第138話 苦戦

文字数 1,401文字




 一心不乱にトウはインテリめがけて突っ込んでいく。





 マタタビ摂取で狂暴化したトウとリャクは非常に厄介だ。



 助太刀したいが、俺は紅を抑えなきゃならねぇ。



インテリとミミとヨウには、自分たちの力で切り抜けてもらうしかねぇか……




 インテリは向かってくる敵に対し、重心を低くして防御の構えをとった。



このイノシシめっ!



トゥオオオリャアアッ!




 放たれる猪突の拳。



喰らうかっ!




 軽やかにバックステップ。



 余裕すら感じさせる動きを見せつつ、インテリはさらりと攻撃をかわす。



インテリ! 敵はいまマタタビで疲れ知らずだ!

油断するなよ!



御意!




 インテリは警戒しつつ、トウとのあいだに一定の距離をとる。



 案の定、トウは休む間もなく間合いを詰めてきた。



その白い首を真っ赤に染めてやるぜぇ~!




 インテリの喉元に邪悪な牙が迫る。



フッ――!




 インテリは息をはき出し、体を横に(かたむ)ける。



 足にグッと力を込め、バランスを取りながら重心を斜めに反らす。



さすがのバランス感覚だな!




 頭から尾にかけて不自然なほど傾いているが、不安定さはない。



 前足と後ろ足、それぞれ一本だけで、きちんと体を支えている。






 トウの攻撃は不発に終わった。



 インテリの首を狙ったはずが、何もいない空気を相手に、むき出した牙と牙をガチッとぶつける。



ケッ!



おまえの攻撃には勢いはあっても、スピードが足りない



うるせーっ、調子に乗るな!

所詮守り一辺倒(いっぺんとう)じゃ、いずれくたばるのがオチだぞ!



攻撃バカに心配されるいわれはない!




 言い返してバックステップするインテリ。



 しかし突然なにを思ったか、金属板の上にバタッと倒れる。



アッ――!?




 すぐに起き上がるのかと思ったが、インテリは前足でトウの体を挟み込んだ。



猫キックの連打を浴びるがいいっ!




 インテリはトウの足を狙って猫キックをくり出す。



 リズミカルな調子を保ちつつも高速で放たれる足攻撃。



 勢いは激しく、毛の塊がいくつも飛び散る。



そんなもん、痛くもねえよっ!



しぶといヤツめ!



痛くねぇわけねーだろ!

強がってんじゃねぇよ!



強がりなんかじゃねーよ。

マタタビで興奮してるおかげで、たいして痛く感じねーんだ



小枝をちょっとかじっただけなのに、マタタビの効果出すぎだろ




 ちなみに俺はマタタビを摂取しても、すぐ酔いが醒めちまって、さほど効果が持続しないタイプだ。



 全然酔わないヤツもいれば、どっぷりハマるヤツもいる。



 こればっかりは個体差があるからなんとも言えねぇ。



んじゃー、おれからもいっくぜー!




 トウは自らインテリの横にバタンと倒れると、同じ技を披露した。



 あまたの人間の生傷を量産するという猫必殺の足技が、インテリに襲いかかる。



トゥ~リャリャリャリャリャアッ!



汚い足を顔に近づけるなぁ!




 インテリの体に襲いかかる衝撃の数々。



ぐっ……!




 体の何か所かトウの足技を受けはしたが、幸いダメージは軽そうだ。



 インテリは体を起こしてトウから離れようとした。



 が――



逃げられると思うなよっ!




 トウは起き上がるとほぼ同時にジャンプする。



 高い飛距離を生み出す、カエルのような跳躍。



 箱の上に跳び乗ると、さっそく拳を突き出し身構えた。



喰らえーっ!

必殺のジャンプアターック!



またソレかよっ!




 おもわずツッコミが口からとび出ちまった。



 コイツはさっきから何度もジャンプ攻撃をしてきやがる。



 どうやら高い場所から仕掛けるのが好きらしい。





























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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