第52話 ワルどもの伝言③
文字数 1,544文字
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/1c6d35f102d41c06fe5b608d6d40eb99.png)
ワイの想像を通り越して、新入りの妹はねこねこファイアー組のアホどもにさらわれたっちゅう話や。
〝妹に会いたければ闇の集会に来い〟
えらいこっちゃな。世も末やで。
ふたりは首を軽く振ると、木の上から動き出しそうな気配を見せた。
せやけどワイらを見下ろしたまま、ふと思い出したかのように言葉を続ける。
するとトウとリャクの名乗りに反応して、ミミとヨウがいつもの調子でニコッと微笑んだ。
ワイがツッコミ入れてるうちに、トウと名乗ったドロボー猫はドッグフードの袋を口にくわえて身構えた。
もうひとりのリャクも背中をグッと縮め、いまにも動き出しそうな姿勢になる。
親分の制止を無視し、ドロボー猫どもは跳躍した。
木の枝から塀を伝い、アスファルトを蹴り、通りを行き交う車をも黙殺するかのように横断していく。
同じ猫の目から見ても俊敏や。
トウとリャクの姿は、走行中のトラックに隠されて視界から消えていった。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/4c4e8b636db390f5ba69da5d845607de.png)
消えた猫たちを追って、偵察猫は駆け出してゆく。
ワイはその背に挨拶を送りながら遠ざかってゆく姿を見送った。
パニック状態の新入り。
そんな幼い猫らを横目に、親分はすべてを受け入れるようにゆっくりとまぶたを閉じた。
猫同士の戦いはあっても、基本は一対一。
横から誰かが参戦したとしても、やり合うのは少数や。
組のメンバーが一気に殴り込みをかけるなんて、ジロリ組結成以来の前代未聞のことやないか!?
(ログインが必要です)