第154話 手遅れ
文字数 1,274文字
紅の気が逸れているうちにヨウが逃げる予定だったが――
気づかれちまったんじゃどうしようもねぇ。
ヨウは戸惑いながらも宙に跳び上がった。
長毛の体が細いパイプから平べったい鉄工へと流れるように移動していく。
ヨウは渡り切ってひと息つくと、さらに斜め下へとジャンプした。
ヨウが跳び込んだ先は、ガラクタの山だった。
その頂上には、テンダと偵察猫がいる。
シュタ!
ヨウは両手足を地につけ、無事に着地した。
興奮をしずめようと体の毛を軽く舐めはじめる。
紅はイラ立たしげにヨウを睨みつけた。
だが、あとを追いはしなかった。
すでに紅の背後をとるかたちで、俺が細いパイプの上に立っているからだ。
早々と移動を済ませた俺を見て、紅の瞳がわずかに揺らぐ。
もちろん何度も狭い場所を行き来して、移動に慣れた要因も大きいが。
とにかく筋肉のこわばりが治まって、自由に動けるようになった。これでやっと思う存分戦える。
紅はそんな俺を
怒りの
渦巻く感情を声に出して解き放つ。
怒りの荒波が逆巻くようにうねりを上げ、廃工場を揺るがす勢いで
怒りの叫びが場を圧する。
まるで悪魔の叫びとも恐れられる俺の
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