第114話 激闘

文字数 1,389文字




 けたたましい咆哮(ほうこう)とともにトウとリャクが動き出した。



おおおおおおおおおっ!


死ねぇぇぇぇぇぇぇっ!




 トウはインテリへ、



 リャクはミミへ、



 それぞれ敵対する相手のほうに風を切る勢いで突進していく。







やれるもんならやってみな!


 


 ミミは常軌を逸した相手にも臆することはない。



 リャクを迎え撃つべく進路の真正面に立つ。



ミミはいま、究極のマジギレモードで戦闘能力が上がってる。

きっとうまくって戦ってくれるはずだ!




 紅も展開が気になるようで、骨組みの上に(たたず)んだまま戦況を見守っている。



マタタビ接種でパワーアップしたリャクを相手にどう対抗するのか、見ものだな




 ミミは二足立ちになって体にグッと力を込めた。



 重量(ウエイト)を活かした仁王立ちの構えで敵を迎え撃つ。



フンッ!



おおおおおおおおおおおっ!




 リャクはそこへ怯まず突進した。



 マタタビの力を借りて興奮状態になっているから、さぞかし無敵の気分だろう。



 そしてついに――



 ミミとリャク、両者の体が衝突した!







さっきよりパワーがあるじゃないか



へっへっへっ! 

やせ我慢はそれくらいにしておくこった!




 ミミが無理をしているようには見えないが――



 リャクが両手をグイッと突き出すと、ミミの片足が安定を欠いて押され気味になる。



さっさと倒れちまいなっ!



――!




 ミミの体が後ろに傾き、ドッと背中から床に滑り込んだ。



 すかさずその上にリャクがのしかかり、馬乗り状態になる。



形勢逆転だな!

テメェの腹の肉をたっぷり噛んでやんよ!




 リャクは大口を開け、ミミの腹部に噛みつこうとするが……



そこは腹じゃなくパイ・・だからね!

このセクハラ野郎がっ!




 ミミは侮蔑を込めて言い返し、後ろ足を駆使して相手を押し上げた。



 リャクの体を浮かせたところでおもいきり投げ飛ばす。



お、得意技がキマッたな!




 足技の巧みな猫が得意とする、必殺の〝巴投(ともえな)げ〟だ。



 宙に投げだされたリャクの体は、ミミの体を通り越して、頭上付近にバタンと打ちつけられた。



これをキメたくて倒れてやったんだよ!

ざまぁないね!



ククッ!

この程度で調子に乗るなっ!


おれだってこんなもん屁でもねーから喰らってやったんだよ!




 リャクはすぐさま起き上がり、反撃に転じる。



 片腕を振りかぶり、ミミの顔面めがけて猫パンチをくり出す。



うらあああああああっ!




 鋭利な凶器を内に秘めて、鋭い突き攻撃を放つ。



 ミミはそれをよけようとはしない。



大事な顔を傷つけるのは許さないからねーっ!




 ミミも負けじと拳をふるって応戦する。



ぬるいぜっ!




 リャクの拳が閃くと――




 パシッ!




 ぶつかり合う(たが)いの手と手。



なにっ!?




 ミミの片手は、リャクの両手に捕らえられたように挟まっている。



へへっ!

テメェの攻撃を受け止めてやったぜ!



フン! 

まぐれにしちゃ上出来だよっ




 ミミはリャクの手に挟まった拳を力づくで引っ張り出すと、一歩下がって身構えた。



ウフフフフ、そうこなくっちゃね!

相手がやられっぱなしじゃつまらないからねぇ



余裕かましてられるのもいまのうちだぜ!




 リャクが跳躍し、ミミも動く。



 再び双方の体がドンッと激しくぶつかり合う。



Oh~!

激しい戦いナノデス~


って、驚いてる場合じゃナイデスネ。

ワタシも、参戦しなければ……!


 



 ミミとリャクの戦いに、下の小部屋から移動したばかりのヨウが参戦しようとしていた。
























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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