第2話 集会の掟と仲間たち
文字数 1,563文字
春うらら。
草木の茂る緑の空き地に、色とりどりの猫たちが勢ぞろいしている。
ネコの集会の始まりだ。
木の枝からこっそり様子を見ていた俺は、勢いをつけて宙に跳び込んだ。
緑の大地へ、体は真っ逆さまに落ちていく。
10メートル離れていようが、それ以上だろうが俺にゃ関係ねぇ。
肉球をピタッと地表につけて颯爽と降り立った。
まるで空気を裂くような切れ味抜群の身のこなし。
俺は居並ぶメンツに近づきつつ、その顔ぶれをチェックした。
猫たちは掟に
最初に話しかけるのは、ボス猫である俺だ。
代々続いてきた〝集会の掟〟で決まっている。
なんでこんなルールがあるかって?
猫は嫉妬深い生き物だから、順序を決めておかないとモメる原因になるからだ。
アイツばっかりボスに話しかけててズルいとか、下っ端のくせに出しゃばりすぎだ、とかな。
だからボスの呼びかけに応えられるのは、ボスに話しかけられた者のみ。
ルールに従い沈黙していた猫のうち、先頭に立つふたりが俺の呼びかけに答えた。
返事をしたのは、ジロリ組の実力者のインテリと、マウティス。
インテリは飼い主の老夫婦が死亡し、その後引き取り先が見つからずに野良猫になった。
当時飼い主だった爺さんが名の知れた有識者で、その影響を受けてインテリになったのだという。
本名は〝あずきちゃん〟というが、インテリはその名を恥ずかしがって表に出すことはめったにない。
マウティスは、元ボス猫だった亡き先代の子だ。
メス猫じゃなかったら、おそらく俺に代わってボスになっていただろう。
めちゃくちゃしたたかなヤツで、ジロリ町の縄張りを広げたのはこのメス猫の手腕ともいわれている。
だが下っ端の猫たちを頻繁にパシるため、ウケは悪い。
ってかなんだよ、その格言みたいな変なセリフ。
こんなところで教訓めいたこと言ったって、誰もマトモに聞かねぇぞ。
俺は空気を払うように黒いシッポを振って、他の猫たちへ向き直る。
視線の先にいるのは、野良猫よりも小ぎれいな猫たちだった。
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