第138話 苦戦
文字数 1,401文字
一心不乱にトウはインテリめがけて突っ込んでいく。
マタタビ摂取で狂暴化したトウとリャクは非常に厄介だ。
助太刀したいが、俺は紅を抑えなきゃならねぇ。
放たれる猪突の拳。
軽やかにバックステップ。
余裕すら感じさせる動きを見せつつ、インテリはさらりと攻撃をかわす。
インテリは警戒しつつ、トウとのあいだに一定の距離をとる。
案の定、トウは休む間もなく間合いを詰めてきた。
インテリの喉元に邪悪な牙が迫る。
インテリは息をはき出し、体を横に
足にグッと力を込め、バランスを取りながら重心を斜めに反らす。
頭から尾にかけて不自然なほど傾いているが、不安定さはない。
前足と後ろ足、それぞれ一本だけで、きちんと体を支えている。
トウの攻撃は不発に終わった。
インテリの首を狙ったはずが、何もいない空気を相手に、むき出した牙と牙をガチッとぶつける。
言い返してバックステップするインテリ。
しかし突然なにを思ったか、金属板の上にバタッと倒れる。
すぐに起き上がるのかと思ったが、インテリは前足でトウの体を挟み込んだ。
インテリはトウの足を狙って猫キックをくり出す。
リズミカルな調子を保ちつつも高速で放たれる足攻撃。
勢いは激しく、毛の塊がいくつも飛び散る。
ちなみに俺はマタタビを摂取しても、すぐ酔いが醒めちまって、さほど効果が持続しないタイプだ。
全然酔わないヤツもいれば、どっぷりハマるヤツもいる。
こればっかりは個体差があるからなんとも言えねぇ。
トウは自らインテリの横にバタンと倒れると、同じ技を披露した。
あまたの人間の生傷を量産するという猫必殺の足技が、インテリに襲いかかる。
インテリの体に襲いかかる衝撃の数々。
体の何か所かトウの足技を受けはしたが、幸いダメージは軽そうだ。
インテリは体を起こしてトウから離れようとした。
が――
トウは起き上がるとほぼ同時にジャンプする。
高い飛距離を生み出す、カエルのような跳躍。
箱の上に跳び乗ると、さっそく拳を突き出し身構えた。
おもわずツッコミが口からとび出ちまった。
コイツはさっきから何度もジャンプ攻撃をしてきやがる。
どうやら高い場所から仕掛けるのが好きらしい。
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