第113話 プランB ②

文字数 1,020文字








 マタタビを摂取し、異常な変貌ぶりを見せるリャク。



 一方その奥では……



 トウのもとに向かったメデアが、インテリを警戒しつつ歩を進めていた。



……



マタタビを与えるのは止めなさい!

少量を(たしな)む程度ならまだしも、過剰摂取は体に毒だ



うるせー!

早くおれにもマタタビをくれ!



ウニャ!



そうはさせないぞ!




 インテリは拳を突き出しつつ跳躍した。



 しなやかな体がなめらかに宙を跳び、メデアのもとへ急接近する。



邪魔するなぁ!




 横からトウが猛ダッシュで割り込む。



 インテリを体当たりで押しのけようとするが、



ハアァッ!




 先にインテリの手が(ひらめ)いた。



ぐぅっ……!




 トウは呻いてバランスを崩す。



 水面からとび上がる魚のように豪快に跳ねると、床に落下(ダイブ)した。



フニャ!




 メデアはその様子に驚きながらもトウを(かば)うように前方に立ち、インテリを威嚇する。



フウゥゥゥゥゥゥゥゥ!



よしなさい。

子どもと争うつもりはない



ふぅん。

じゃ、いまのうちにトウにマタタビを渡すもん!




 メデアはくわえたマタタビの小枝をトウの足元にコトンと落とす。



あ、こらっ!



争うつもりはないんでしょ?

だったら、ちょっかいかけてこないでよね!



そういうわけにはいかない。

マタタビを与えればトウは狂暴化する


結果がわかっていながら、みすみす見逃すわけには――



争うつもりはないって言ったじゃん!

嘘つき!




 メデアの言葉を受けて、インテリは諦めたように構えを解く。



嘘つきとは心外だな。

私は本心からキミのような子どもを傷つけたくないだけだ



……!




 そうしているうちに、トウがマタタビの小枝に噛みつきはじめた。



おおおおおおおおおおおっ!




 マタタビを摂取した途端、トウが激しい興奮の波に呑まれる。



 血走った眼差し。異常に膨れ上がった殺気。



 ギラついた瞳は、燃えさかる炎のようだ。



ファイアァァァァァァァァァァァァッ!








たった少しマタタビの小枝をかじっただけなのに、すさまじい変貌ぶりだな




 俺のつぶやきが聞こえたのか、インテリも固唾を呑んだままそれに同意する。



厄介なことになりましたね……



ふっふっふっ


逆らう者は皆殺しだぁ~~~!




 同じくマタタビで凶悪な面構えになったリャクがトウの雄叫びに呼応する。



みんなまとめて血祭りにしてやるぜ~~~!




 ふたりの体からは、猛獣の生霊が憑依したような怪異な闘気が漂っていた。



マタタビの刺激により、トウとリャクの力は格段に強化された


果たして貴様らに立ち向かえるかな?


























ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色