第48話 思いがけない登場
文字数 1,772文字
新入りの妹の行方はわからんままやけど、現場に残されたニオイは明らかになった。
その正体がねこねこファイアー組だと発覚するや否や、ヤツらに恨みを持つヨツバが必死に縋ってくる。
お願いですから、ねこねこファイアー組を倒してください!
妹を助けるためにも、ど、どうか悪い猫たちをこらしめてください……!
まだオメェの妹がヤツらにかっさらわれたと決まったわけじゃねぇだろ
噂じゃ百戦錬磨の豪傑やとか。
手下も油断のならへん相手らしいわ
ビクついとる新入りを後目に、親分は思案顔のまま向かいにいるナニワ犬に問いかける。
この新入り猫にしみついたニオイと、現場に残っていたニオイが同一で、コイツらが身内だってことをよぉ
だったら新入りの妹がその後どうなったか、この辺りに残るニオイでわかるんじゃねぇか?
いや、おれが町を探索できれば不可能ではないかもしれんで
せやけど勝手にリード引きちぎって出歩いたら、オーナーに迷惑をかけてまうやろ。
だからこれ以上の謎解きには協力でけへんのや
犬らしい考えやな~。
ワイら猫ならセルフ散歩やゆうて、ひとりで町中歩きまわるで
体の大きな人間だって、ダイゴローと鉢合わせたら相当ビックリするんじゃない
ちなみにオメェの体重をネコ科に当てはめると、ピューマに相当するらしいぜ
ワイの頭の中で、しなやかボディの
大型猫が跳びはねた。
そんな具合にみんなで好き勝手にしゃべってると、人の足音が近づいてきた。
カメの店で買い物を済ませた人間たちが店を出て、こっちのほうへ歩いてくる。
駐車場を横切る際に、ワイらに気づいたらしい。
途端にパッと顔を輝かせ、跳ねるような声で言う。
店から出てきたのは三人の人間やった。
全然体のサイズがちゃうから、親子やろか。
三人そろってその場に足を止めると、好奇心いっぱいの目でこっちをじーっと見つめてきた。
めっちゃ喜んでくれるのはええけど、猫って凝視されるの好きやないやで
とくに野良猫界隈じゃ、かなりの割合でガン飛ばしとると感じるねん
でも見つめる行為って、人間にしてみれば好き好き大好きアピールのつもりなんでしょ
せやのに、肝心の猫からは
「なんやワレ、ケンカ売っとんのかいな!」って嫌われる原因になるねんな
俺はいつも人の注目を浴びるから、さほど気にならねぇけどな
視線に対する反応には、猫それぞれ個体差があるものだ
パッと
見平気なようでも、内心キョドってることもあるからな
自分は常に平常心を心がけているつもりであります……!
ワイは人の目ぇには慣れたけど、外で知らん猫にガン飛ばされたらアウトやな
まぁとにかく、無用な警戒心いだかせてまうから気ぃつけなあかんで
ワイがそうして伝わりそうもない忠告を終えたところで、人間側の動きに変化が起こった。
子どもが一人、アスファルトの白線を踏み越えて、ワイらのほうへ寄ってくる。
親分は身をひるがえし、堂々たる足取りで人間のほうへ寄っていく。
そこに早足で接近していく人間。
思いがけない人間の登場に続き、思いがけない展開や。
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