第61話 新たなる謎

文字数 1,428文字








再び現在、ニャウ


にゃは! 

あの紅の息子のマネをして言ってみたにゃ♪




 そんなお茶目なマウティスは、疑惑のモブニャンを追跡してこの廃工場まで来たんだけどにゃ。



 モブニャンは廃工場の裏口らしきところへ入って行ったのにゃ。



 この場所にはきっと何かある――



 そう踏んだウチは、この風穴だらけのすたれた工場に潜入した、というわけにゃのよ。



それにしてもあのモブニャンがスパイだったとはにゃあ……

意外というか、なんというか――


ウチならもう少し抜かりのなくやれるタイプをスパイとして送り込むけどにゃあ




 とにかく敵地に潜入したおかげで、ねこねこファイアー組がジロリ組の縄張りを狙って裏で暗躍してることがよくわかったにゃ。



 その暗躍要員として、あのモブニャンがジロリ組にまぎれ込んでいた事実も掴んだしにゃ。



さて、これからどうするかにゃあ




 敵に聴き取られない程度につぶやいて、両目を下に向ける。



 視線の先では、ボス猫の紅が部下たちに語っている真っ最中にゃも。



ジロリ組の連中は、我が組の下っ端どもが迷子の妹を取り逃がしたことを知らない


行方知れずの妹を預かっていると偽れば、おそらくここへ駆けつけてくるはずだ


おれは妻の提案アイデアを採用し、ジロリ組のボスどもおびき寄せようと思う



騙すのは心苦しいけれど、やむを得ないわね



ふぅん、虚偽の情報をエサにジロリ組を釣る気にゃね



しかし、ヤツらをタダおびき寄せるのではない。

時間を夜に定め、闇討ちを仕掛けるのだ!



〝闇の集会〟による待ち伏せ――ってわけですね



ククク、腕が鳴るぜ



……



トウ。リャク。

おまえたちは伝言役として、ただちにジロリ組のボスのいる場所へ向かってくれ



へい



ほい



けど、あなた。

ジロリ組のボスがどこにいるか、場所は把握しているの?



それなら問題ない。

ジロリ組のボスの足取りはすでに掴んでいる



あら、もう足取りを掴んでいるだなんて



フッ、ヤツにはとっておきの間者かんじゃを放ってあるからな



とっておきの間者!? 

あっしとは別に、スパイを潜り込ませてたんですか!?



そうだ。おまえは以前からジロリ組にスパイとして潜入していたが、もたらされる情報があまりに少なかった


ゆえに別の者を向かわせたのだ



ふにゅう……。

知らなかったですニャ……



初耳っすね。

親分、そいつは誰なんすか?



入手した情報をすばやく伝えてくるってことは、コイツのような出来損ないじゃねーってことっすよね?



あの者の正体はいずれ明らかになるだろう。

いまはまだ知らなくていい



ふみゅ……、

どうやらモブニャン以外の何者かがジロリ組の中にまぎれ込んでいるようにゃね


モブニャン以外にそんなアヤしい猫がいたとは驚きにゃも



オトナたちの世界、秘密ありすぎ


秘密は悪事の始まり、ニャウ



そう非難めいたことを言うな。

縄張り拡大のためにはやむを得んことなのだ



そうよ。

文句ばっかり言ってないでお父さんをもっと敬いなさい



ふにゃ……


再び叱られ、ニャウ




 不満そうにぼやく子猫たち。



敬ったところで無駄にゃよ。

どうせウチのボスにゃんにボコボコにされて、蔑みの的になるんだからにゃ


せいぜいそれまでのあいだ暗躍し、陰謀をめぐらせてるといいにゃも




 いよいよジロリ組とねこねこファイアー組の縄張りをめぐる抗争が本格化してきたにゃね。


 

 だけどいかに策を練ろうと、勝利の結末はすでに定まったも同然――。



にゅふふふふ!

愚かにゃり、ネコネコファイアー組!


このマウティスのいるジロリ組がどの組よりも最強だということを、骨の髄まで思い知らせてやるにゃ~!






















ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色