第14話 問題をかかえた新入り猫②
文字数 2,033文字
さーて、食いモンもみんなで分けて食ったし、そろそろ集会をおひらきにするか
せやけど、ここじゃあ新入りはただの〝新入り〟と呼ばれんのがルールなんやで
まぁオメェみてーな集会にろくに参加したこともねぇ新入りが驚くのも無理ねぇか
集会ってやつには細々とした〝ルール〟が定められているんだぜ
むろん誰もいない新天地を縄張りにしたらルールなんぞねぇ。
だが、そんな場所はほぼねぇ
猫ってやつはどこにでもいるからな。
たいがいはその土地ごとにボス猫がいる
んで、その縄張りを仕切っていたボスと、ボス候補の猫の仲が良好だった場合は、集会の掟が次のボスに受け継がれていくってワケよ
掟ってやつはある意味、その土地における歴代ボス猫ヒストリーといってもいいだろうな
で、でも……、
ボクたち猫に、ルールなんて……必要なんですか?
たとえば人間に上下関係があるように、うちの組でも古参と新入りは同等ではない
上下なく下々との扱いがすべて同じでは、古参のメンバーが不満をいだいてしまうからね
そーゆうことにゃ。
名前で呼んでほしければ、しばらく集会に参加しつづけることにゃね
たとえば週に一回集会がひらかれるとしたら、最低でも十回は参加してもらわにゃいと
嫌ならよそのシマに行けばええやないか。
ウチのとこより大事にされるとは思えへんけど
ヨウは会話よりも食後の毛づくろいに夢中になっている。
下っ端たちもせっせとグルーミング中だ。
それに比べて新入りは、地面に手足が張りついてるのかっていうくらいの直立不動の状態だった。
どことなく焦りの表情の裏側に、差し迫った感情が垣間見えなくもない。
よほど切羽詰まるような問題でもかかえているんだろうか……?
つ、つまりボクは……、
まだジロリ組の正式なメンバーじゃないってことですか?
ジロリ組は、この〝ジロリ町の縄張りを取り仕切る組〟のことなのだよ。
町にいるすべての猫がジロリ組に属しているわけではないんだ
この町を拠点に暮らす野良猫や、ある程度行動に制限のない飼い猫が、縄張り維持という目的のために自主参加している、それが『ジロリ組』なのだよ
新入りの中には、稀に他の組に情報を流すスパイが潜んでるにゃも
スパイかどうか見極めるためにも、一定期間の参加を条件にしているのにゃ
そうにゃも。ただし元々猫はあんまり辛抱強くなくて気まぐれだからにゃ。
長期間参加っていうと、みんなめんどくさがるのにゃ
だからウチの組に潜入してきたスパイは、たいていすぐに消えていくにゃね
ところでオメェ、下々家の家にいた頃は、まともに外へ出たことなかっただろ?
け、けど近くに住んでいる猫や、たまに聞こえてくる話し声から、この集会のことやボスのことを聞いていたんです……
どうにかなるって、オメェの問題は空腹だけじゃねぇのかよ?
新入りなんてほとんど部外者みたいな立場じゃ、聞き入れてもらえるかどうか……
新入りとはいえ、平等に食いモンを食わしてやったろ?
だったらモジモジしてねえで話せよ。
どのみちオメェにはあとで事情を聞こうと思ってたんだからよ
そ、そうだったんですね……!
てっきり新入りという立場じゃ、きちんと話を聞いてもらえないのかと……
事情を聞いてもらえると知って、新入りはうれしそうに顔を輝かせた。
うっ……!
すみません……!
新入りの分際で言いにくいんですけど……
じつはさっき、ボクは飼い主に捨てられたって話をしました。
でも……捨てられたのは、ボクだけじゃないんです……っ
み、みなさんにはぜひ……、
ボ、ボクと一緒に捨てられた、妹のミネをさがしてほしいんです……!
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