第76話 攻防

文字数 1,902文字








 (くれない)は俺の腕を押さえ込みやがった。



 相手の力はかなり強い。



 ――が、俺にだってパワーはある!



退()けっ! 

この野郎がっ!




 腕をブンッと振って、力づくで紅の手を払いのける。



フンッ!

こざかしい!




 後ろに引く紅。



 ――チャンス!



 俺はすかさず距離を(せば)めて噛みつき攻撃を仕掛ける。



その顔面に喰らいついてやるぜっ!



無駄だっ!




 無駄と一蹴(いっしゅう)するだけあって、紅は器用に首をひねり攻撃をかわした。



百戦錬磨(ひゃくせんれんま)を名乗るボスだけあって俊敏(しゅんびん)だな



フッ、貴様の攻撃は(くう)を切ってばかりだな



それで終わりと思うなっ!




 高速で拳をくり出す。



 俺の爪先が紅の(ほお)(とら)えて打つ!







 攻撃は浅く、表面の毛をかすめたにすぎない。

 


 もともと全力投球のパンチじゃねぇから、威力に(とぼ)しいのは当然だ。



 だが、いまのはほんの小手(こて)調べ。

 それで相手のおおよその実力は知れる――。



俺の拳をギリでかわすとはな。

テメェは想像以上に強ぇらしい



当然だ。

貴様を(ほうむ)るのは、このおれなのだからな!



くぅ~~~っ!

うちのボスを相手に言ってくれるじゃないのっ!



Ah~……!

このままだと劣勢に立たされてしまうのでは!?



ねこねこファイアー組は勢いだけと聞いていたが……


どうやらかなり苦戦を()いられることになりそうだ




 おそらく紅ほどの猫を相手にできるのは、この俺しかいないだろう。



みんな、そう悲観的になるな。

まだ負けると決まったわけじゃねぇ!



貴様程度の実力でおれに勝とうなどとは笑止千万(しょうしせんばん)



ハッ! 調子に乗んな!

手加減してやってることにも気づかねーのかよ!



なんだと!?

手加減など無用だっ!




 俺の首筋を狙って、紅は(とが)ったパーツを()き出しにする。



 鋭い牙でガブリとやられたら、浅い傷では済まないだろう。



 その攻撃が実行に移される前に、俺はヤツに向かって不満をぶつけた。



本気でやり合いたいなら条件に従えよっ!



条件だと!?



ああ、そうだ!




 反論しながら、二足立ちスタイルの構えを解いて数歩後ろへ下がる。



 互いに距離さえ取っていれば、すみやかに応戦することは可能だ。



 とはいえ周りから見れば相手に押されて引き下がってるようにとられかねないので、睨み合いながらしっかり相手を挑発しておくことも忘れない。



仮にここでテメェを先にぶっ倒してもだ


捕らわれた新入りの妹が解放されるなら、いますぐ八つ裂きにしてやってもいいんだぜ?


けど、そうする気はねぇだろうから、先に捕らえた猫を解放しろっ!



捕らえた妹を解放……?


アッ……!




 なんだその、捕らわれの妹のことはすっかり忘れてたみたいな反応はよ。



まさか……


テメェらが新入りの妹を捕まえたっていう話は、(いつわ)りじゃねぇだろうな!?



……偽りなどではない!



ホントかよ!?


そもそも疑問でならねぇが、人間みてぇに縄でくくれるわけでもねぇのに、いったいどーやって妹を連行したんだ?



それは……


く、首を(くわ)えて運んだのだ!



じゃあ子猫を運ぶように連れ去ったってことか?



そうだ……!



それって小さな子猫じゃないと、かなり口に負担がかかるんじゃない?



アゴが外れソウデス



私も不思議に思っていたが、運ぶ側の猫が連携し合って交替すれば、それも可能か……?



いちいち細かいことを気にしすぎだっ!


とにかく、妹の無事を確かめたければ工場内へ来るがいい!



中で待ち伏せしてるヤツらが俺たちを歓迎してくれるってか?



フッ、知れたこと。

それが我らの(もよお)す闇の集会。

死にゆく者を歓迎しよう!



ふざけんな!

先に妹の身の安全を示しやがれ!



知らんな。

猫の無事を知りたければ、その目で確かめるがいい!




 紅はサッと身を転じると、風のように建物へ駆け込んでその姿を消し去った。









どもー!

作者代役のアイ・キャットでーす!


こういった猫バトルのシーンについてですが、たとえば野良猫さんがケンカしてアウアウ吠えているときがありますよね


その場面を人間風に変換したらこんな感じかなーと、作者は想像しながら書いているそうです


猫がそんな人間じみたやり取りをするはずがないと思う反面、詳細不明だからこそ想像する楽しみがあると思うのです


という小話を前回の終わりに挿入するつもりだったのですが、ウッカリ忘れてしまいました


この時期はニャンコさんたちが布団に来るので、つい寝不足になってボケ~ッとしてしまいますね~



と、愚痴はさておき――。

最後までお読みいただき、ありがとうございました


それでは皆様、ごきげんよう~
























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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