第57話 策謀をめぐらせる猫たち②

文字数 1,358文字




 ねこねこファイアー組がとんでもない計画を(くわだ)てていることはわかったにゃ。



 その一方で……



 落ち着きもなくシッポをパタパタさせている猫がひとり。



ぐにゅう……!



おやおや、モブニャンの挙動がオカシイにゃねぇ



ぐにゅにゅにゅにゅう……!




 どうしたにゃ? モブニャン。



 目つきも穏やかじゃにゃいし、ピリピリムード一色って感じにゃも。



 トウとリャクが現れた途端、様子が一変したように見えたけど……対立関係にでもあるのかにゃあ?



親分!

提案がありますニャ!



なんだ?



ジロリ組のボスは、西に向かった模様ですニャ!

連れはひ弱な新入り猫ひとりだけですニャ!



つまり、隙をついて襲えというわけか?



ウニャ!

チャンスだと思いますニャ!


ジロリ組のボス猫はともかく、新入り猫のほうは相当なヘタレですニャ


隙をついて新入り猫をネコ質にでも取れば、敵を追いつめられるに違いありませんニャ!



くっせ~


無駄ぽ



ぐにゅにゅにゅにゅう……!

こっちの提案を頭ごなしにバカにして……!



……ふ~みゅ。

トウとリャクの言い方はともかく、たしかにビミョーな提案だにゃ~


ボスにゃんは強いにゃも。

新入りをネコ質にする前に、蹴散らされるのがオチだと思うにゃよ



ヤツらの向かった先は?



おそらく町はずれの土手だと思いますニャ。

正確な場所まではちょっと……


 

詳しくわからんのか?


 

はい……。

なにしろ、あっしはここに来るまでのあいだ、ジロリ組の幹部・マウティスと行動していたもんですから……



なにっ!?

あのマウティスと行動していただと!?



はい……



にゅふふ!

そうにゃもそうにゃも。

あのマウティスにゃも!


偉大なるマウティス、

美々しきマウティス、

知恵の女神、

いかようにも形容してくれて構わないにゃよ!




 物陰からウチに見られているとも知らずに、モブニャンは堂々と言い切る。



ご安心くださいニャ。

ちゃんと足がつかないよう途中でうまく巻きましたニャ!



にゃはー! うまく巻いた? 

とんだバカちくにゃね!




 巻くどころか、シッポ掴まれてるにゃよ。

 だからウチはこうしてこの廃工場に潜入しているのにゃも。



 それにしてもモブニャンときたら、さっそくネコの集会の掟をやぶって情報を横流しするとはにゃあ。



爪出しビンタ一発くらいじゃ到底許されない罪にゃよ。

覚悟しておくといいにゃ



親分!

迷子捜索中のジロリ組の不意を突くべきですニャ!




 悔しそうに提案するモブニャンに対し、トウとリャクは威を張るようにアゴを上げフフンと鼻で笑ってみせる。



んなチマチマしたことやったって、どうせ逃げられるに決まってんよ



おまえはタイパって言葉を知らねーのか。効率重視でみんなまとめて袋叩きにするほうがいいに決まってる



ぐにゅにゅにゅにゅ……



どうやらモブニャンは、トウとリャクを目のかたきにしてるようにゃねぇ




 どんな因縁があるか知らにゃいけど、敵勢力の仲間内バトルは大歓迎にゃよ。



もっとモメればいいのにゃ。

にゃははは!



ム……?



ゲッ!




 気をつけていたつもりにゃんだけど、ちょっと声がれちゃったにゃ!?



 紅が怪訝けげんそうな顔をウチのほうへ向けてきた。 



気づかれるとまずいにゃ!


独り言は超サイレントニャーにして、お口を閉じにゃいと……!








ドキドキ……





 ウチの姿は金属板にほとんど隠されているおかげで、遠目じゃまずバレることはないはずにゃんだけど……






















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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