第58話 策謀をめぐらせる猫たち③

文字数 2,104文字




……




 いやー、まいったにゃねぇ。



 偉大で美しくて素晴らしすぎるこのマウティスが、ピンチにゃよ!



 ねこねこファイアー組のアジトに潜入中、敵のボスに気づかれたかもしれないにゃ!




 ピンチ! ピーンチ!




 大ピーンチ!



妙な気配がする……



気のせいにゃ気のせいにゃ!

そんなことより計画をあらいざらいしゃべって、ジロリ組に敗北すればいいのにゃ!



あなた。どうかしたの?



何かが潜んでいるような空気を感じたんだが



あら、そうなの?



おれはなんにも感じねえっすよ



自分もっす



ふむ……



何か潜んでるなら、ネズミみたいな獲物がいいなー


おなかすいた、ニャウ



そうだな。空腹は辛いだろう。

あとで川に魚がいるか見てこよう



魚……!



建設作業の影響で望みは薄いから、あまり期待するなよ



ウニャウ……



ねぇ、あなた。

妙な気配は、まだ気になる?



黙黙……




 バレるにゃバレるにゃ……!



 もしもウチが隠れていると知れたら、いっそ反撃に転じて必殺のパンチをお見舞いしてやるにゃも!



……いや、なんでもない。

気のせいだろう



ふぅ~、見つからずに済んでなによりにゃ


ちなみに、ウチからは下にいる全員の姿が丸わかりだけどにゃ~♪



――話を戻すが、トウとリャクよ


おれはおまえたちの言う、まとめて袋叩きという案は悪くないと思うぞ


おれだってジロリ組の連中を闇の集会に呼び寄せて、一気に仕留められれば話は早いだろうと思っている



そーですか。

まぁー暗闇で暗躍させたら、おれらにかなう者はいねーですからねぇ



ジロリ組のアホどもに、実力の違いを見せてやりましょーぜ



ぐにゅう……!

せっかくジロリ組の情報を掴んで不意を突くよう提案したのに……!



そう不快がるな、モブニャンよ。猫にとってケガは一大事なのだ


ケンカを仕掛けるなら、確実に勝てる場で挑んだほうがいい


そのためにはジロリ組の連中を闇の集会に呼び寄せ一気に仕留める、それが最も有効なのだ。

わかるな?



はい……。

仰せのとおりですニャ



我らの手にかかれば〝最強〟とうたわれるジロリ組のボスといえども敗北は避けられまい


だが……



にゅ?




 ふと何かに困ったように、紅の口調が重くにゃる。



一つ、大きな問題がある


どうやってヤツらを闇の集会におびき寄せるか、だ



あー、どーしますかねぇ



挑発だけで動けば話は早いんですけどねぇ



エサを()くとか?



う~ん……、

ここより食の豊富なジロリ組の猫たちが、そんな手に引っかかるとは思えないわ



愚案ぐあん、ニャウ


具案言うなっ



メデアの言うとおりだぞ。

アイデアを出すことは悪いことではないのだから、いちいちからかうな



姉弟(きょうだい)同士、もっと相手を(うやま)いなさい



失言注意、ニャウ



とにかく、ジロリ組の件に関してはイザベラの言うとおりだろう


連中だってバカじゃない。

それに幹部には、頭脳派のインテリやマウティスもいる



にゃは☆

敵に警戒されるほどの知恵者ってことにゃね♪

悪い気分じゃにゃいも



敵の罠が張り巡らされてると知っていながら、愚かにも近づくような真似はしないだろう



そのとおりにゃねぇ。

君子危うきに近寄らずにゃも



だとすると、う~ん……



どーすりゃいいんですかねー




 そんなに悩まなくても、手立てはいくらでもあるけどにゃ~。



 ま、それに気づけるほど有能な猫がいないのがこの組最大の欠点にゃよね。



 だからねこねこファイアー組は勢いだけって、他方から揶揄やゆされるのにゃよ。



ねぇ、あなた。

こういうのはどうかしら?



なんだ、イザベラ



普通に呼んでも来ないなら、来させるための理由を作ってみたらいいと思うの



理由を……作る?



ええ、そうよ。

ジロリ組の猫たちは行方知れずの猫を捜しているんでしょう?


だったら、その猫をわたしたちねこねこファイアー組が捕まえていることにしてしまえばいいんじゃないかしら?



なるほど! 

ネコ質を取っているとヤツらを(だま)すわけか



エサはエサでも、虚言(きょげん)をエサに撒くそのアイデアならいけるかもしれねーっすね



ヤツら、血相変えて動くに違いねーっすよ



……ふぅん、意外にゃねぇ。

マトモな献策できる猫がいたにゃんて




 あの奥さん顔も名前も変だけど、頭の回転はわりとイイようにゃねぇ。



妙案をいともたやすくひねり出すとは、さすがおれの妻だ。

おまえと夫婦になって正解だったよ



さすがだなんてそんな……。

わたしはただ、あなたの役に立てればそれで幸せなの



そういう控えめなところもかわいいぞ、イザベラ



紅様……



夫婦のイチャラブ、うっとーしい


フィルター希望、ニャウ




 ジト目で親を見る子ども猫たち。



野良猫社会では早くから父不在が多いから、こんな仲睦まじい状況はめずらしいんだけどにゃあ




  それはともかくとしてにゃ。



さっきから様子を見てやり取りを聞く限り、モブニャンが裏切者であることは確定したにゃね




 ウチは(はり)から身を乗り出していた体をスッと引っ込める。

 


以前からにゃんか変だとは思っていたのにゃよ


そもそも妹さがしに行く前にウチがモブニャンとペアになると言ったのも、半分はモブニャンに疑いをいだいていたからなのにゃ


 


 じゃあ、もう半分は何なのかって?



 その理由は……言わずと知れたことにゃも。



捜索サボって寝転びたいからにゃ♪





 にゃは☆
























ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色