第155話 本気の力

文字数 1,318文字





 紅を除くねこねこファイアー組のヤツらは、俺の気迫に圧倒されて息を()んでいる。



……



……



……


……



……



俺の本気の力、見せてやるぜ!








 すると紅ただひとりが、沈黙を打ち破って(うな)り声を発した。



たわけたことを!

そのようなことができるものか!


貴様など、ひと噛みで葬り去ってくれるわっ!



いいぜ。

そう思うなら、かかって来いよ



喰らえーーー!




 有言実行を形にしようと猛々(たけだけ)しく迫ってくる紅。



 スピードも申し分ない。マタタビ効果が薄れているにしても、その勢いに陰りはないように見える。



 だが――




 〝俺の敵じゃない〟



ぬるいぜ!




 俺は片手を突き出す。



 拳を疾風のごとく打ち出し、紅のアゴの下を突いた。



がはっ!




 アゴをグイッと押し上げられ、紅は弓なりに体を()け反らせる。



 顔を上向きに反らされている以上、噛みつきようがない。



 俺を突き刺すはずだった紅の牙は、半開きの口の中で手持ち無沙汰(ぶさた)の状態だ。



これでテメェの牙攻撃は封じられた!



バカなっ!?




 紅は後ろへ退()きながら、かすれ声で(うめ)く。



……マジか!?

親分の攻撃を止めやがった……!



よけるならまだしも、止めるなんてありえねぇ……!



ありえなくはない。

本気モードのボスは、能力が飛躍的に上昇するのだ



能力が上昇……!?

では、いままでと比較にならない強さを得たということですか?



そやな。

元々親分さんはめっちゃ強いけど、いまはごっついパワフルや!



なんで急に強くなったの……?



ボスは度々激しい怒りを感じると、野生の血が(たぎ)って暴走する


それにより本来眠っていた力が覚醒(かくせい)し、能力が格段引き上がるというわけさ



覚醒だなんて……



まるでゲームみたいな話やろ?


せやけど猫って未知な生きモンやし、人にはわからん不思議なチカラがあんねんで



だが、いかにボスでも、激しく(たか)ぶる野生の血を制御するのは難しい


それゆえに覚醒中は、誰にでも見境なく攻撃的になってしまうのだ



敵も味方もフルボッコ、ニャウ?



怒りが(しず)まるまでは近づかないほうがいい


もとよりボスが悪魔と恐れられる所以(ゆえん)は、常軌(じょうき)(いっ)した獰猛(どうもう)さにあるのだから――



んなやべぇヤツだったとは……



ヤツにケンカを売ったのは、間違いだったか……



貴様らは悪行の数々をおかした。

ボスを本気にさせた恐ろしさに震えるがいい!



そうよぉ。

いままで好き勝手暴れた罰とおもって受けなさぁい


本気のボスにしてみればアンタたちを仕留めるのなんて、トイレで砂かけて埋めるより造作もないことなんだからねぇ!



トイレで埋めるより楽だとぉ!?



ナメ腐りやがってぇ!



いくらアイツが強いからって、ふたりがかりで攻めりゃさすがに勝てるに決まってる!




 トウは身構えると、リャクに呼びかけた。



行くぞ、リャク!



おう!




 トウとリャクは、ふたりがかりで俺のもとに跳びかかってくる。



 左右から挟み撃ちにすれば勝てると思ったらしい。



あめぇーな。

ザコの発想だ




 イキがっているザコにはお(きゅう)()えてやらなきゃならねぇ。



 俺は獲物を仕留めるため、体の向きを反転させた。






















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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