレアから国家安全保障上の理由でこの件を絶対口外しないように念を押される。


◇マリコ・モリサキ、ローレル・ブキャナン、ペネロペ・サリナス
 ジェシカの友人。マリコは日本人、ローレルは黒人、ペネロペはヒスパニックと人種がバラけている。ジェシカと4人で『ウィキッドキャッツ』というガールズバンドを組んでいる。ジェシカを逆恨みするエリオットによって【悪徳郷】との戦いに巻き込まれる。
 特にマリコはエリオットに攫われて廃病院に監禁されてしまう。その後ジェシカとエリオットの死闘を目撃しジェシカの秘密を知ってしまうが、口外しない事を自発的に約束した。




■Last case:『ゲヘナ』

 【悪徳郷】との戦いから数カ月後。街では謎の連続失踪事件が発生していた。警部補に昇進したローラは捜査の責任者を任される。
 一方モニカは失踪事件の背景に人間界と魔界を繋ぐ『ゲート』の存在がある事に気づき、ローラ達を巻き込まないようセネムに協力を仰いで独自に事件を解決しようとする。『ゲート』を放置すればそこから悪魔が大量に溢れ出し、やがて人間界と魔界が完全に繋がって全く新しい世界に作り変わってしまうのだ。
 だが『ゲート』もで辿り着いた所で強力な魔物デュラハーンに襲われ、退却を余儀なくされるが、そのまま魔物の罠に囚われてしまう。
 事件に魔物が絡んでいる事に気付いたローラはモニカに相談しようとするが、彼女が失踪している事を聞かされて、ミラーカやシグリッド達とモニカの捜索に乗り出す。
 ハリウッド公園湖でモニカ達を発見し合流するが、そこでモニカ達を追ってきたデュラハーンと遭遇し戦闘となる。強力なデュラハーンの前に苦戦するローラ達だが、最終的にジェシカやヴェロニカも合流し何とかデュラハーンを討伐する事に成功した。
 しかしローラはそこでデュラハーンから、この事件に彼女の実の父親が絡んでいると知らされる。ローラは動揺しつつも『ゲート』を閉じる為に湖に向かう。
 そこでローラは彼女の父親であるアルゴルと、魔界への扉『ゲート』に遭遇。アルゴルの口からローラ自身こそが街に魔物を呼び寄せていた『特異点』であると知らされ、衝撃を受ける。だがミラーカによって励まされ立ち直るローラ。
 その後アルゴルによって『ゲート』に呑み込まれて『魔界(ゲヘナ)』へと放り出されたローラ達は、前衛組と後衛組に分断されてしまう。
 LAの街にも『ゲート』から溢れ出した悪魔達が襲いかかり、クレアやリンファ達が街を守る為に奮闘する。
 ローラ達後衛組は仲間の1人ゾーイを失いながらも、襲ってきた『死神』……サリエルを倒す事に成功し魔界からの帰還を果たす。同様にミラーカ達前衛組もルーファスの正体である魔物オーガとの戦いに勝利して人間界へと生還する。
 死闘の末に魔界から生還したローラ達は、アルゴル……悪魔エリゴールを『ゲート』ごと封印する事に成功し、LAの街と世界は救われたのであった。



◆アルゴル【陰力:1000以上?】
 『サッカー』から始まるLAで発生した一連の人外事件を裏で操っていた『黒幕』。その正体はソロモン王72柱の悪魔の内1体、『地獄の公爵』エリゴール。
 自らの理想郷を作り出す為に『ゲート』を用いて、人間界と魔界を一つに繋げて全く新しい概念の世界を誕生させようとした。
 東洋の呪法『蠱毒』に見立てて、魔物達を互いに殺し合わせ、より毒性(・・)高めた魔物を贄に使う事で『ゲート』を完成させる計画だったらしい。その『蠱毒』にはミラーカが選ばれた。
 また魔物達を一箇所に集める呼び水として、自らの()である『特異点』のローラを生み出した。
 しかし最終的にはローラやミラーカ達の絆と、自身の使い魔であったサリエルやオーガ達の間接的な叛逆によってその目論見を崩され、『ゲート』共々魔界へと強制送還されてこの世から消滅した。



