第87話 悲しい知らせ
文字数 1,377文字
この足場の悪い廃工場内は、俺たちよそ者には不慣れだ。
ただ移動するだけならなんてことねぇが、戦闘となるとそれなりに神経を使う。
ところがホームグラウンドの紅にとっては、そんなこと問題にもならねぇ。
足場が狭かろうが不安定だろうが、水面をスイスイ泳ぐように移動しやがる……。
たしかに俺の呼吸は乱れていた。
実際、猫の持久力は犬に劣るとまで言われている。
認めたくはねぇがそのとおりだ。
目の前が真っ暗になる。
聞いた途端に体が脱力して、体内のエネルギーが一滴残らず抜け落ちていくようだ。
握った手がだらりと垂れて、身構えているのもしんどくなってくる。
胸を刺すような悲しみがこみ上げてきた。
こんなところでフリーズしてたら敵の思う壺だってぇのに、頭がパニクっていうことをきかねぇ。
紅の
キンメ、テンダ。
そしてマウティス。
どうか無事でいてくれ――!
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