第85話 窮地
文字数 1,535文字
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落下していくヨウを見つめながら、俺は無我夢中で叫ぶ。
ガラス片の散りばめられた床は、仲間の命を奪おうとするかのように急激な速さでヨウの体を吸い寄せていた。
ドサッ――!
突如、響く落下音。胸を掻きむしるように広がっていく。
無事を祈りつつ、俺はヨウの様子を見るため金属板から身を乗りだそうとする。
すると――
そのわずかな隙を狙って、トウとリャクが背後から襲いかかってきた。
トウはジャンピングアタックをくり出し、リャクは猫パンチを放つ。
振り返った俺の視界に、それぞれの攻撃が猛スピードで迫り来る。
俺は即座に地を蹴り、軽やかに跳んでかわす。
むろん避けるだけじゃなく、反撃の一手も忘れない。
近づいてこられると邪魔なので、
敵どもが怯んだところで、おれはふたたびヨウのほうへと向き直った。
すでにヨウの体は床に叩きつけられている。
ヨウの姿勢は、力尽きた猫のように横向きだった。
弱々しいその姿になおさら不安を駆り立てられる。
俺の願いに応えるように、ヨウのかすれた声を絞り出した。
ヨウはフラフラしながらも、立ち上がろうと前足を立てる。
遠目なのではっきりしないが、ヨウの体の下に黒っぽいものが見える。
ヨウが細い管から転げ落ちたとき、たまたまその猫がいた場所に落下したらしい。
気絶していた猫が下敷きになってくれたおかげで、ヨウはガラス片の被害を受けずに済んだ、というわけだ。
紅は次なるターゲット、ミミに襲いかかる。
俺は拳を突き出しながら跳躍し、細い管の上に飛び移る。
足場は狭く不安定だが、ビビッてられねぇ。
猛ダッシュでパイプの上を駆け抜け、ミミと紅のあいだに躍り出る。
シュタ!
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俺を威嚇し、牙を剥きだす紅。
いつ相手が跳びかかってきてもおかしくねぇ状態だ。
ミミはインテリのほうへ駆けていく。
俺は正面にいる紅と睨み合う。
後ろを向いていないのでハッキリしたことはわからないが、ミミは途中でリャクに出くわしたらしく、言い合いが始まった。
リャクは威嚇とともにミミに跳びかかった。
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