第216話 謎の伝言
文字数 1,826文字
熊介の首に包帯を巻きながら篤子が挨拶を返す。
微笑みを向けられて、熊介は戸惑いながらもうれしそうだ。
人間嫌いのヤツでも、人の世話になると考えが改まるものなんだろうな。
朝陽が
朝陽は後ろを振り返って母親に呼びかける。
人間の言葉なんてほとんど意味不明だ。
けど表情と口ぶりで、なんとなく
突然、視界にタイコーの顔がドーンと現れた。
なぜかと思ってよく見ると、朝陽のおなかのあたりが
どうやら腹全体がポケットになっていて、そこからタイコーが顔だけ出しているようだ。
タイコーは
タイコーがドヤ顔で中身のない否定を発した直後のこと――
タイコーが俺の向かいに来て、網戸越しにそっと顔を寄せる。
口づけを交わすように鼻先を当ててきた。
タイコーは徐々に声のボリュームを落とした。
近距離の猫にしか聴き取れない超サイレントニャーで告げてくる。
思いがけない出来事を聞かされて、俺は驚かずにいられなかった。
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