第13話 地域限定の味を舐めつくす

文字数 1,275文字








チュ~ルチュ~ル♪



ニャオ☆チュール~♪



ようやくおやつが食えるから興奮気味だな




 ニャオ☆チュールの残りは充分にある。



 俺がこのペースト状の食い物を前足で押し出そうとすると、まわりに猫たちが群がってきた。



よし、じゃあ順番に食え



ボスは食べなくてよろしいのですか?



俺はここに来る前、ラーメン屋の亭主からたんまりいただいてきたからな。

ハラは減ってねぇ



そうでしたか。

では、ありがたく




 インテリがチュールを食べようとしたときだった。



 強引にマウティスが割り込んでインテリを押しのけ、チュールをペロリと舐め取った。



ンマァーーイにゃ!



おい、マウティス!

割り込むんじゃねぇ!



いいのです、ボス。

卑しいマウティスの割り込み行為は想定済みですから


ひとまずワタシはチュールの配膳係をお手伝いして、食べるのは後回しにします



オメェはホントによくデキたヤツだな



猫界のデキスギ君を目指していますから



なんだそりゃ? 



『ドラえもん』というアニメの登場人物です



あー、あの耳なしロボット猫のやつか!




 どこかに貼ってあったポスターかなんかで見た覚えがある。



 だが俺はインテリと違ってテレビなんぞ観たことねぇから、そっち系の話には疎いんだ。



みんな順番に食べるのですよ




 インテリは俺のとなりでチュールの配膳係になった。



 さっそくキンメが寄ってきて、インテリの手元にあるチュールの袋に鼻を近づける。



ほな兄さん、ありがたくいただきますっ!



ああ、こぼさず食べろよ




 インテリがチュールのペーストを足で踏んで絞り出すと、キンメはそれを舌で器用にすくい取って食べた。



おぉ! こりゃいける!



うにゃ!

いつもと違う味だけど美味にゃ!



マウティス。それ以上がっつくなよ。

食べ物はみんなで分け合うのが決まりなんだからな



そうよぉ、後ろが詰まってるんだから早く譲ってくれない?



ふにゃ。

仕方ないにゃねぇ




 しぶしぶマウティスが後ろへ下がると、入れ替わりでミミが近づいてきた。



 新入りとマウティスに食べさせたら一本目がなくなったので、新たなチュールを出して食べさせてやる。



あらっ、おいし!



デリシャース!




 キンメから交代したヨウもチュールを舐めて満足そうだ。



おまえらも遠慮せずに食え




 集会の掟を意識しながら、下っ端にも同じ量を分け与える。



ボス、おいしーです!



ボス、うまいっす!




 腹を満たして機嫌よさげに喉をゴロゴロ鳴らす下っ端たち。



 素直に喜ぶ姿は見ていて気持ちがいい。



 




 最後にインテリが食べ終わると、持参したチュールはすべてなくなった。



ボス、ありがとうございます。

とても美味でした



気に入ったならなによりだ



ところでこれ、何味なのにゃ?



トビウオ味だ



トビウオ味!?



あぁ、地域限定らしい



海を飛んでるサカナ、おいしーデスネ



あんなもんをチュールに入れるとは……考えたヤツ、ほんまごっついな!



でも味はなかなかだったわよ



さすがはニャオ☆チュール。

これぞ巨匠による(たくみ)の技!


言うなれば、猫界では決して作り出すことのできない、幻のエリクサー!



意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよっ









実在するチャオチュールにトビウオ味はございません。

あしからず
























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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