第56話 策謀をめぐらせる猫たち

文字数 1,531文字





 衝撃の事実にゃ。



 まさかモブニャンがジロリ組にまぎれ込むスパイだったとは……。



じつは前々から疑ってはいたんだけど……、

完全に黒だったとはにゃ~




 頭の中でいままでのモブニャンの言動を振り返ってみる。






……黒さしかないにゃね


だけど、もしシロだったら悩ましいからにゃ。

念のため本当に裏切ったかどうか、様子を見て確かめる必要があるにゃも




 ウチが視線をじぃ~っと注ぐ中、モブニャンは(くれない)に少しだけ(こうべ)を垂れて報告を始める。



自分はこれまでジロリ組の様子を探るため、適当に話を合わせていました


そしてついに、ジロリ組のネコの集会で有益な情報を得ましたニャ!



ほぅ



にゃんとジロリ組の連中は、みんなで迷子の猫さがしを開始したのですニャ!



それが有益な情報なのか?



はい!



ムゥ……。

迷子の猫さがしか



え、ナニソレ?


食糧さがしより迷子、ニャウ



迷子になったのは誰なのかしら?



ジロリ組の集会にやって来た新入り猫の妹だそうです。

たしか、一歳未満のキジ白の緑目とかいってましたニャ



その迷子をさがすために組員総出で町を駆けずり回っていると?



そうですニャ!

ボスの決定に従い、ふたり一組のペアに分かれて、いまも町の各地を捜索中ですニャ!



フン、平和なヤツらだ。

食料に難儀してないだけあって、暇を持て余していると見える



親分さ~ん


その迷い猫のことなんすけどね




 ちょうどタイミングを計ったように、別の猫たちが会話に割り込んできた。



あれはトウとリャクにゃね。

このねこねこファイアー組における中堅クラスの猫達にゃ




 にゃんでそこまで知ってるのかって? 



 敵対組織に関する情報はこまめに集めてるからにゃよ。



ボスにゃんには仕事を(なま)けてるって思われてるけどにゃ~




 優れた知恵者は情報収集を欠かさないものなのにゃ。



 ちなみに猫社会の関係は浅く狭くが基本だから、家族や兄弟の縁はすぐ切れるにゃ。



 だから敵組織の家族構成だとかは、いちいち把握してにゃいも。



おまえたちもジロリ組の迷子について何か知っているか?



知ってますとも



じつはですね




 ふたりは崩れかかった骨組みのあいだに体をねじ込んで工場内に入ると、コンクリ床の上をトコトコ歩きながら事情を伝えていく。



その妹はおそらく、先日うちの組の下っ端どもが、ジロリ組の縄張り内でひっかけようとしたメス猫だと思うんすよ



下っ端がそんなことを仕出かしていたのか?



らしいっす



ひどいことするわねぇ



()(がた)いな。

それで、メス猫はそのあとどうなったのだ? 



まんまと逃げられたそうで



そうか……


近頃下っ端たちは、食糧難(しょくりょうなん)でイラついている。

むろん、おれたちとて例外ではない



みんな建設工事のせいですよ。

人間が余計なことをやるから


あー迷惑すぎるー。

町を開発するために工場なんか建てても無駄だってーのに



そうね……。

大規模な建設工事さえなければ獲物が逃げ散ってしまうこともなかったわ


ただでさえ暮らしは楽じゃないのに、このままだと飢え死にしてしまうかも……



そう悲観的にならないで、お母さん


すぐ落ち込むのは体に悪い、ニャウ



そうだぞ、イザベラ。

心配せずとも平気だ


おれたちは生き残るために計画を立てたのだからな



計画ねぇ……


その計画とは何なのにゃ?

具体的に言ってくれていいのにゃよ



ジロリ組の縄張り奪取(だっしゅ)計画、ニャウ!



にゃはは! 

聞かれてるとも知らずにドヤ顔で暴露してくれるとはにゃ


じつに都合がいいにゃも♪



……って、笑ってる場合じゃにゃいね




 つまりねこねこファイアー組は、食糧難を打破するためにジロリ組の縄張りを奪おうと計画しているというわけにゃ。



状況を甘く見積もってるようだけど、ジロリ組にケンカを売って勝てると思ったら大間違いにゃよ!

























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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