第106話 対話
文字数 1,252文字
まさか小部屋に
せっかく見逃してやったっていうのによ。
舌打ちしながら、俺はその場に腰を下ろす。
敵意がないことを示すために、少し目を逸らしてやった。
子どもたちはさきほどから台のようなものに乗ったまま、緊張した面持ちでこっちを見ている。
ふたりの心理はシッポに表れていた。
最初に出会ったときと違って、ハナっから疑いの目で見ているから、おかしな挙動が目につきやすい。
冗談だか事実だか知らねぇが、そこをほじくっても無意味なので話を戻す。
猫たちの無言の姿勢に反して、シッポは激しい動きを見せた。
怪しさ最大限をほのめかす上下運動と毛の膨らみ。
どうやら図星らしい。
壊れたシャッターを跳び越えて部屋に入ってきたヨウが言う。
上に視線をやって観察するが、この小部屋には天井があって廃工場内を見通すことはできない。
もし敵が潜んでいるとしたら、屋根裏の死角か、それともどこか別の場所か――?
話題が変わったことに
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