第75話 衝突

文字数 1,396文字




 ボス猫vsボス猫。



 ねこねこファイアー組とのバトルは、開幕早々にして荒らしの予感だぜ。



貴様がジロリ組のボス・プルートか



イケネコすぎてビビッたろ?



フンッ、愚かな!

貴様ごときがイケネコなどとは笑わせる


ところで、その組員の少なさはなんだ?

闇の集会にはジロリ組のメンバー全員を連れて来いと言ったはずだが?



こまけぇことは気にすんな。

これだけいりゃあ十分だろ


逆に大勢で来たら、オメェらのほうが天手古舞(てんてこまい)になるんじゃねぇのか?



我らが天手古舞だと?

何故なにゆえだ?



んなもんオメェらの戦いぶりでわかる。

ねこねこファイアー組は、メンバー不足なんだろ?


なにせ殺気丸出しの子分や、そいつらにまじってボス自らが待ち伏せしなきゃならねーほどだもんな!



世迷言をぬかせっ!

あえて油断を誘うため、血の気の多い下っ端を配置したのだ!



油断を誘っただと?

んじゃ、計算づくってわけかよ



そうだとも。すべては策略だったのだ。

それに気づかず貴様らは油断した


下っ端どもの殺気に気を取られ、気配を隠していたこのおれの存在を見落としたのだ!

愚か者めっ!




 くれないはタンクの上から俺たちを見下ろしつつ、優越感たっぷりにシッポをゆっくり振る。



ほ~ぅ……。

そいつは意外だったな


ねこねこファイアー組は勢いだけってバカにされてるわりに、アタマ働かせてるじゃねぇか



たしかにうちの組には荒くれ者が多い。

だが、頭脳明晰な者もいる!


そのおかげで開幕から貴様らにふさわしいもてなしを実現することができたというわけだ!


フハハハハハハ!



何がふさわしいだ!

笑わせんなっ!


恥ずかしげもなく、あんな下品なモンばかり作りやがって!



こちらの思う壺で罠にかかったようだが、気に入らなかったか?



気に入るわけねーだろ!

ションベンだとかクソだとか、汚ねぇトラップばかりじゃねぇか


いくら勝つためだからって、オメェらにはプライドってもんがねーのかよ!



フン、戦いにプライドなど無価値!


勝つか、負けるか――

敗者に落ちぶれたくなければ、せいぜいあらがうことだな!




 紅は爪を立て、身構える。



貴様の実力、見せてみよ!




 体を宙に跳躍させ、俺のもとへ跳びかかってきた。

 


まったく喧嘩っ早いヤツだぜ


 


 後ろに跳びつつ攻撃をかわす。



 ドラム缶の上は足場が狭いから、落ちたら無様だ。



 落下しないよう気をつけながら、片手を振り上げて応戦する。



見切れるか、この拳がっ!




 得意の猫パンチ!



 闇雲に拳をふるうのではなく、空気を裂くような俊敏さで相手に肉薄する。




 シュッ!




 狙いは正確。



 だが紅の顔面を狙った俺の拳は、相手の毛をわずかにかすめて通りすぎた。



ほぅ――!




 紅は意外な感に打たれたようだ。



 俺の拳を警戒するように体を引き締め、その場に立ち止まる。



さすが疾風の悪魔の異名に違わず、拳が速いな



テメェに褒められてもうれしくねぇぜ!




 ドラム缶の上で睨み合う、俺と紅。



 紅は一定以上は踏み込まずに、攻撃を仕掛けてくるつもりらしい。



 グッと伸ばした片腕を振り上げ、鋭利な爪を突き刺そうとしてくる。



貴様の拳など封じてくれるわっ!




 俺はそれを止めようと手をかざすが――



 紅は手を器用にひねって、俺の片腕に絡んできた。



テメェ!

俺を上から押さえ込むつもりだな!?



手で押さえて動きを封じれば、敵の鋭利な爪を避け、拳の力を相殺できる


戦いを有利に運ぶため、おれが編みだした実践法だ!



――コイツ、戦いなれてやがる



























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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