第72話 突入
文字数 1,915文字
新入りや熊介らと別れてからしばらく歩きつづけ――
野原の奥に、ようやくそれらしき建物を発見した。
細い月明かりが、砂地の上を黒々と占拠する塊を照らしている。
廃工場の入り口付近へ接近すると、後ろにいたキンメとミミが俺のそばへ来て、キョロキョロしながら辺りの様子を窺う。
テンダが豪快に笑い飛ばすと、ふいにキンメが鼻をヒクヒクさせた。
細々と説明するのがダルくなった俺の胸中を察して、インテリが動いた。
顔を廃工場の入り口に向けて示してみせる。
インテリはむっつりしたまま前へ出ると、砂地を蹴って走り出した。
インテリの体が鋭い放物線を描いてしなやかに跳び上がる。
手足を水平に伸ばし、より細長さを増した全身が、軽やかに地表を跳び越えて数メートル先の地面へ着地した。
しかしすぐさま沈着なまなざしを周囲に向け、くまなく観察しはじめる。
キンメは不安そうだが、ここにいるメンバー全員運動神経は悪くない。むしろいいほうだ。
よほどのことがない限り、ジャンプでしくじるなどまずありえねぇ。
だから心配のカケラも無用のはずだが……
なぜだか、いい予感がしねぇぞ?
胸中に不安が
(ログインが必要です)