第2話 集会の掟と仲間たち

文字数 1,563文字




 春うらら。



 草木の茂る緑の空き地に、色とりどりの猫たちが勢ぞろいしている。



 ネコの集会の始まりだ。



みんな集まったみてぇだな。

そろそろ顔出すか!




 木の枝からこっそり様子を見ていた俺は、勢いをつけて宙に跳び込んだ。



 緑の大地へ、体は真っ逆さまに落ちていく。



 10メートル離れていようが、それ以上だろうが俺にゃ関係ねぇ。



 肉球をピタッと地表につけて颯爽と降り立った。



 まるで空気を裂くような切れ味抜群の身のこなし。



……って、自分で言うのも虚しいけどよ




 俺は居並ぶメンツに近づきつつ、その顔ぶれをチェックした。



 猫たちは掟に(のっと)って、黙りこくったままでいる。

 


おう、おまえら!

調子はどうだ?




 最初に話しかけるのは、ボス猫である俺だ。



 代々続いてきた〝集会の掟〟で決まっている。






 なんでこんなルールがあるかって?



 猫は嫉妬深い生き物だから、順序を決めておかないとモメる原因になるからだ。



 アイツばっかりボスに話しかけててズルいとか、下っ端のくせに出しゃばりすぎだ、とかな。



 だからボスの呼びかけに応えられるのは、ボスに話しかけられた者のみ。



 ルールに従い沈黙していた猫のうち、先頭に立つふたりが俺の呼びかけに答えた。



ボス。ごきげんよう



うにゃ、元気にゃも




 返事をしたのは、ジロリ組の実力者のインテリと、マウティス。







 インテリは飼い主の老夫婦が死亡し、その後引き取り先が見つからずに野良猫になった。



 当時飼い主だった爺さんが名の知れた有識者で、その影響を受けてインテリになったのだという。



 本名は〝あずきちゃん〟というが、インテリはその名を恥ずかしがって表に出すことはめったにない。






 マウティスは、元ボス猫だった亡き先代の子だ。



 メス猫じゃなかったら、おそらく俺に代わってボスになっていただろう。



 めちゃくちゃしたたかなヤツで、ジロリ町の縄張りを広げたのはこのメス猫の手腕ともいわれている。



 だが下っ端の猫たちを頻繁にパシるため、ウケは悪い。







ふたりとも相変わらず元気そうだな



ええ、元気です。

健康に問題などありませんよ


毎日欠かさず運動して、基礎体力向上に取り組んでいますから



インテリ、オメェはいつも真面目だな


一週間前も、一か月前も、一年前でも、同じ答えを返されてる気がするぜ



運動は嫌いにゃ。

ずっと寝転んでいたいにゃ



ハイハイ、いつもの自堕落(じだらく)発言ごくろーさん



ウチだけ扱いが雑にゃも



オメェのそーゆうだらしのねぇところ、わりと嫌いじゃねぇけどよ


あんまりダラダラしてると、下っ端にも示しがつかねぇぞ



ふにゃん



ずっと寝転んでいたら、ブクブク太って動きが鈍くなりますよ



少しくらい太っても平気にゃ。

ウチは賢いだけじゃなく、運動も得意にゃも!



フッ、それは油断しすぎというもの


精進(しょうじん)しないと、得意が不得意になる日がいつか来ますよ



来にゃいも!



オメェらはいつも言い合ってばかりだな。

ちっとは仲良くしとけって



見せかけだけの友情は、いらないにゃ!



孤独を愛するのが、猫の宿命なのです!



はぁ……。

折り合う気ゼロだな




 ってかなんだよ、その格言みたいな変なセリフ。

 


 こんなところで教訓めいたこと言ったって、誰もマトモに聞かねぇぞ。



ま、インテリとマウティスへの挨拶はもういいだろ




 俺は空気を払うように黒いシッポを振って、他の猫たちへ向き直る。



 視線の先にいるのは、野良猫よりも小ぎれいな猫たちだった。




こんにちはー! 

結構猫だらけ、マジ猫だらけのねこねこワールドへようこそ!


私は皆様へ猫に関するマメ知識と、作者の気持ちをお伝えするアイ・キャットでーす!


登場する猫の情報は、『登場人物』から確認できます。

キャラクター情報を知りたいときや忘れてしまったときはご活用くださいね


それでは今後もたくさんの猫さんたちが登場するので、ぜひお楽しみに☆










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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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