第164話 小さな挑戦

文字数 1,210文字







 俺の挑発を受けて――



ふぬぬぅ~~~!


ふにゃにゃ~~~!




 メデアとイソルダの毛が急激な勢いで逆立ちはじめる。







めっちゃ興奮しとる



怒ってるのかしら?



いや、ビビってんだろ



ビビッてなんかないもん!


エキサイト、ニャウ!




 体を大きく見せるため、二足立ちになるメデアとイソルダ。



 あくまで強気な姿勢を保とうとするが、俺には弱気を隠そうとしているようにしか見えねぇ。



Umm(ウーム)、実際どうなんですかネー



興奮しているわりに腰が引けているような



やはり恐怖を感じているのでは?



はっはっはっ。

まだ子どもなんだから無理するな



勘違いしないでよねっ!

怖くなんかないもん!


ボス猫相手に奮闘(ふんとう)、ニャウ!




 ふたりは俺を睨みつけると、声を張って(うな)りだした。



フゥゥゥゥゥゥゥゥッ!


ウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!



……



ヴゥゥゥゥゥ~~~!


ナァァァァァ~~~!



……



くああぁぁぁああ~!


はぁ~ねむぅ~……



えっ……ちょっ!?


あくびかまされた、ニャウ!



あ、わりーわりー



貴様、なんだその態度はっ!

うちの子が懸命に威嚇しているというのにっ!



威嚇? 

発声練習かと思ったぜ



おのれ、愚弄(ぐろう)する気かっ!



うるせぇな!

ガタガタいわずに外野は黙っとけ!



父猫に向かって外野だと!?



あなた、気持ちはわかるけど(こら)えて!


それに……いまのはたしかに物足りなかったわ。

威嚇というには声が高くて、ちょっとかわいらしさが出てしまっていたもの



かわいらしいとか言わないでよ


いらんダメ出し、ニャウ



でも、奥さんの言うとおりよねぇ



相手を心底(ひる)ませるなら、低くて迫力のある声が最も適しているだろう



試しに親分さんが見本をみせてやったらどーです?



なんで敵相手にそんなことしてやんなきゃなんねぇんだよ



相手が怖がって戦意喪失してくれたら、手間が省けますやん



あーなるほどな。

んじゃ、やってみるか


まずは大きく息を吸い込んで……


ガニャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!








ギョッ……!


ギョギョッ……!




 あきらかに恐怖で凍りついた顔をして固まるメデアとイソルダ。



 辺りに木霊(こだま)する咆哮が鳴りやむと、(せき)を切ったように鳴きだした。



フナァァァァァ~~~!


フニャァァァァ~~~!




 状況を見物していたジロリ組のメンバーが口々にツッコミを入れる。



ごっついビビッとるやん



まぁ、間近で咆えられると怖いデスヨネ



ボスの咆哮は、オトナ猫でも怯んでしまうからな



アタシもボスの鳴き方を真似してみようかしら



はっはっはっ。

じゃ、オレもやってみるかな



悪ノリはよくないですよ……



とにかくこれでハッキリしただろ


所詮テメェらは力もねーのにイチャモンつけてくるだけで、俺に挑む勇気すらねぇってこった



か、勝手に決めないでよね!

ビビッてないって言ってるじゃん!



まだ懲りねぇのかよ



ねこねこファイアー組の不屈の闘志を見せてやる、ニャウ!




 メデアとイソルダは小さな手を構えて俺に牙を剥いた。
































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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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