第122話 正体不明の存在②
文字数 1,238文字
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ヨツバちゃんと
ふたりの向かった川のほうへ近づいていくと、ギョッと息が詰まるような場面に遭遇した。
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想像するだけで体が震えてきてしまう。
ボクは声が不自然に上下するのを感じながら、暗闇に呼びかけた。
誰も答えてくれない……。
こんなときに限って、耳障りだった風もピタリと
冷たい夜の静寂が、意地悪くボクを孤独の世界へ閉じ込めようとしているみたいだ。
もうパニックになりかけて、頭がおかしくなりそうだ。
それでもどうにか状況を打破したい一心で、血のニオイをたどって、恐る恐る先へ歩んでいく。
ふと、その途中に――
座布団みたいな
草の上にあるそれは、どことなく横倒れた猫に見えなくもない。
血の臭気にまじって、猫のニオイを感知する。
駆け寄って、鼻で確かめてみると、
暗闇の中に倒れているのは、熊介さんだった。
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声を張って呼びかけるけれど、返事はない。
よく見ると、熊介さんの首回りは血まみれになっている。
出血は止まっているみたいだけれど、熊介さんはグッタリしている。
助けを呼びたいけれど周りは草木ばかりで、猫も人も、役立ちそうなものは何一つ見当たらない。
さっきまでは平和だったのに、もうわけわかんないよ~!
思考回路がこんがらがって、脳ミソが火を噴いちゃいそうだ。
ボクはパニくりながらも、熊介さんの首回りの毛を舐める。
意識が戻ったのかと思ったけれど、熊介さんは再び沈黙してしまった。
それにしても、どうしてこんなケガをしたんだろう……?
事情はわからないけれど、舐め続けていたら血で汚れた毛は少しキレイになった。
ふいに懐かしい思い出がこみあげる。
少しだけ、張り詰めていた気がゆるんだ。
そのときだった。
ガブッ!
強烈な痛みが首から伝わってくる。
急な不意打ち。
ボクの後ろに誰かがいた。
その正体不明の存在は、何の前触れもなく、ボクの首に噛みついてきたのだった。
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