第41話 カップル成立?

文字数 1,964文字





 親分らが合流した直後、話が妙なほうにこじれておかしなことになった。



 無謀と知りつつ、ワイは機嫌の悪くなったミミをなだめてみる。



ミミ~、そうカリカリせんと気ぃ静めてや


イライラしたときはうまいメシのこと考えると気分が落ち着いてくるで



メシのことを考えるだと!?


いまはそれどころじゃねーーー!



はっはっはっ。

すごい剣幕だなぁ


さっきのボスに対しての強気な態度といい、キミは度胸があるねぇ



うふふふふふ!

そうなの、アタシ!


スイッチが入るとギラギラからキラキラまで、TPOに応じて使い分けられるタイプだから♪



さっぱり使い分けてるようには見えへん



うっさいわねっ。

黙ってって言ってるでしょ


あ、それからそこのアナタ




 ミミの視線が例のメス猫に向く。



えっ、あたしですか?



邪魔だから、少しのあいだだけ離れててくれない?


アナタのニオイがきついせいで、アタシのスメルチェックに悪影響が出ちゃうかもしれないでしょ



はい……




 メス猫が申し訳なさそうに駐車場の端へ引っ込むと、



ヨ、ヨツバちゃん……!




 それを新入り猫が慌てた様子で追ってゆく。

  


なんやあのガキ。

ジブンの妹さがせゆうときながら、違うメスの尻追っかけとんのかいな




 あのメス猫と新入り(アイツら)、カップル成立するんやろか?



 ワイには興味ないことやから、正直どうでもええ。



 それよりも注目すべきは、組の中堅のミミと、副ボスによる恋仲発展スメルチェックが始まりそうってことや。



じゃあ、副ボスさん。

アタシの匂いも嗅いで



おうよ




 副ボスは身を屈めて、ミミの鼻に顔を近づける。



 それから三毛柄の毛に鼻を寄せて、慎重に息を何度か吸い込んだ。

 



 クンクン……

 


 クンクン……

 


あ~なるほど



アタシの香り、どうかしら?



はっはっはっ


スマン! 

好みじゃなかった



こ、好みじゃない……!?


今度こそイケると思ったのに――




 よほどショックやったんか、ミミはめっちゃ大声で叫ぶと、急に死んだように動かなくなる。





………………………………!



エエェーーーッ!?



ミミさんっ!?



ミミがショックで凍結状態に……!



おいおい、どーなってんだよ


テンダ!

いったいミミの何が気に入らなかったんだってぇんだ?




 親分に問われて、副ボスは困ったように苦笑いしながらもキッパリと答えた。



だって、長女じゃねぇですし



あ?

長女じゃねぇとダメなのかよ?



そうっす。

じつはオレ、次女より長女派なんすよ



なんや、その謎の好み!?



いや~外見的には問題なかったんすけどね。

ホント、申し訳ないっす!



おいテンダ。

その言い分はいくらなんでも理不尽だろ


ミミのヤツ、まだショックで凍りついてるぜ



全身ピキピキに固まってますね



つついたら割れそうデス



はっはっはっ。

気が強そうだし、ダメならはっきり断っても問題ないと思ったんですけどねぇ


いや~まいったなぁ



そうは言うても、乙女ゴコロは複雑でっせ


はっきり断るくらいなら、副ボスさんの広い心で受け止めたほうがよかったんとちゃいます?



う~ん……、

でも長女じゃないからなぁ




 ミミはショックで凍っとるのに、まだどうでもええことにこだわっとるんかい。



 副ボスの懐は底なし沼の包容力やと思っとったけど、案外底は浅かったんやな……。



おーい、ミミ。

生きとるか―?



……………………



ほな、試しに前足でつついてみるか。

割れたらどないなるんか、見てみたい気もするし



テメェ! 

殺す気かっっっ!



ハニャアァァア!?




 ワイの冗談に反応して、ミミが復活する。



 いきなりの出来事と、ミミの迫力に気圧されて、ワイは情けのない悲鳴を発してしもうた。



なんやミミ、めっちゃ元気やないか!



別に元気じゃないよ!

気分悪いわっ!



もうこの件は忘れろって。

腐らずにいりゃ、いつかイイ相手が見つかるからよ



ハッ!

どーせみんな適当な理由つけて断ってくるのさ!



はっはっはっ。

ホントすまねぇっす



副ボスに悪気はないのでありますっ!



悪気がなけりゃなに言うてもええっちゅうもんでもないけどな




 まぁこればっかりは相性やし、しゃあないか……。






どもー! アイ・キャットでーす!

今回はニオイについて猫のマメ知識をお伝えしまーす!


猫社会では、ニオイで相手の情報がある程度知れてしまうといわれています


そのため互いの条件が合わないと、このように即フラれてしまうこともあるようです


ちなみにこの話はフィクションなので、兄や姉など続柄まで気にする猫がいるかどうかはわかりません


人間社会でいうなら、兄より弟が好きだとか、姉より妹が好きといった感じなんですけど


たまにいませんか? 

つき合った相手が全員長男だった、長女だった、みたいな人


もしかすると、猫ほどではなくても相手のフェロモンを嗅ぎ分けて、自分に合っているか判断しているのかもしれませんね~


というわけで。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました~


それでは皆様、ごきげんよう~





















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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