◆エリゴールの三戦士

 悪魔エリゴール自身が調伏したとされる3体の使い魔。使い魔とは言っても元々はエリゴールの手足の替わりとなるべく集められた魔物達で、『蠱毒』を回収する役目も担っていた為、今までLAの街に現れていた魔物達の首魁をも上回る強大な魔力を保持しており、いずれもが恐るべき強敵である。
 普段は人間(それも社会的地位も高い)の姿を取って人間社会に潜伏しており、エリゴールの意向に従って人外事件の裏で暗躍していた。


◆デュラハーン(ジェームズ・ドレイク)【陰力:800前後】
 エリゴールの使い魔のうち1体で、表の顔はLAPDの本部長ジェームズ・ドレイク。警察のトップに魔物が居座っていたのだ。
 人外がLAで引き起こした事件は必然的にLAPDの管轄になる事が多く、また『特異点』であるローラがLAPD所属の刑事であった事からも、エリゴールの計画における監視や誘導など、かなり重要な役目を担っていたと考えられる。
 その正体は首なし騎士デュラハーン。同じく首のない甲冑馬に跨っており、その威容は相対する者に伝奇や恐怖小説の世界に迷い込んでしまったような畏怖を与える。
 霧を自在に操り、広範囲に渡って霧の結界を張って迷い込んだ者を無限の牢獄に陥れる。また攻防一体の黒い霧は触れただけで一瞬で骨まで焼け爛れる威力で、ローラ達を大いに苦しめた。
 勢揃いしたチーム・ローラと戦い、チームの連携の力とこの私ナターシャの捨て身の妨害行動によって辛うじて打倒する事ができた。


◆サリエル(ウォーレン・ラトクリフ)【陰力:800前後】
 エリゴールの使い魔のうち1体で、表の顔はローラの後見人でもある街の名士ウォーレン神父であった。
 その正体はこれまでの事件でローラたちに様々な啓示や助言を与えてきた『死神』。おそらくはローラの私生活を監視・誘導する役割や、ローラ達が魔物との戦いで全滅しないように裏からサポートする役割を与えられていたものと思われる。
 直接的な戦闘能力も非常に高く、黒い炎や電撃、冷気など様々な能力を使いこなす。また手に持った大鎌を用いた近接戦闘の力も脅威である。
 魔界で分断されたローラ達後衛組の前に現れ死闘を繰り広げた。その際に圧倒的な戦闘能力で、ゾーイの肉体を乗っ取ったメネスを葬り去っている。しかし最後にはローラとヴェロニカの合せ技である『神聖砲弾(ホーリーキャノン)』によって敗れ去った。
 最後にいつしか本当にローラを実の娘のように思っていた事を告白し、そのローラに看取られながら消滅した。


◆オーガ(ルーファス・マクレーン)【陰力:800前後】
 エリゴールの使い魔のうち1体で、表の顔は世界的に有名なハリウッドスターのルーファス・マクレーン。
 エリゴールの計画において、その知名度や影響力を利用したよりマクロな視点での役割を担っていたと推測されるが、詳細は不明である。しかし『シューティングスター』事件の折にローラ達と接触を持ち、以後は一種の出資者(パトロン)のような立場で彼女らと関わるようになる。
 その正体は東洋の『鬼』を連想させるような威圧感のある巨体の魔物。その見た目通りの極めて高い肉弾戦能力を誇り、他に特殊な能力は持っていないにも関わらず、そのパワーだけでミラーカ達前衛組を圧倒した。
 最後にはミラーカが隠し持っていた『イヴィル形態』の力と、それに協力するシグリッド達の連携によって倒された。消滅の直前、シグリッドを養育していたのはいつか自分を止めてもらう為だったと告白し、ミラーカ達に今後もシグリッドと友人でいてやって欲しいと頼んだ。



