第136話 心の涙
文字数 2,073文字
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重くて速い、テンダによる拳の一撃。
首に直撃を受け、予想以上の相手の強さに動揺が広がる。
テンダは指先にグッと力を込める。
偵察猫の体が苦痛でびくりと跳ねあがる。
しかし、体を押さえ込んだテンダの力のほうが強かった。
偵察猫は大きく口をひらき、首を伸ばしてテンダの体に牙を立てる。
だが――
攻撃は、あきらかに
むしろ、ためらいが感じられるほどに弱々しく、威力に
偵察猫はテンダの手をすり抜け、後ろへジリジリと
感情に揺れる偵察猫にテンダは優しく語りかける。
兄に問われ、弟は口ごもる。
自分の気持ちを改めて振り返っているのだろうか……?
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苦しみに満ちた絶叫。
天を突き破るように悲しく、切ない。
葛藤する弟へ、テンダは
偵察猫の体から急激に殺気が消えていく。
そして
偵察猫はテンダの首に顔を寄せ、そこに刻まれた噛み跡をペロリと舐めた。
テンダは偵察猫の傷を舐め返す。
偵察猫は、伏し目がちな顔をテンダだけでなく、俺にも向けて謝罪する。
テンダと偵察猫が微笑む。
俺にはふたりの猫が心の中で泣いているように見えた。
けれど、そこに
温かな涙は兄弟猫たちの孤独を
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辛い経験を経て再会できた兄弟たちが幸せになってくれたらいい――
そう心から願わずにいられなかった。
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