第76話 攻防
文字数 1,902文字
相手の力はかなり強い。
――が、俺にだってパワーはある!
腕をブンッと振って、力づくで紅の手を払いのける。
後ろに引く紅。
――チャンス!
俺はすかさず距離を
無駄と
高速で拳をくり出す。
俺の爪先が紅の
攻撃は浅く、表面の毛をかすめたにすぎない。
もともと全力投球のパンチじゃねぇから、威力に
だが、いまのはほんの
それで相手のおおよその実力は知れる――。
俺の首筋を狙って、紅は
鋭い牙でガブリとやられたら、浅い傷では済まないだろう。
その攻撃が実行に移される前に、俺はヤツに向かって不満をぶつけた。
反論しながら、二足立ちスタイルの構えを解いて数歩後ろへ下がる。
互いに距離さえ取っていれば、すみやかに応戦することは可能だ。
とはいえ周りから見れば相手に押されて引き下がってるようにとられかねないので、睨み合いながらしっかり相手を挑発しておくことも忘れない。
なんだその、捕らわれの妹のことはすっかり忘れてたみたいな反応はよ。
紅はサッと身を転じると、風のように建物へ駆け込んでその姿を消し去った。
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