第171話 裏バトル②

文字数 1,399文字





 塀から地面へと跳び降り、SK(ションベンクソ)トラップに(はま)ることなく見事な跳躍(ちょうやく)をみせた偵察猫(レコねこ)



 意気揚々(いきようよう)と挑発してくる。



マウティス!

貴様も下に降りて戦え!



えぇ~めんどくちゃいにゃ



ふっ、面倒と見せかけてそのじつ、ジャンプ力に自信がないのだろう!


跳び降りに失敗すれば、トラップに(はま)るのは必定だからな!



そんなことないにゃ。

さっきから聞いてれば、このマウティスを出し抜いたと思って調子に乗ってるにゃね



ふっふっふっ、悔しいか!



いや、まったく



ぬっ!

虚勢(きょせい)を張るか!



しつこいにゃねぇ~。

ウチだってそれくらいジャンプ力はあるにゃ


偉大なるマウティスの力を(あなど)ってもらっては困るにゃよ



ならば塀から降りてみよ!

罠を跳び越え、拙者と戦うのだ!



くあぁぁぁあ~。

退屈にゃあ



たっ、退屈だと!?




 偵察猫は驚き、目をパチパチさせて棒立ち状態になる。



ひとまず休憩するかにゃ



このタイミングで休憩などありえぬ!

さては(おく)したな!



違うにゃも。

眠くなってきちゃったのにゃ




 ビヨ~ンと手足を伸ばしてから、塀の上にしゃがみ込む。



 狭い場所で休むなら香箱座(こうばこずわ)りに限るにゃね。



 そうしてくつろぎはじめること、5分。







 さらに5分経過……。







 10分経過……。







いいかげん、動く気はないのかああああああっ!



くあぁぁぁぁ~。

めんどくちゃいにゃ~





これでは永遠に決着がつかぬではないか!



決着なんてどーでもいいにゃも。

そもそもケンカを売ってきたのはそっちからにゃ


こっちはいきなり攻撃されたから、やむにゃく応戦しただけだしにゃ



しかしそうやって動かなければ、味方に加勢しにゆくこともできぬぞ?



そうにゃねぇ



貴様とてジロリ組の一員、仲間のことが気になるであろう!



いや、まったく



エッ!?



気にならにゃいよ?



なななっ、何故(なにゆえ)!?



だって戦う前から、勝敗は決まってるにゃも


ウチの組には最強のボスにゃんがいるから、負けることにゃんてないにゃ



なんだとぉ!

百戦錬磨(ひゃくせんれんま)(くれない)様のほうが実力は上だっ



あー、ないにゃねぇ



バカな!

では互角だというのかっ!?



それもないにゃ。

ねこねこファイアー組のメンバーが束になってかかっても、ウチのボスにゃんは仕留められないにゃ



でえぇぇぇい!

ありえんっ!



ありえなくないにゃ。

そんなに気になるなら廃工場へ行って様子を見てくればいいにゃ



その必要はない!

拙者は、紅様の築いたねこねこファイアー組の力を信じている!


仲間たちが団結し、力を合わせて戦えば勝てぬ敵などいない!



くああぁぁぁあ~。

バカくちゃ!



バカくさいだと!?



仲間とか団結とか、めんどくちゃいにゃ。

猫は元来気まぐれでひとりが好きで、怠惰(たいだ)な生き物にゃも



全否定……!








いやいやいや、そのようなことはない!


猫にも友情や、仲間を(いつく)しむ心がある!


それに我々猫族は、自己管理能力に優れたしっかり者なのだ!



スヤスヤァ~



寝るなああああああっ!




 偵察猫はイラ立ちを募らせ、発狂寸前で叫ぶ。



 ウチは目を閉じたまま、かすかに笑い声を()らした。



にゅふふ……。

いいように(まど)わされてるにゃね




 これはウチの計略にゃも。



 偵察猫を(おとしい)れるために、〝座して動かず〟の心構えを実行しているだけなのにゃ。























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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