第116話 アドレニャリン

文字数 1,151文字





 ミミ&ヨウとリャクの戦闘が始まったと同時に――



 インテリは、トウとのバトルを繰り広げていた。







うおぉぉぉぉぉっ!

ぶっとばしてやるぅぅぅぅぅ!




 むき出しの闘争本能。



 狂暴な血がたぎってるのが透けて見えるようだぜ。



 トウは近くの箱に跳び乗ると、ジャンピングアタックを仕掛けた。



ヒョォォォォォオオッ!




 片腕を突き出し、インテリの胸倉へと跳び込んでいく。



インテリ、よけろっ!



はっ!




 インテリはトウの勢いに圧倒されたりはしない。



 手慣れた様子で後ろに跳躍し、攻撃を回避する。



さすがインテリ。

危なげな様子もなく、冷静に立ち回ってるな




 インテリの挙動は、マタタビ摂取前のトウと対峙していたときとあまり変わらない。



 軽やかに着地すると、トウを挑発する。



その程度か。

所詮マタタビの力を借りて暴走しているだけにすぎないな



ククク!

マジでそう思ってんのか?

だったら一発殴ってみろよ!



ならば、一撃喰らわせてみせよう




 インテリは床を蹴り、反撃に乗り出す。



ハァーーーッ!




 拳を振り上げ、トウのもとに迫っていく。



 インテリの猫パンチは切れ味が鋭い――そう周りの猫から一目置かれる拳が、トウの顔に襲いかかった。




 バシィィィィッ!




コバエがぁぁぁぁぁぁぁっ!




 大声で吠えるトウ。



 拳を喰らっても、なお平然としている。



ワタシの一撃をコバエだと……!?



そーだそーだ!

テメェのパンチなんざ、おれにとっちゃコバエがぶつかってきたレベルだぜぇ!



くっ……!



ヒャーッハッハッ!

おれを倒すには、威力が足りねぇんだよっ!




 トウは自分に酔いしれるように笑みをこぼす。



んなわけねぇ。

インテリのパンチはそれなりに威力があったはずだ!


単純に、トウとリャク(テメェら)がしぶとすぎるだけだろ




 かといって、トウがやせ我慢しているようにも見えない。



 インテリの拳を受ける直前で少し身を反らし、直撃を避けているのは間違いねぇが、顔面に一発浴びたのは事実だ。



痛みの感じ方がバグッてやがるぜ……!



フッ、これぞトウとリャクの最大の特徴。

偉大なるマタタビの効能の前では、生半可な攻撃など無に等しい!



つまりそこそこのダメージなら、マタタビの興奮のほうが上回るってことかよ?



そうだ!

痛みなど取るに足らん!



マジかっ……!?



我々生きとし生けるものは、興奮状態になるとアドレニャリン(・・・・・・・)を放出する


アドレニャリンは、痛みを感じにくくさせる効果があるのだ!



……


それを言うなら、アドレナリンだろ



なっ……!








アドレナリンなら別に、マタタビを摂取しなくても出るっすよ




 突然横の物陰からひょっこりと、ジロリ組の副ボス・テンダが現れた。



うおっ、テンダか!

オメェ、いままで何してたんだ!?



ちょっと隅っこで寝てました



寝てたっておまえ……





 呆気(あっけ)に取られて、俺は一瞬言葉を失った。






































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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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