第159話 白熱の戦い②

文字数 1,113文字





 口に入れるのが食べ物なら歓迎だが、猫のシッポはありがたくもなんともねぇ。







 俺は紅のシッポを吐き出す。



ペッ!

毛の味しかしねぇ!


とにかく、これでテメェのフェイント攻撃も封じてやったぜ!



まさかシッポを食べようとしてくるとは……。

(いや)しいヤツめ!



邪魔だからくわえただけだ。

つーかテメェのほうこそ、汚ねぇシッポを顔に(かぶ)せてくるなよ



貴様、盲目か!

おれのシッポは常に清潔が保たれているぞ!



ハッ!

そーゆうヤツが一番汚ねぇんだよっ!




 言い争っていても無駄なので、俺は拳をくり出し攻撃を仕掛ける。



オラァ!



フンッ!




 紅は横に跳んで攻撃をかわそうとする。



甘めぇーな




 俺は最初のパンチをゆるめに出した。



 そうすれば紅はよけることに気を取られ、わずかに隙が生じると思ったからだ。



 並の猫が相手なら、紅は回避に集中せず応戦もできただろう。



 だが、俺は自他共に認める最強の猫――



 本気モードのいまなら、左がかわされても、反対側の右手を雷のような速さで打ち出すことができる。



逃がさねぇぞ!




 バシィッ!



 俺の拳が紅の前足を鋭く打った。



うっ……!




 紅はよろけながらも、ほとんどスピードを落とさずに後ろへ下がる。



これが……最強と謳われるジロリ組プルートの力というわけか




 紅はダメージを受けたせいか、体にまとう闘気が弱まってきているようだ。



 だが、戦意が薄れた様子はない。



そうだ。

俺のパンチは右手だろうが左手だろうが、威力が衰えねぇんだぜ!



フンッ、両利き自慢などどうでもいい!


家族に手を出さないと貴様が誓うまで、おれは決して戦いをやめはせんぞ!



だったら両手を駆使してテメェをボコボコになるまで殴りつけてやる!


両手使いの俺がくり出す、猫パンチラッシュを受けてみろ!


ドオォォォォォォオォッォオォッ!








ぐあああああああああっ!




 紅は応戦しようとしたが、俺の攻撃が速すぎて間に合わなかった。



 怒涛の猫パンチが火花のように紅の身に降りかかる。



 まさに爆裂状態だ。右から左から、パンチ、パンチ。パンチの連続。



なんという激しさだ。

予備動作もなしに、超高速の拳を何度も放つとは……!



雷が一瞬ピカッと光るあの閃きにも似とる……!



まさに疾風迅雷といっても過言じゃアリマセンネ!



あんなパンチを顔面に喰らいつづけたら、顔が変形してブサイクになっちゃいそう



はっはっはっ。

時間が経っても治らなかったら悲惨だな



顔面崩壊です……



うるせーっ! 

んなこと気にしてられっか!


俺の拳を受けて、とことんブサイクになっちまえっ!


ドォラァァァッ!



ウアアアアアッ!




 最後に渾身の一撃を浴びせると、紅は勢いに押されてふっ飛んだ。



 場を鮮やかに装飾するように、周囲には赤々とした毛が舞っている……。

























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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