第18話 重大な掟……?

文字数 1,711文字





 俺の発言に従って、猫たちは新入りの妹さがしを手伝う組と、手伝いたくない組に分かれた。



 そいつらの正面に立って、俺は左右に(たたず)む猫たちを見比べる。



どいつもこいつもぬけぬけしてるっつーか、空気を読まねぇっつーか、いやはやなんとも……







 結果はマウティス筆頭の手伝いたくない組の圧勝だった。



 新入りを除いて、マウティスを嫌っているミミだけが、手伝いを主張するインテリの傘下に加わっている。



なるほどな。

オメェらの考えはわかったよ




 俺の激怒モードが鎮静化したとみるや、勝利を誇示するように高笑いを響かせるマウティス。



にゃはははは! 

カリスマの違いにゃね



勘違いも(はなは)だしいですよ、マウティス。

これはカリスマの差などではありません!



そうよぉ。

マウティスにカリスマがあるなら、アタシにはもっとカリスマがあるってことだもの


ダダ()れするカリスマで、息もできないくらいのね♡




 ミミはインテリのそばへすり寄り、その耳元にフゥーと息をかけた。



ギョッ……!




 それを受けたインテリはたちまち狼狽(ろうばい)し、背中からシッポにかけての毛をゾワッと逆立てる。



ギョッてなによ。

失礼しちゃうわねぇ!



失礼なのはどっちですか! 

私には、奥さんがいるのですよ!



せやで、ミミ。

インテリが愛妻家なことくらい知っとるやろ



あら、いいじゃない別に。

猫の恋愛は自由なんだから



そうにゃね。

泥沼の不倫ネタなら歓迎にゃよ



ふたりとも気が合うじゃねぇか。

普段は嫌いあってるくせによ



気なんて合わないわよぉ。

アタシはマウティスと同意見になるのが嫌だったからこっちに来たんだもの



にゃら、新入りの妹さがしを手伝いたいわけじゃないにゃね?



まぁそうだけど、こっちのグループに来たからには協力するつもりよ



あ、あのぅ……



なんだ、新入り?



そ、そんなにみなさんが手伝いたくないなら、い、妹さがしはボクひとりで続けるので……



そうイジけるなって、新入り。

ひとりでさがして見つかるほど、捜索ってやつは楽じゃねぇんだぜ



ですよね……



で、実際どーなんだよ。

オメェら、そんなに迷子さがしが面倒なのか?



ワタシハ面倒だとは思ってマセンヨ



ほな、なんでワイの隣におるん?



捜索すると、自慢のコートが汚れてしまいそうだからデス



なんだよ、毛が気がかりなだけかよ



ハイ。

町中をチョット調べるくらいならイイデスガ、草むらや川べりなどは遠慮したいデス



ワガママねぇ



Oh,No! 

飼い主思いだと言ってクダサイ


汚れて帰ると、ワタシのご主人がタイヘンな思いをシマス。

お風呂に入れて、毛を乾かすのは、とても手間なのデス



せやったら外に出なければええやん



Oops(ウップス)

……辛辣デスネ



そーゆうキンメも脱走猫だろ



アッヒャ!

イタイとこ突かれてもうた!


けど、それを言うならミミもやん!



アタシは毛が長くないし、日頃から気をつけてるから外を出歩いたくらいじゃ汚れないわよぉ



フフン♪

利便性で短毛種(たんもうしゅ)を上回るものはないにゃ



長毛種(ちょうもうしゅ)だってイイトコロはいっぱいアリマスヨ。

なんといっても、見た目がゴージャスですカラ



自分で言うなや



あ、あのぉ……



なんだ?



や、やっぱりボクひとりで妹さがしに出かけようと思うんですけど……みなさんは雑談に忙しいようなので……


……日が暮れると、捜索しづらくなっちゃうし……



だから諦めるなって。

この問題は、俺がどうにかしてやる



どうにかって……


こ、こんなにあからさまに結果は出ているのに……、

いくらボスでも……みんなを協力させることなんて、できるわけが……



ハッ、俺のチカラをナメるなよ!



ま、まさか……!

殴り合いで決着を!?



バカ野郎! 

暴力なんぞふるわなくても俺には〝集会の掟〟がある



掟……?




 俺は姿勢を正し、居並ぶ者達に向かって堂々と宣言した。



ボスに不可能はねぇ!


オメェら! 

このネコの集会の重大な掟を思い出してみろ!




 威勢に打たれたかのように、猫たちは息を呑む。



 その中でキンメが金色の瞳をハッと見開き、開口一番、驚愕を声にのせて響かせた。



アアアアアッ!

もしかして――!?



思い出したようだな、キンメ。

この集会に定められた重大な掟を――



アカン!

ワイは選択を誤った……!





















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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