第104話 謎のアレが気になる

文字数 1,318文字




 

 ヨウのいる小部屋の前には、上部の壊れたシャッターが行く手を(ふさ)いでいる。



 そのシャッターと、壁とのあいだにある小さな隙間からは、一本の細長いヒモがとび出ていた。


 


 ひとりでにクネクネと動く、謎のヒモ……。



Umm(ウーム)、気にナリマスネー




 それまで毛づくろいをしてたヨウだったが、



無意識で足が出てシマイマス




 ついに片手をヒモのほうへ伸ばし、先端をつつきはじめる。







 ピシッ! ピシッ!



 

 何度かヒモに平手を打ち込んでいると、捕獲に成功した。



 捕らえたヒモを肉球の下にガッと押さえ込む。



 けれども細長い獲物は、まるで生き物のように床をスルスルと(すべ)って手からすり抜けていく。



hmmフーム……。

捕まえられそうで、捕まらないデスネー



……なんだよ、この図。

敵の罠かと思ったが、どう見ても遊んでいるようにしか見えねぇぞ




 俺はヨウの後ろに近づくと、その背から声をかけた。



おい、ヨウ。

まさかとは思うが、マジでヒモにジャレてんのか?



あ、ボス。

よかったらボスも一緒にヤリマスカ?



一緒にヤリマスカって、オマエなぁ……


いまは抗争の真っ最中なんだぜ?

遊んでる場合じゃねぇことくらいわかるだろ



ヒモ遊びが好きなので、つい……


ペロン……ペロン……




 ヨウは自分の気を(しず)めるように毛づくろいしはじめる。



ペロペロすんなっ


ったく、上ではみんなが必死に戦ってるっていうのによぉ



ですが、ボス。

ワタシなりに、この謎のヒモを調べたかったという思いもアリマス



その心意気はいいとしてだ。

何かわかったのかよ?



No,全然デス



なんだよ、意味ねぇな。

結局衝動に釣られてジャレついただけじゃねぇか



いえ、そんなコトはアリマセン


ヒモが内側から引っ張られたり、左右に動かされたりしていることはワカリマシタ



ほぉ。

ヒモが内側から引っ張られたり、左右に動かされたりしているのか



ハイ



敵の気配については、どうだ?



……ワカリマセン



ワカリマセンて……、

そこは猫らしく察しろよ



気配を探るのは苦手ナノデス




 ハァ~とため息をつきたくなるが、ヨウはのんびりしたヤツで、あまり周りを気にしねぇタイプの猫だからな。



 そんなわけで、気配を察知するのは不得意なんだろう。



けど、ホントに自動で動くヒモだとしたらスゲェな。

猫飼ってる飼い主が飛びつきそうなシロモノだぜ



きっと、うちの飼い主さんも欲しがると思いマス



だろうな。

売りに出したら大ヒット間違いナシだぜ!



Oh~! スゴイデス!

世界中のみんなが喜びマス!



……って、そんなもんあるわけねぇだろ!



Umm、残念デス……



とにかく気をつけろ、ヨウ。

これは敵の罠かもしれねぇぞ!



ラジャー!




 ヨウは表情を引き締めて返事をする。



 俺はヨウの隣に立って、足元のヒモを見下ろしながらじっくり観察しはじめた。








どもー!

アイ・キャットでーす


ねこねこファイアー組の首輪については、キャラクター紹介②に記載したとおりです


赤い首輪は、ひと目でねこねこファイアー組の猫とわかりやすくするためのものであり、実際には装着していません


前回改めて書いておこうと思っていたら、ウッカリ忘れてしまいました


さてさて――

いつも読んでくださる方々、ありがとうございます!


それでは皆様、ごきげんよう~




























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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