第156話 本気の力②

文字数 1,158文字





 俺を打ち負かそうと、トウとリャクが両サイドからジャンプ攻撃を仕掛けてきた。



トウリャアアアアア!



ウリャアアアアアア!



叫ぶだけしか能がねぇのか、テメェらはっ!




 俺は仁王立ちのまま両腕をひらいて構える。



 狙いはもちろん左右の的(・・・・)だ。






ゲェェッ!

コイツ、両手使いか!?



マジかよっ!?




 左右に構えた俺の拳を目にして、トウとリャクがハッと息を呑んだ。



 だが、もう遅い。



ハァァァァァァァッ!




 俺は右と左へ勢いをつけて両手を突き出した。



 二つの拳が左右から迫るトウとリャクをドンッと打ち据える――!



ぐふぅ!



ふぐぅ!




 腹を強打する熱い衝撃。



 ふたりはそれぞれ弾かれるようにしてふっ飛ばされていく。



あわわわわっ!



はわわわわっ!




 受け身をとれず、トウとリャクは壁に叩きつけられた。



ってぇ―……!



っつぅー……!




 ふたりとも金属板の上に倒れ込むと、悔しそうに爪を立てる。



そんな……ありえねぇ……!

おれたちは……幹部クラスなのに……!



たった一撃で……やられるなんて……!




 トウとリャクは、(あえ)ぎながら起き上がろうとした。



 けれどもその場に()いつくばったままロクに身動きもできない。





 これまでしぶとく戦ってきたトウとリャクだったが、とうとう意識を保ちきれずに失神した……。



バカなっ!?

トウとリャクを同時に仕留めただと!?



ウソでしょ!?



これが、〝疾風の悪魔〟の本当の力……!



まさに悪夢、ニャウ……!



ククク……。

テメェらにも悪夢を見させてやるぜ!




 俺は両手を構えて宣戦布告する。



 紅はそれを見て焦りをおぼえたように顔をしかめた。



まさか貴様が万能といわれる両手使いだったとはっ……



別に隠してたわけじゃねぇよ。

右手メインで構えるときもあれば、左手で構えるときもあった


ただ本気モードのときじゃねぇと、パワーやスピードを思う存分発揮できなかっただけだ




 俺は体勢を変えて紅のもとにゆっくりと歩み寄る。



テメェのいうように、両利きはまぎれもなく万能だ。

右手でも左手でも相手をブチのめせる


だが俺はこう見えて平和主義でな。

ケンカが強ぇだけで暴力を好むわけじゃねぇ


だからテメェのことは許せなくても、仕留められ方くらいは選ばせてやる



なにっ?



ワンパンか、ボコボコか。

好きなほうを選べ!



ふざけるなっ! 

平和主義の皮をかぶった悪魔め!



それ以上うちの親分さんを怒らせんほうがええで。

飢えた虎にケンカふっかけるようなモンや



もしくは、エンマ大王に中指を立てて地獄に行くようなものです



要は絶対絶命ってことよねぇ



だまれ!


情けなど無用だっ!

おれはそう易々(やすやす)と倒されはせぬ!



……そうか。

んじゃ地獄を見るぞ。

後悔するなよ!




 俺は改めて二足立ちになり攻撃態勢に入る。



 研ぎ澄まされた鉤爪(かぎづめ)が、標的を威嚇するかのように内側から出現した。





















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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