第137話 終わらぬ戦い

文字数 1,321文字



 

 テンダと偵察猫(レコねこ)、ふたりの戦いは終わった。



 だが、まだジロリ組と、ねこねこファイアー組の存続をかけた戦いは終わっていない。







見物の時間は終わりだ!

いつまで傍観(ぼうかん)している、愚か者め!



テメェだって高みの見物決めこんでたじゃねぇか  



フッ、組のボスとして状況を見守るのは当然のこと



なにがボスだ、エラソーにっ




 俺が反論すると、インテリも同意しながらツッコミを入れる。



私がチラリと横目で(うかが)ったとき、瞳がウルッとしていましたよ



うっ……!



あら、もらい泣きしてたの?



わりと涙もろいんデスネ



涙もろくなどない!

勝手なことを言うなっ!



じゃあ、泣いてねぇのかよ?



まぁ、ちょっとは……



泣いたのかよ!



言うなっ!




 ムキになって言い返す(くれない)



 すると、その背後から――



ボクも感動した、ニャウ




 遠慮気味に紅の意見に同意しつつ、子ども猫が金属板の上をてくてくと歩いてきた。



 ねこねこファイアー組のボス・紅の子、イソルダだ。



 姉のメデアと共に、敵対する俺たちにちょくちょく嫌がらせをしてくる。



イソルダ。

しばらく姿が見当たらなかったが、どこに行っていたのだ?



……おしっこ、ニャウ



なんだ、用を足しに行っていたのか



こんなときにトイレって、緊張感なさすぎ



そう言うな。

生理現象はやむを得ないことだ


こんな薄汚れた廃工場でも、そのへんにせずきちんと外のトイレで済ませるのはよいことだぞ



エヘヘ




 父猫に()められて得意げな微笑みを見せるイソルダ。



いやいや、親子会話に勤しんでる場合じゃねぇだろ。

とっととそのガキどもをどうにかしろよ!



うちの子の何が気に入らんというのだ!?



気に入るとか気に入らねぇとか、んなことどーだっていい!

さっきから戦いの邪魔なんだよ!



邪魔、言うな!


そっちも邪魔、ニャウ!



うるせーっ!

俺たちは来たくてこんなところに来たわけじゃねぇんだぞ!








子どもたちを威嚇(いかく)するな!

血の気の多いヤツめ!



だったら下がらせろ!

先にやられたモブ猫どもみてぇになりてーのか!?



もしや貴様、どさくさにまぎれて子どもたちに手を出す気ではあるまいな!



言いがかりはよせよ。

ガキにちょっかいかけるつもりはねぇ!



どーだかなー


信用できない、ニャウ



生意気なガキどもめ!

ここにいたら危ねぇから外に出ろって、親切に言ってやってんだろうがっ




 俺は紅ファミリーを睨みつけた。



 それから視線を、子どもたちの足元に置かれた究極のアイテム(・・・・・・・)へと移す。



 究極のアイテム――マタタビ。



 その小枝だ。



あ~そういうことか。

ガキどもを待機させておくテメェの意図が読めたぜ


ガキどもを置いとくのは、戦闘中マタタビを他の猫に渡せるようにするためだろ?



ム……!



あんなもんはしょせん一過性(いっかせい)だから、いつ効果が切れちまってもおかしくねぇもんな



トゥアアアアアアアアッ!



リャアアアアアアアアッ!




 俺の指摘を打ち消すかのように、トウとリャクは猛々(たけだけ)しく対戦相手のもとへ駆けだしていく。



マタタビの影響で、まだメラメラしてマスネ!



はぁ~、ホントしつこいねぇ!



今度こそ、決着をつけてみせる!




 インテリ、ミミ、ヨウは、それぞれ迎撃態勢をとった。



























ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色