◆ビブロス【陰力:100】
 エリゴールが『ゲート』を通じて魔界から呼び寄せた尖兵。魔界では最もポピュラーな種族で、過去に幾度も人間界に召喚されており、人間が抱く『悪魔』のイメージの原型になったとも言われている。
 尖兵とは言っても火球や電撃を飛ばす遠距離攻撃や、剣を作り出しての接近戦にも長けており、単なる雑魚ではない。背に生えた翼で飛翔する事も出来る。


◆ヴァンゲルフ【陰力:300】
 セネムやモニカ達が『ゲート』に到達した際に魔界から出現した単眼巨人の悪魔。その両腕を自在に伸縮させて変幻自在の攻めを得意とする。また口から高熱の蒸気を吐きつける能力も持っている。
 セネムとモニカ、ゾーイの連携の前に倒された。


◆ラージャ【陰力:400】
 エリゴールが『ゲート』から呼び出した魔物で、ローラ達に小手調べ代わりにけしかけた。巨大なカマキリの上半身とムカデの下半身が合体したような奇怪な姿で、硬い甲殻と鋭い鎌、そして溶解液を吐きつける能力を持ち、本来はかなり強力な魔物。
 しかしその時はデュラハーンを倒したチーム・ローラが勢揃いしており、彼女らの連携の前に敗れ去った。



◇イヴィル・カーミラ【陰力:400】
 ミラーカがオーガとの戦いで追い詰められた際に使った切り札。翼が黒く変色し目は赤黒く濁り、まるで悪魔と見紛うような凶々しい姿となるが、戦闘能力は倍増する。【悪徳郷】との戦いでスパルナに追い詰められた際にも使用した事があるらしい。
 ただし高い再生能力を持つ吸血鬼であるミラーカをして、身体に非常に大きな負担が掛かるらしく、もう二度と使う気はないと深刻な表情で述べていたのが印象的であった。


◇半覚醒メネス【陰力:300】
 ゾーイの肉体に潜んでいたメネスの一部が、魔界の魔力を吸収する事によって急速に覚醒し、ゾーイの肉体を完全に乗っ取って表に出てきた状態。本来は紛う事なき敵であるが、【悪徳郷】との戦いではムスタファを倒し、サリエルとの戦いではローラ達と一時的に共闘したため、便宜上味方に分類している。
 まだゾーイの肉体に縛られている状態だが、それでもメネス本体の人間状態の時と同程度の力を発揮できる。だが当然ながら肉体はゾーイのままでメネス本来の砂に変じる能力はない為、その弱点を突かれてサリエルの大鎌で斬り裂かれて致命傷を負う。
 最後はサリエルの黒炎によってゾーイの肉体ごと消滅した。私にとって友人でもあったゾーイのせめてもの冥福を祈りたい。



*****



 以上、『黒幕』であるエリゴールが原因となった一連の人外事件の、最後の2つの事件を纏めてきた。

 エリゴールはローラ達の活躍によって魔界の彼方へと送還され、二度とこの世界へ戻ってくる事はないらしい。この世界は……この街はエリゴールの悪意と呪縛からついに解放されたのだ。


 だが全てが終わった訳ではない。ローラが魔物を無意識に呼び集める『特異点』である事はこの先も変えられない事実であり、今後も散発的な魔物による被害は発生する可能性がある。

 事実今この街で起こっている『冷凍変死事件』も、恐らくは新たな人外の怪物による仕業と思われる。

 だが私には今までのような過度の不安はもうない。何故ならばこの街を怪物による被害から守る、頼もしいピースメーカー(・・・・・・・)達の存在を知っているから。

 私に出来る事は、怪物の事件の兆候を調べてなるべく早く彼女らの元に届ける事だけ。そしてその情報を元に、今この時も彼女らは怪物との戦いを繰り広げているはずだ。

 しかし私は心配はしていない。これまで数々の人外を討伐してきた彼女達は、今回も必ず勝利して街に平穏をもたらしてくれるはずだ。

 私はこれからも彼女達の動向を見守り、自分なりのやり方で共に戦っていこうと思う。


 最後に、この手記を纏めるに当たって協力してくれた全ての人物に感謝を。そして一連の事件で犠牲になった全ての人々に深い哀悼を捧げる。
 


いつかまた出会える事を願って
ナターシャ
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