第52話 ワルどもの伝言③

文字数 1,544文字



 ワイの想像を通り越して、新入りの妹はねこねこファイアー組のアホどもにさらわれたっちゅう話や。



 〝妹に会いたければ闇の集会に来い〟


 

 えらいこっちゃな。世も末やで。



せやけど、なんで妹さがしとんのが、あのドロボー猫どもにバレたんや?



ジロリ組の集会の(おきて)では、その内容を他者に()らしてはならないと決まっている……


まさか――!?



何か気づいたのか? 

インテリ



ねこねこファイアー組も偵察猫レコねこを放ち、我らの行動を監視していたのでは!?



エ~~~ッ!

スパイが混じってたってことぉ!?



ハァ!?

ホンマかいな!?



No~!

信じたくナイデス!



へっへっへっ!

壁に耳あり、障子しょうじに目ありっていうだろ



オマエらの情報は筒抜けなんだよ



そのスパイは誰やねん!?

ハッキリ言わんかい!



教えるわけねーだろ、バーカ!


用件は伝えたし、もうテメーらに話すことはねーよ!




 ふたりは首を軽く振ると、木の上から動き出しそうな気配を見せた。



 せやけどワイらを見下ろしたまま、ふと思い出したかのように言葉を続ける。



ああ、そうだ。

ついでにおれたちの名を教えておいてやる


おれの名はトウ



おれの名はリャク


オマエらを地獄に葬る者たちの名だ。

憶えておけ



なんやその言い草!

厨二ちゅうにかっ!




 するとトウとリャクの名乗りに反応して、ミミとヨウがいつもの調子でニコッと微笑んだ。



アタシはミミよ。

麗しの三毛猫って呼ばれてるわ



ワタシは洋猫のヨウ、デス。

日本生まれじゃないので、ちょっと片言デス



アホか!

敵相手にそんな自己紹介はいらんちゅうねん!




 ワイがツッコミ入れてるうちに、トウと名乗ったドロボー猫はドッグフードの袋を口にくわえて身構えた。



 もうひとりのリャクも背中をグッと縮め、いまにも動き出しそうな姿勢になる。



待ちやがれ!



へっ!



待たねーよ!




 親分の制止を無視し、ドロボー猫どもは跳躍した。



 木の枝から塀を伝い、アスファルトを蹴り、通りを行き交う車をも黙殺するかのように横断していく。



 同じ猫の目から見ても俊敏や。



 トウとリャクの姿は、走行中のトラックに隠されて視界から消えていった。







なんやアイツら、めっちゃ早いで!



ハッ、持久力では犬が上や!



い、妹のこと、もっと聞きたかったのに……



念のため、追跡するのでありますっ!



おう、気をつけろよ。

くれぐれも深入りするんじゃないぞ



はっ!




 消えた猫たちを追って、偵察猫は駆け出してゆく。



気ぃつけや~




 ワイはその背に挨拶を送りながら遠ざかってゆく姿を見送った。



……やっと下品なニオイを放つヤツらが去ったか。

あんなんずっとかがされてみぃ、鼻曲がるでしかし


それにしても組同士のケンカが勃発(ぼっぱつ)するとはホンマ物騒やなぁ



ボス。

闇の集会に参加なさるおつもりですか?



ウーム……



はわわわわっ! 

たたた、助けに行かないと……妹が……こ、殺されちゃう~~~っ!



ボス!

コウくんの妹さんを助けてあげてください!




 パニック状態の新入り。懇願(こんがん)してくるヨツバ。



 そんな幼い猫らを横目に、親分はすべてを受け入れるようにゆっくりとまぶたを閉じた。



行くしかねぇか



うっひゃ~! 

ホンマですか!?


ジロリ組がねこねこファイアー組に乗りこむなんて一大事ですやん!




 猫同士の戦いはあっても、基本は一対一。

 横から誰かが参戦したとしても、やり合うのは少数や。



 組のメンバーが一気に殴り込みをかけるなんて、ジロリ組結成以来の前代未聞のことやないか!?



差し迫った事態だし、やるしかねぇだろ



勝てる見込みはあるの?



聞くところによると、ねこねこファイアー組のボス猫はかなりの猛者だとか



親分さんが強いのはわかってますけど、今回は展開が急やし……



心配するな。

最強のボス猫はこの俺だ!


俺がねこねこファイアー組のヤツらを一掃してやるぜ!

























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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