第147話 仲間のピンチ③

文字数 1,776文字





 インテリの次に狙われたのは、ミミだ。



 (くれない)はミミを倒そうと金属板の上を駆け出していく。







クソッ!

このままじゃミミが危ねぇ……!




 ミミは身に迫る脅威を感じ取っていた。



 近くにいるヨウを気遣って、逃げるよう(うなが)す。



ヨウ!

アンタは離れてな!



でも……



いいから早く!



ラ、ラジャー!




 戸惑いながら、ヨウは敵と反対の方向へ逃げていく。



 ミミはそれを途中まで見送ると、



そう易々(やすやす)と後ろを取らせはしないよ!




 すばやく壁を背にして身構える。



なるほど。

死角を作らない作戦か


しかし背後は安全でも、左右にいるふたりの敵を相手にするのは容易ではないぞ



くっくっくっ。

今度こそ覚悟しな!




 右はリャク。左は紅。



 いかにマジギレモードのミミが強いとはいえ……



リャクだけならまだしも、紅を相手をするのはかなり厳しいぞ……!




 先に動いたのは、紅だった。



 ひと蹴りで宙を飛ぶように移動し、ミミへと肉薄する。



牙の餌食(えじき)にしてくれるーっ!




 紅の牙がミミの首めがけて一直線に迫っていく。



二度も噛みつかれるのはゴメンだねっ!




 ミミは即座に上体をグイッと反らした。



おのれ! よけるかっ!



さすがミミ!

相手が格上でも、慌てず冷静に対処してる




 さらにミミは、反撃をくり出した。



今度はアタシからいくよっ!




 ミミは風を起こす勢いで片手を(ひらめ)かせる。






 相手が紅でなければ、必殺の平手打ちは見事にキマッていたに違いない。



 だが、攻撃はくうを切った。



おれのスピードは、貴様の攻撃のさらに上をゆくのだ!



なによ、エラソーに!

たまたま調子がよかっただけでしょ!




 すると、紅の反対側からリャクがミミへと急接近した。



くたばっちまいな!




 リャクは気負いこんで、拳に力を込めて放つ。



ウリャアァァァァァ!



うっとうしいんだよっ!

このクソ猫がっ!




 ミミはその拳を手ではじき返す。



クソッ!




 攻撃をはねのけられ、不快げに表情を歪めるリャク。



お粗末だね!




 ミミは仁王立ちの姿勢で相手を見下ろし、リャクに噛みついてやろうと身を乗り出した。



 そこへ――



 紅がダッと躍動して仕掛ける。



我が力の前にひれ伏すがいい!




 放たれた拳。



 ミミの頭部をめがけて、紅の猫パンチが襲いかかる!







 パンチ、パンチ、ひたすらパンチ!



アイタタタタ!

ポカスカ殴るんじゃないよっ!




 次々に浴びせられるパンチの連打に回避が追いつかず、ミミは不満げに声を荒げる。



ついでにシッポで撫でてやろう!




 紅はサッと身をひるがえした。



 すると赤い尾がふわっと舞って、ミミの顔面を覆い尽くす。



ちょ――!?



へへ、よけられるもんならよけてみな!




 ミミの視界が(さえぎ)られたのをいいことに、リャクが横から急接近した。



 体当たりでミミを倒そうと、体をドンッとぶつける。



 しかし相手はミミだ。一筋縄ではいかない。



フンッ!




 ミミは気合を発するとともに、得意の仁王立ちでリャクの体を受け止めた。



その程度の体当たりじゃアタシは倒せないよ!




 気張きばってこらえるミミ。



 だが――



貴様の耐久力もこれまでだ!




 紅は手を突き出して、ミミの片足をつついた。



 ミミの体が安定性を失ってグラリと傾く。



んなっ!?



ミミ!




 さすがに二足立ち状態から足元を崩されると、姿勢のキープは不可能だ。



 ミミはその場にコテンと横転した。



チャーンス!




 すかさずリャクが跳びつく。



 大口を開け、ミミが麗しいと自称するその三毛柄の毛に牙を立てた。



やめてぇぇぇっ!

汚い口で噛みつかないで~~~っっっ!




 ミミはリャクに噛みつき返そうと牙をく。



 けれども、リャクもなかなか俊敏だ。



 すでにそそくさと後ろに退()いて、その場を離れていく。



やり逃げするなんて汚いわよぉ!



ヒャハー! 

やられるほうが悪いんだよっ!




 リャクはミミと一定の距離をとりながらも、応戦する気満々だ。



 隙あらばミミに襲いかかろうと狙っている。



 いっぽうミミは、傍目(はため)にはわかりづらいが満身創痍(まんしんそうい)だ。



 これ以上負傷が募れば、戦い続けること自体難しくなるだろう。



ふたりの勝敗はついちゃいねーが、ミミが窮地に追い込まれてるのは明らかだな



フッ、我がねこねこファイアー組の勝利は目前だ!




 ミミとリャクがやり合っているあいだに、紅はヨウのあとを追っている。



今度はヨウがピンチかよっ……!




























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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