第49話 思いがけない登場②

文字数 1,474文字





オメェら、何の用だ? 




 親分が人間のほうへ近づくと、



あたしも触りたい~!




 少年だけやなく、その後ろにいた少女も駆け寄ってきた。



親分さんは人寄せニャンコやな



お店にいたら、立派に招き猫としての務めを果たしてくれそうよね



招き猫はメジャーでも、招き犬はマイナーな現実や



犬は犬で充分に愛されているように感じるが



ネコも犬も、どっちも人からモテモテなのデス



せやな。

モテモテなのはええことや。

動物嫌いな人間もおるけどな




 幸いこの子どもらは動物嫌いやなさそうや。



 親分を物珍しそうに見つめながら、ウキウキした様子で感嘆の声をあげる。



うわぁ、黒猫かっけー!



フサフサしててかわいいね!

すごく大きいし!



どうやらオメェらは、ただ猫を見物したいだけのようだな 



ねぇ~ママ。触りたい~!

触ってもいいでしょ?



ダメよ。

噛まれるかもしれないし



え~噛んでくるの~?



なんで~?



なんで~って、こっちが聞きたいわ


ヴァンパイアやあるまいし、噛むって決めつけといてや。

普通噛むより先に逃げるで



ボ、ボクなら噛むより先に逃げるかな……



まぁ場合によるけど、露骨に嫌がることするとか、強引に捕まえようとでもせん限り噛まへんわな



俺だって、知らねぇ人間の手なんか口に入れたくねーし



ねぇ~ママ。さっき買ったエサあげようよぉ~。

猫、寄ってくるかも



ダメよ。

そもそもアレはキャットフードじゃなくてドッグフードでしょ



大丈夫だよ。

同じエサだし、猫でも食べるよ



コラコラ、同じ言うたらあかんよ。

フード製造業界の人ら、おかんむりやで


人間かてサルとほとんど変わらんやろってドライフード出されたらうれしないやろ? 

それと一緒や


犬と猫、根本的に種族が違うんやから



具体的にキャットフードとドッグフードはどう違うんだ?



犬用のものは猫に必要なタンパク質が少なく、その他の配合している成分も異なるのです



へぇ~そうなんだ~



さすが幹部は物知りデスネ



ドッグフードを好んで食ってまう猫もおるけどな



少量なら問題ないやろ。

おれやってキャットフード食うたことあるし




 などとワイらが世間話に興じているうちに、子どもたちは母親の手に提げた買い物袋エコバッグを引っ張りだした。



ねぇ~、は~や~く~!



猫、触りたい~!



いい加減にしなさいっ!

帰るわよ!



むぅ~……



ふぬぅ~……




 母親らしき人間がぴしゃりと叱ると、子どもたちは熱気の冷めた萎え顔になった。



 しぶしぶバッグから手を離し、母親と共に犬猫の群れから離れていく。



ところであのドッグフード、何味だったんやろか



ちょっと食べてみたいデス



アタシはニャオ☆チュールのほうがいいわぁ



マウティス姐さんみたいなこと言うなや




 と、ワイがツッコんだ直後のこと――



 にわかに降って湧いたようなトラブルが発生した。



 店の敷地を出て道路を歩いとった親子に、小さな影が迫る。



ひゃっ……!




 一瞬のうちに、母親の手首にぶら提がっていた買い物袋エコバッグが消えていた。



んなっ……!?




 獲物に駆け寄るスピード、標的に跳びつく瞬発力……



 まぎれもなく猫の仕業や。



 それも、とんでもなく手慣れた猫による犯行や。



普通の猫より素早いわね!




 盗まれた布袋が塀を越え、風になびくハンカチのようにゆらめく。



 袋を口にくわえたまま、駐車場のほうに侵入してくる猫の影。



あの猫たちは一体……!?




 二匹の猫は、全員あっちゅうまに植え込み付近の木へ跳びあがって、枝の上に腰を下ろした。



ふっふっふっ



くっくっくっ



とうとう現れやがったか



まさか、アイツらは――!



ねこねこファイアー組!



ねこねこファイアー組やて!?




 思いがけず登場したドロボー猫のせいで、波乱の展開になりそうや……!
























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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