第176話 策士の導き

文字数 1,388文字





 モブニャンとの話が終わった後のこと。


 

 偉大すぎるマウティスは、盛大に居眠りをしたにゃ。







いやいや、サボリじゃにゃいよ?

戦闘終了後、あえてジロリ組のみんながいなくなるまで待機していたのにゃよ




 そのあと、もちろん廃工場へ向かったにゃ。



わざわざ廃工場に足を運ぶのは、理由があるからにゃも


ウチは、ある目的を果たしておきたいのにゃ




 そっとしのんで工場裏を歩き、建物の中へ入っていく。



 裏側に入り口はないけれど、壁には穴が開き放題にゃ。



にゃんか床にガラス片が落ちてるにゃね。危にゃいも




 破片をよけつつ骨組みをピョンと上へのぼっていくと――



ふみゅ、アレかにゃ?




 忍び足を維持し、じっと2階を凝視する。



 近づくにつれて、黒い(かたまり)のようにしか見えなかったモノが、だんだんと色とりどりの猫に見えてきた。 



紅ファミリーにゃね




 すると、さっそくウチの気配に気づいた紅が、いち早くこちらに顔を向ける。



マウティスッ!



うにゃも~。

美しすぎて誰もが6度見するマウティスにゃも~



たわけたことをっ



くああぁぁぁ~。

マジメすぎてもおもしろくにゃいも




 アクビまじりに返事をしつつ、ウチは金属板の上に跳び乗る。



 ついでに紅をチラ見する。



声は鋭いけれど、体はずいぶん傷だらけにゃね



たいした傷ではない!



そうはみえないけどにゃ~




 ウチはさらに視線を周囲に走らせ、目と耳で様子を(うかが)う。



 別の金属板の上では、負傷したトウやリャクが平べったくなっているにゃ。



 呼吸が浅く、まだ失神状態のようにゃね。



 骨組みの上などにも、倒されたねこねこファイアー組の猫たちが伏せたままでいる。



どれも負傷してるけれど、みんな死んではいないにゃね



貴様のボスのおかげで、みな散々(さんざん)な目に()った



自業自得にゃも。

昔からボスにゃんにケンカを売った者は、例外なくボコボコにされるのにゃ



フンッ!

気に入らんな!


だがヤツの情けのおかげで、打ちのめされたのはおれだけで済んだのも事実……



そうにゃよ。

感謝するにゃも




 紅を囲んでいるイザベラたち親子は無傷にゃ。



 さっきからやや緊張した面持(おもも)ちで、こっちのほうをジロジロ見ているにゃも。



あ、あの……何かご用ですか? 

ジロリ組の皆さんなら、もうここを出ていきましたよ



うにゃ、知ってるにゃ。

大体の音は聴き取っていたからにゃ



では、なぜ貴様がここに来る必要がある?


もしや、おれと戦ったときの恨みを晴らすため、報復しに来たのか?



報復!?

まだ戦う気なの……!?


みんなで反撃、ニャウ……!




 ブワワッ!



 条件反射的に毛を逆立て、やんのかステップ体勢を取りはじめる子どもたち。



フゥゥゥゥゥゥゥゥッ!


ナァァァァァァァァッ!



早とちりは大概(たいがい)にしてにゃ。

ウチにその気はにゃいも



では、なぜだっ!?



途方に暮れてるようだから、手助けしようと思ってにゃ



手助けだと!?



うにゃうにゃ。

教え(さと)すために来たのにゃ



教え……?


胡散臭(うさんくさ)い、ニャウ



笑わせるな、マウティス。

教えなどと称し、策を(ろう)するつもりであろう!



やっぱダマす気だー!


えげつない、ニャウ!



そんなふうにいきなり全否定されると、帰りたくなるにゃね



フン、貴様の助力など全くもって不必要だ。

とっとと去るがいい!



ふにゃ、なら帰るにゃも




 ウチは顔をプイっと背け、回れ右をして歩き出した。



























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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